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迷ってるならもう一人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岡 幸子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「もったいない! 迷ってるならもう一人産めばいいのに」
 
相談されてすぐそう答えた。
子育ては、キョウダイがいた方が面白い。
 
「でも、もし男の子だったら育てられる気がしないんです。それに娘一人に100%の愛情を注いだ方がいいかなとも思うんです」
「男の子はダメ?」
「暴れるでしょう? 家の中がぐちゃぐちゃになりそうで、そういうのすごく嫌なんです」
 
男児は暴れる!
私もその偏見もってたなぁ。
最初の出産で男児を授かってがっかりしたことを思い出す。
 
女の子が欲しかった。
自分に妹がいることもあり、育てるなら姉妹がいいと思っていた。
けれど、現実は思い通りにいかなかった。
結婚して妊娠して、産まれてきたのは男の子だった。
 
あー残念、男の子かぁ。
授かったものは仕方ない。
赤ちゃんは駆け回ったりしないから、新生児の育児に男女差はないだろう。
そんな風に気を取り直して産院を後にした。
 
4時間おきに母乳とミルクをきっちり与えた。
なかなか飲まないミルクを温め直し、指導された量全部飲ませた。
当然、時間がすごくかかる。
そのうち、長時間の慣れない抱っこで左手が腱鞘炎になってしまった。
振り返ると笑えるが、その時は必死だった。
頑張って、1ヵ月で1.9キロも太らせた。
本当は、無理に飲ませる必要はなかったのだろう。
 
義務感でお世話した。
2ヵ月たっても、息子を可愛いとは思えない。
母親なのに我が子を可愛く思えないなんてどうかしている。
自然と罪悪感がわいてきた。
それで、息子を抱っこするときは
「あー可愛い、あー可愛い」
と声に出して唱え、これは“可愛い生きもの”だと自分に言い聞かせた。
 
そんな時、友人が手紙をくれた。
 
「長男を産んでから半年くらい、ちっとも可愛いと思えなかったの」
 
私だけじゃないのか!
母親として異常かも知れないと悩んでいたので、救われた気持ちになった。
 
「子供は一人一人みんな違うから、育児書の通りにいかなくても気にしない方がいいよ」
 
確かにその通り!
そんな、当たり前のことも忘れていたとは。
初めての子育てで余裕のなかった私に、とてもありがたいアドバイスだった。
 
子育ては筋力トレーニングに似ている。
続けているうちにだんだん筋力がついてきて、前はできなかったことができるようになっていく。数センチしかジャンプできなかったのが1メートル跳べるようになったら、無理だと思っていた場所に手が届くようになる。
 
もしトレーニングを始める前に、軽々とジャンプする人を見たら
「自分にはできない。ムリだ」
と思うだろう。そう思ってトレーニングをしなければそれまでだ。
不安でも、やれば筋力がついてくる。
跳べるようになったら自信もつく。そうなったらもう、トレーニングする前とは別人だ。
迷っている人がいたら言うだろう。
「大丈夫、やればできる」
 
我が子をちっとも可愛いと思えなかった私も、半年以上たってようやく脱皮した。
ある日、ハイハイをしながら寄ってきて、仔犬のように私を見上げる息子の様子に
「あら、カワイイ」
と初めて思えた。
ネコ派が嫌々イヌを飼い、世話するうちに犬好きになったのに似ていた。
 
愛情も、育児トレーニングを続けていれば湧いてくる。
 
さて、ようやく普通の母親らしく我が子を可愛いと思い始めてはみたものの、息子には別の面でも苦労した。
アトピーでぜんそくで、すぐ風邪をひいて熱をだす。
保育所から職場にしょっちゅうお迎え依頼の電話がかかってきた。一歳の4月から通い始めた保育所に、遅刻早退欠席なしで一週間続けて行けたのは、なんと10月になってから。祖父母の協力なしでは乗り切れなかったろう。
 
こんなのがもう一人いたら仕事と子育ての両立は絶対にムリだ!
心配していると、先輩ママたちが気楽なことを言った。
 
「一人目に手がかかると、二人目は楽だから大丈夫だよ~」
二人同時に大変になることはないという。
そんな都合よくいくのか?
半信半疑で聞いていたのを思い出す。
 
だけど、本当だった。
 
二人目は女の子で、ミルクをさっさと飲んでよく眠った。
息子が二歳を過ぎてもギャーギャー夜泣きをする同じ部屋にいて、朝までぐっすり寝てくれる。保育所からの呼び出しも一回もない。奇跡のようだった。
 
そうはいっても、一人より二人のお世話は大変だ。
でも大丈夫。
二児の母として、いつの間にかトレーニングされた新たな筋力がついてくる。
子育ての筋力には、夫や祖父母や先生など、子供を取り巻く周囲の力を借りるパワーもある。届かない高さにあるものは他の人に取ってもらうとか、足元に台を運んでもらうとか、だんだん知恵もついてくる。
 
一人目でたくさん学べる。
二人目、三人目でも新しい学びがある。経験が洗練され、親としてできることがどんどん増えていく。
 
男の子は嫌で、最初ちっとも可愛いと思えなかった。
そんな私も成長した。
今は男児を授かってよかったと心から思う。
偏見が消え、二十年間の子育てを通してその成長を楽しむことができた。
 
今、出産を迷っている人がいたら伝えたい。
チャンスがあるならその冒険に飛び込んでほしい。
子育ては楽じゃないけど、それが自分を鍛えてくれる。
育児を通して、今はできないことができるようになっていくから大丈夫。
 
第二子の出産を迷っている彼女にも伝えたい。
 
二人目が産まれると母親の愛情は倍になる。
娘さんへの愛が減ることはないから安心して。
男の子は嫌だって、じつは私も思っていたけど育ててみたら違ってた。
知らない世界を知ることができて楽しいかも。
 
子供は天からのギフトだよ!
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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