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メディアグランプリ

「本の魔力」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:結城 智里(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
子供のころから本を読むことが好きだった。
「趣味:読書」
履歴書にはこう書く。
本屋に行くのも好き。
勤め先は図書館。
なぜ本が好きなのか。
知らない世界へ連れて行ってくれるから。
ワクワク、ドキドキをくれるから。
テレビ、映画、ゲーム……
他にも面白い物はたくさんあるのに。
本の魔力は私を捉えて離さない。
 
「どうしても借りたい本があるの、お願い!」
図書館の前に出ている「休館の案内」を見て、恐る恐る扉を開けてはいってきた、彼女が叫んだ。
コロナ感染が拡大して、深刻さを増し、私が勤務する図書館も休館することになった日のことだ。
 
私の勤務する図書館は、公共図書館(町の図書館)、ではなく、産業関係の専門的な本を置いていて、仕事で利用する人が多いちょっと変わった図書館である。利用する人も普通の図書館に比べればぐっと少なく、同じ建物の中にはいっている団体の人たちが新聞などを読みにやってくる昼休みが一番にぎわうのだが、利用客が10人もいれば「大入り」という
彼女は昼休みに毎日のようにやってくる。知識欲旺盛な、歴史の大好きな私とほぼ同年配の女性だ。同じ建物にある団体に勤務している。図書館の持っている本について質問されたことがきっかけで、おしゃべりをするようになった。
この図書館を利用する人の多くは、仕事がらみなので、調べものをしにくる人が多くて、「読書」が目的の人はあまりいなかった。そんな中で彼女は「読書」のために本を借りていく数少ない人だった。
興味をひかれた本があると手に取って、うれしそうに、そしていとおしそうにその本を抱えて借りていく。私が選んで図書館に並べた本だったりすると、なんだかちょっとうれしかった。
彼女は自宅や、この職場近くの図書館にも頻繁に通っているらしく、新型コロナの感染がはじまってから、続々とそうした図書館が休館していくのがとても寂しいようだった。「この図書館が私にとって最後の砦」と言っていた矢先の休館の知らせに、飛んできたようだった。
 
「お願い、あの本を借りたいの!」
「?」
 
「メモの魔力」
 
おやおや、ちょっと意外な本だった。
「メモの魔力」は昨年のベストセラー。ビジネス本の売り上げランキングでも長い間上
位にいた。専門書の並ぶこの図書館の書棚にはちょっと異質だったが、気軽に手に取って
もらえるビジネス本の必要性も感じていたので購入したものだ。私も読んでみて、面白い
し、仕事の面でも日常生活でも役に立つなと、思ったのだ。
 
ある日の昼休み、いつものように図書館に訪れた彼女とおしゃべりしているうちに、ふと思いついて新着本のコーナーに連れて行った。
「この本を読んでみたら?」
こういって彼女に「メモの魔力」を手渡した。
 
彼女はこの本が気に入ったようだった。2週間の貸し出し期限だったが、そのあと2回も延長貸出しの手続きをしていた。
「とってもいいわ! この本!」
彼女はちょっと興奮した面持ちで「メモの魔力」を返しにきた。
 
そういえば、この人はたいそうこの本が気に入ってたな、とその時のことを思い出しながら、一緒に「メモの魔力」の並ぶ棚に向かった。
 
「私ね、この本が大好きで、昼休みにくるとよく手に取っていたの。」
知らなかった! そんなに好きだったのか。
「この本はね、力をくれるの、落ち込んだ時にここに来て、ちょっと目を通すと元気になる」
といって大事そうに胸に抱えた。
「ありがとう、しばらく図書館に来られないのは残念だけれど、この本を借りることができてうれしいわ。」
「……」
私はちょっとびっくりして、そしてなんだか感動してしまってしばらく言葉がでなかった。
「力を与えてくれる本」
なんて素敵なんだろう。力を与えてくれる本自体も素敵だ。私が作者だったら
「この本から力をもらいました」
なんて言われたら、うれしくて泣けちゃうな、と思った。
そして
「本から力をもらう」
と考える彼女の感性に、私は新鮮な感動を覚えたのだ。
 
「メモの魔力」は面白くて役に立つ本だ。作者の水準まではいかないけれど、私もメモを取ってみた。今もなるべくメモは取っている。それはいろんなことに役立っている。だが正直言って私にとっては「メモの魔力」はあくまで上等なハウツー本といった認識だった。この本から「力をもらう」、ということはなかった。
「彼女は、私とは違う目でこの本を深く読み込んでいたのだな」
と思い、私は自分がこの本に対して不誠実な対し方をしたような気がして、ちょっと申し訳なかった。そして、同時に本の持つすごさを改めて認識した。
 
本は読み手によって違う顔をみせるのである。同じ本であっても、ある人には生活の方便を教え、別な人には楽しみを与える、そして力をもらうと感じる人がいるのである。本の奥の深さを感じる。そんな「本」は人を捉えて離さない。
まさに「本の魔力」である。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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