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セカチューごっごの最終地点、アボリジニーとの旅路


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:AI(ライティング・ゼミ特講)
 
 
『うわー! アボリジニーだ!』
 
この時、私は、停車するバスの中にいた。そこに、アボリジニーの家族が乗ってきた。私は、初めて見るアボリジニーに大感動していた。出発時刻となり、バスはエアーズロックのあるウルルに向かって、走り出した。
 
2004年公開の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』
私は、この映画が大好きだ。主人公・朔太郎が高校時代に白血病で亡くなった恋人・亜紀との思い出を引きずり続けながら、二人で訪れた場所を旅し、亜紀が行きたかったオーストラリアを訪れる。映画では二人の高校生時代も描かれ、特に有名なシーンは、倒れた亜紀を抱えながら朔太郎が「助けてください」と叫ぶシーン。当時、このシーンに涙した人がたくさんいた。社会現象まで巻き起こした映画だ。
 
映画が公開された時、大学生だった私は、友人たちと映画のロケ地となった場所を訪れ、写真を撮っては、「セカチューごっこ」をして遊んでいた。映画のセリフを言ったり、映画のシーンを再現して遊ぶことを「セカチューごっこ」と呼んでいた(笑) 今では恥ずかしい思い出だが、当時は、アオハル真っ只中。私の「セカチューごっご」の最終地点は、エアーズロックの中心で『助けてください』とさけぶこと。
映画の公開から9年後、私はエアーズロックにいた。
 
2013年、日本語教師アシスタントとして、オーストラリアの首都・キャンベラにいた。10月の春休みを利用して、ウルルに向かった。キャンベラはオーストラリアの東に位置し、シドニーとメルボルンの間にある。まずキャンベラからシドニーまでバスで3時間、その後、シドニーからアデレードまで飛行機で約2時間。アデレードで1日滞在し、翌日、ウルル行きの長距離バスに乗り込んだ。
 
日本の約20倍の面積をもつオーストラリアは、長距離バスが発達している。アデレートからはウルル行きのバスが運行している。その距離、約1,650キロメートル(日本でいえば鹿児島から福島までの距離)。時間にして、約30時間!! 超が付くほどのロングジャーニーだが、オーストラリアならではの体験ができると思い、長距離バスでの移動を選んだ。
 
2013年10月某日、時刻は17時30分。アデレードのバスターミナルでウルル行きのバスを待っていた。バスが到着すると手続きを済ませ、バスの車内に乗り込む。しばらくすると、家族連れが乗り込んできた。
 
『うわー!!アボリジニーだ!』
 
思わず、心の中でさけんでいた。教科書でしか見たことのないアボリジニーが、目の前に現れたのだ。彼らはアボリジニーの言葉を使ってしゃべっていた。初めてのアボリジニー、初めてのアボリジニーの言葉に大感動していたが、そこで衝撃を受けた。
彼らは、かけ布団と枕を持参していた! 30時間のバス旅は疲れるし、車内はエアコンが効きすぎることもあるので、布団と枕の持参は用意周到だなと感心した。彼らのグループには子どもたちもいた。子どもたちの持ち物に大衝撃を受けた。
 
子どもたちは、ゲームボーイにノートパソコンを手にしていたのだ! 思わず、二度見してしまった!! アボリジニー達は、今も伝統的な生活をしていると思い込んでいたので、まさかゲームボーイなどの電子機器が浸透していることに本当に驚いた。文明の変化ってすごいと感じた瞬間だった。バスが出発する前から驚きの連続だったが、18時、出発の時間となり、ウルルに向けてバスは走り出した。
 
バスが出発する頃、辺りは暗くなりだしたので、私は本を読みつつ、アボリジニー達の会話を聞きながら過ごした。彼らが何を話しているかはわからなかったが、初めて聞く言語に興味が沸いた。しばらくすると、私は、眠りについた。翌朝、朝日が差し込むと同時に目が覚めた。車窓から外を眺めると、そこは荒野が広がっていた。地面は赤い土で覆われ、乾燥した大地で見られるような植物が所々に生えていた。植物以外何もない場所をバスは走っていた。この日、バスは休憩を挟みながら、北へ北へと進んだ。15時を過ぎた頃だろうか。バスが何もない場所で停まった。故障かと思ったら、なんとアボリジニー達が降り始めた。バスの近くに車が2台停車していた。きっと彼らの家族が迎えに来たのだろう。おそらく5人乗りであろう乗用車に、大人5~6人と子どもたちがギュウギュウ詰めになった。車の窓から、布団がはみ出していた。そして、彼らは荒野に消えていった……
 
突然の別れに寂しくなったが、アボリジニー達と一夜を共に過ごす経験はこの先もないと思うと感慨深くなった。アボリジニー達がいなくなったバスは、さらに北上した。アデレートを出発して、24時間。この日はアリススプリングという、オーストラリア大陸の真ん中にある街で1泊した。翌朝7時にバスは出発。この町から500キロメートル離れたウルルに向けて出発した。バスが走り出して4時間が経過した頃、ドライバーさんが
「前を見て! エアーズロックが見えてきたよ」
とアナウンスした。何もない荒野に、大きな一枚岩が現れた。私たち乗客は、遠くに見えるエアーズロックに大感動。車内から拍手がわき上がった。エアーズロックが近づくにつれ、私の頭の中では映画の主題歌がずっと流れていた。そして、旅の最終地点・ウルルに到着した。
 
世界最大級の一枚岩「エアーズロック」。ここはアボリジニーの聖地として、古くからあがめられていた。エアーズロックはテレビで何度も見てきたが、目の前にした時、迫力と荘厳さに言葉を失った。朝、昼、夕方と光によって岩肌の表情が変わり、その神々しさも魅力的だ。この日は、サンセットでオレンジ色に輝くエアーズロックを鑑賞し、翌日の登山に備えた。
 
エアーズロックの中心でさけぶ日を迎えた。朝8時。私は、エアーズロックの登山口にいた。現在は登頂禁止だが、以前は制限付きで登山が認められた。気温36度以上、強風、大雨・雪の場合は登頂禁止だった。そのため、一年の半分は登頂出来なかった。その日の予報は38度。登山口の温度は34度。登山口の門は閉められたまま……今日の登山は無理かと諦めかけた時、門が開いた!! 幸運にも、午前中のみ登山が許された。足元に気を付けながら、ゆっくりゆっくりと頂上を目指して歩いていった。歩いて約1時間、頂上についた。世界の中心に、私は立っていた。夢にまで見た場所に自分の足でやってきた。標高348メートルからの眺める景色は、最高だった。感動して、涙が止まらなかった。そして私は、さけんだ。
 
「ウルルー!!!」
 
『助けてください』ではなく、この感動を言葉に表したいと思ったら、「ウルル」とさけんでいた。「セカチューごっこ」の最終地点は、感動という愛であふれていた。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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