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メディアグランプリ

勇気をもって入ったお店の中で考えが変わったこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ナガタ アカリ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「この店は空いているのか?」
最初に店を知った時に抱いた、感想だった。古びたビルの1階にある小さなスペースに小さな扉が一つあり、扉の横の看板には「さくらんぼ」と書かれてある。隣には新しい綺麗な雑貨ショップがあり、並んでみるとひと時代違う感じがする。その店の情報は「さくらんぼ」しかなく何をしている店なのか分からない。
 
町の中心部である田町というエリアにその店はビルとともにひっそりと佇んでいた。人通りが多い場所から一歩裏通り入った閑静な空間だった。
 
私は今までチェーン店や大型ショッピングセンターくらいしか入ったことがなく、だいたい友達と一緒に店に入ることが多かったため、1人で店に入ることはあまりなかった。店の中はどんな感じなのだろうという興味が湧き、友達を誘おうかと考えたが興味を持って一緒に行ってくれそうな人は思い当たらなかった。店の中に入ってみたいという興味と1人で店に入ってもいいのだろうかという抵抗感の中での葛藤が自分の中で戦い、その店の前でうろうろしていた。何かに後を押されたのか私はそっと重い扉を開いてみた。
 
キーっという扉を開いた先は喫茶店だった。扉を開けたときもわんと煙草の匂いがした。煙草を吸っている人はみかけなかったが壁や床に染みついているような気がした。床は木造で歩くと足が抜けるんじゃないかというくらいのやわらかさとみしみしという音が響く。壁はもともとは白かった様だが、時が経ったように茶色くなっていた。
 
店は奥に向かって細長く、カウンターと奥にテーブル席が1つあった。入り口手前に常連らしきおじさんがビールを飲んで顔が赤くなっており、奥には20代くらいの若い人がコーヒー飲みながらパソコンをしていた。私はぐるぐると店内を見回しどこに座ろうか迷っていると、女性のマスターが
 
「どうぞ、どうぞお好きな席を選んでくださいね」
 
と朗らかな笑顔で待っていてくれてとても安心した。私は惹かれるようにマスターの前に座った。目の前のボードには堂々と張り出されたメニューがびっしり書いてあった。どれも、マスターが書いたような手書きの字で、それも柔らかく優しさを感じた。昼時だったため、サンドイッチを注文した。飲み物欄をずらっとみると、クリームソーダに目が留まり、なんだかすっきりしたいなという気持ちがあり、クリームソーダを注文した。
 
目の前でフライパンを使いパンを焼いてくれる。ジュ―っという音とともに香ばしい香りが鼻を通って体の隅々に通っていった。きつね色の丁度いい焼き色がパンに入ったところでフライパンから取り出しパンの上に、キュウリやハム、卵を載せる。その上にもう一枚のパンを載せて包丁で切るとしゃくっという音がとても心地よかった。
 
「おまたせしました。熱いから気をつけてくださいね。」
 
腹ペコな私はサンドイッチにかぶりつく。優しい味がした。目の前ではオーナーがメロンソーダを作っていた。縦長グラスにこぼれそうになるくらいまで注いでくれた。カウンターにソーダを置く。
 
「見ててね~。マジックが始まるから。」
 
どんなマジックが起こるんだろうわくわくしながら目の前のソーダをみる。
 
「ここに、アイスをのせるの。こぼれないようにね。いくよ!ほいっと」
「おお~!」
 
ソーダはこぼれることはなかった。マスターの引き寄せられるような話と実演に、子供の時に感じていたわくわくした気持ち久しぶりに感じたような気分だった。
 
「おねえちゃん。どこから来たの?」
 
隣から、赤い顔をしたおじさんが話す。ビールを飲んでいて酔っているようだ。
 
「車で30分くらいの所に住んでいます。ここに来るのは初めてで。」
「入るの緊張しただろ?入口狭いから入るのちょっと勇気いるよな。おじさんはここは長いんだ」
 
私が店の中に入ろうか悩んでいるのを見透かされたような感じだった。そこにオーナーが
 
「この人はね昼からずっとビール飲んでるのよ。だから酔っ払いさんね。はじめて店に入るのは勇気がいることよね。でも、一度入ったら次から行きやすくなるもんなのよ。こんな感じで行きたいなとかやりたいなとか思って行動することは勇気いるんだけど、一度その世界に入ってしまえばもう次から行きやすくなるからね。思っているほどどうってことないのよね。ここに来る人たちも最初は緊張しているような感じで入ってくるんだけれども入って、常連さんとなんだか打ち解けていってまた来るともうその人も常連さんになっているのよね。」
「お母さん。もう帰るわ」
「はーい。酔っ払いさん。お会計はまた次来た時でつけとくね。」
 
私もおじさんが出ていった後に、重い扉を開けて店を後にした。扉あけると急に光が差し込み目の前が明るくなった。同時に車の音やざわつく人の声に夢のような幻想的な世界から現実に戻ったような感じがした。
 
マスターも言っていたように、一歩扉を開けるのは勇気がいる。一歩入った途端自分の知らなかった世界がそこにあった。そして、一歩勇気出して入った自分に自信が持ちあんなに悩んでいたのは何だったのだろうという気持ちになった。やりたいこと、行きたいところがあるならば一歩勇気出して歩いていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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