メディアグランプリ

心の脱皮


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田まりえ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 

「美容サロン始めたから、よかったら遊びに来て」
美容業界10数年のキャリアを持つ大学時代の友人からLINEがきた。

 

サロンのURLをクリックすると、
“スキンケア中心にキャリアを積んできました。これから働く女性の美しさをスキンケアからメイクまでトータルにサポートしたい” という友人の起業への思いが綴られていた。
友人の思いをこの時、初めて知った。

 

「おめでとう! HP見たよ。メイクのアドバイスとかもするんだね」
「そうよ、興味ある?」
「あんまり(笑)。でも、せっかくだから、メイクみてもらおうかな」
「OK。来る時、よかったら今持ってる化粧品持ってきて」

 

約束した土曜日の午後、お祝いのプレゼントと自分の化粧品を持参してサロンに行った。
コンクリート打ちっぱなしの壁に、スタイリッシュな家具、落ち着いた色の花が飾ってあるシンプルで感じのよいサロンは、友人の雰囲気にぴったりだった。
 

早速、友人に私にお勧めのメイクをお願いした。

 

私のメイクと言えば、自分の好きな濃い赤色の口紅をして、あとはTPOに応じて時々アイシャドーをする程度。雑誌を見たり、デパートの化粧品コーナーに行ったりするような熱心さは持ち合わせていない。

 

それでもいざ始めてみると、
「どんなメイクになるのかな?」 と初めての体験にちょっとワクワクした。
 

「よし、できた! どう?」
私の目の周りには、クレオパトラのように濃紺のアイライナーが引かれていた。
 

「え、終わり? ……口紅はしないの?」
「口紅はしなくていいよ。目元をはっきりさせると、あなたのクールな感じが強調されてかっこよくなるだろうって思ってたけど、やっぱりね」
「……ねえ、本当に私に似合うと思う?」
「もちろん!私、いちよ、プロよ」友人は、にっこりと笑顔で言った。
 

そうか、こんな気持ちになるのか……。

 

口元ではなく目元を強調すること。
しかも私が最も苦手な細かい作業を伴うアイライナーもすべしという友人のアドバイスは、私には「赤は白です」と言われているように聞こえた。
 

何とも言えない渋々とした表情を浮かべている私が鏡の中にいた。

 

脳裏に、仕事の場面が巡る-

 

その表情は、私が仕事で一般の方への相談でアドバイスした時に、相手が浮かべるものと同じだった。
経験的に、アドバイスの後は、“最初はとにかく良くも悪くも言われたとおりにやってみる人”と“最初から自分なりにアレンジを加えてやる人”に分かれる。
そして、成果を出しやすいのは前者……。
新しい世界観のようなものを丸ごと飲み込んでこそ人は変われる、と私なりに理解していた。
 

その日、私は、持参した化粧品のすべてをサロンのゴミ箱に捨て、友人が勧めた化粧品を一式購入して帰った。

 

翌朝から、新しく買った化粧品で友人に教えられたとおりにメイクを試みた。
これまで5分で終わっていたメイクが、20分もかかる。
目元のメイクが増えたことが原因だが、主犯はアイライナー。
友人はすっ、すっと簡単に引いたが、自分でやると見えにくい、手が震える、線が強弱してうまく引けない。
ようやく仕上がった私の顔には、相変わらずあの表情が浮かんでいた。
 

その日、会った人からは「雰囲気変わったね」、「いいね」と言われたが、朝のメイク時間のみならず、アイライナーが下手な分、昼または夕方にはメイク直しも必要になり、こんなに手間がかかるのかと初日からほとほと嫌になった。

 

「たかがメイク、こんなに頑張る?」という心の声が聞こえてくる。
しかし、元に戻ろうにも新しい化粧品しかないのだ。
自ら退路を断ったことを思い出した。
 

一週間程経ったある日、いつものように、仕事帰りに自転車で近所のスーパーに立ち寄った。
駐輪場に自転車を止め、ふと顔を上げたら、ミラー壁に映る自分の顔が目に入った。
その瞬間、「あ、このメイク私に似合ってる!」と初めて思えた。
 

こんなふうに変われるんだ、私。
なんだか心が脱皮したようで、ふふっと笑顔がこぼれた。
 

その後、友人とは、お互いフリーランスになったこともあり交流の機会が増えた。

友人はサロン通信、ホームページ、Facebookで以前も増して情報発信をするようになった。
起業家として、働く女性、美しさをキーワードに、お客様との会話や最近参加したイベント
での気づき、新しいアイデアなどを柔らかい語り口で表現する。
私は、会っていても、いなくても、前向きに切磋琢磨できる交流が続くことが嬉しい。
 

一方の私は、情報発信に積極的ではない。
面倒臭さもあるが、自分のことは敢えて人に伝える程のことはないと思っている節がある。
 

友人や仲間との交流は、これからも大事にしていきたい。
いつしか、私も自分のなりの情報発信ができるようになりたい、と願うようになった。
 

そして、この4月、私はライティングゼミに通い始めた。

 

私がこれまで書いてきたのは、仕事の報告書や企画書用のわかりやすく、論理的で簡潔な
文章。
これから書きたいのは、自分の経験を通じて得た学びや考えを表現した、主観的ではあるが
読んだ相手に何かしら役に立つ文章。
 

文章のプロからのアドバイスは、文章の構成を起承転結などではなくABCユニットすること、だった。
そして最後まで読みたいと思われる文章を書くことを目標に、2,000文字の文章を書く課題に向かって、これから毎週のように筆をとる。
 

今、自分に言い聞かせている、そう、ABCユニットは、アイライナーなんだと。

 

コロナ色に染まるこの春、いつ心が脱皮するのか、楽しみだな。

 
 
 
 

***
 
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2020-04-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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