メディアグランプリ

喉元過ぎれば熱さを忘れ、その先へ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:しまおかおり(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざは……
 
・熱いものも、飲みこんでしまえばその熱さを忘れてしまう(直訳)
・苦しい経験も、過ぎ去ってしまえばその苦しさを忘れてしまう(少し発展)
・苦しいときに助けてもらっても、楽になってしまえばその恩義を忘れてしまう(発展)
 
こんな風に解釈できる。
 
私が一番しっくりくるのは、
「苦しい経験も、過ぎ去ってしまえばその苦しさを忘れてしまう」だ。
そして、その代表格が「子育て体験」だと私は思う。
 
私には現在高校2年生男子Ryuと、中学1年生女子Ki-の2人の子どもがいる。
「一姫二太郎」という言葉があるが私の場合、第一子が男の子だった。
 
多くの母親にとって、息子という存在は「異星人」なのではなかろうか……。
 
私のように「一人っ娘」で育ち、「男の子」という存在に関しての知識や経験が「ほぼゼロ」の状態で「男の子の母親」になってしまった場合は特に!
 
Ryuが宇宙人っぷりを発揮し始めたのは、1歳の誕生日を迎える頃だったと記憶している。
私はこの頃から数年、宇宙人的男子に日々振り回される日々を過ごしていた。
 
1歳になると、赤ちゃんは歩けるようになる。
立って歩くことができると、視野が開けて、行動範囲も広くなる。
 
好奇心旺盛にそこら中を歩き回り(時には走り)、目にするもの、手に取れるもの全てをつかみ口に入れ、登れる段差はどこまでも登っていくRyuを、あの頃の私は必死で、
 
「やめて〜! あ〜、もうダメダメ! こら〜っ!!!」
 
このセリフをリピートしながら追いかけ回していた。
というか、追いかけ回すしかなかった。
 
1歳を過ぎて、一人でしっかり歩けるようになったRyuは「乗り物」に興味を持つようになった。彼の最初のお気に入りは「ゴミ収集車」だった。
 
毎朝、ゴミ収集車が出動する時間になると、私は彼をベビーカーに乗せ通りに出てゴミ収集車を見つけた。そして、その後をどこまでもどこまでもついて回った。
 
Ryuはひたすら収集車の中にゴミが吸い込まれていく様子を見て、手を叩いて大喜びしていたのである。
 
「この子はこれを見て、一体何が面白いのだろうか???」
 
毎朝Ryuとのこのルーティンを繰り返しながら、私の頭の中は「?」でいっぱいだった。
 
だが、どんなブームもいつかは過ぎ去る。
あれだけゴミ収集車にご執心だった彼も、次のブームに移る時が来た。
次にやって来たブームは男子の王道「電車」だった。
 
その頃住んでいたマンションから徒歩15分のところにJRの駅があった。
東口と西口を結ぶ橋の上から、上り下りの電車の行き来を見下ろすことができた。
 
電車ブームに突入したRyuをその橋に連れて行くと、最低3時間動かなかった。
なので私は、おにぎり、おやつ、水筒を持参して彼を橋に連れて行った。
 
Ryuと同じ年頃(2歳くらい)の子どもを連れたママさんが、子どもに電車を見せるためにその橋にたくさんやって来た。
 
ほとんどの親子はだいたい5分くらい電車を見たらその場を離れていった。
どの子も数本の電車が行き来するのを見たら、満足というか、飽きてしまうからだ。
 
だが、Ryuの電車好きは筋金入りだった。
電車が通る度に、満面の笑みで手を叩いて「でんちゃ〜!」と叫んで大喜び。
これが短い日で3時間、長い日は5時間以上続くのである。
 
朝、10時過ぎに橋の上の定位置に連れて行き、そこで電車を見ながらランチとおやつを済ませて夕方撤収……このルーティンが半年ほど続いたと、私は記憶している。
 
あの頃の私は専業主婦で、Ryuの子育てを最優先の日々を過ごしていた。
主人は仕事が忙しく、帰宅は早くて22時過ぎで、いわゆる「ワンオペ育児状態」だった。
 
離乳食作りに時間を取られ、自分の食事は常に立ち食い。
トイレに一人でゆっくり入れない。(常にトイレのドアを開けて用を足していた)
お風呂も常にRyuと一緒だったので、彼のことだけ済ませて出てくるのが精一杯。
なんとかシャンプーができたとしても、ドライヤーで自分の髪の毛を乾かす手間はかけられないという状態……
 
「いつになったら自分の時間が取れるのだろうか?」
私はRyuに振り回される日々が永遠に続くと思っていた。
 
あれから早14年……
今、振り返ればまさに「喉元過ぎれば熱さを忘れる」である。
 
あの時は「辛い!」と感じていたワンオペ育児経験も、過ぎ去った今となれば懐かしく微笑ましい思い出へと私の中で変化している。
 
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
 
このことわざは、どちらかと言うと「悪い意味」に使われがちだ。
だが、我々人間という生き物は「熱さを忘れる」という知恵を持ち合わせているからこそ、今まで図太く生き延びてこれたのだと私は思う。
 
今、私たちは「コロナウイルス騒動」という苦しい状況下にある。
 
いつ感染力が弱まるのか?
いつになったら医療現場が落ち着くのか?
いつ外出自粛が解除されるのか?
子どもたちの学校はいつ再開になるのか?
 
これは誰にもわからない。
 
だが、いつか、近い未来に……
「あの時はコロナウイルスで大変だったけど、あんなことや、こんなことで人類は乗り越えることができたんだ!」と、2020年4月を振り返ることができる日が来ると私は信じたい。
 
そして、これからも「熱さを忘れる」という知恵を使って、人類は更に進化を遂げるに違いない。多くの母親が、子育て体験を通じ「人間力」を高めているのと同様に……。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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