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イギリスでアメとムチの使い方ついて学んだ件


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:阿津坂光子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「アンゲロス、お土産をありがとう。でも、なんでこれを買ってきたの?」
ユディットがそう言った時、私は「うわ! 言っちゃうんだ!」と驚いた。
 
場所は、ロンドンにある大学の寮の2階にあるキッチン。
アンゲロスはギリシャからの留学生で、ユディットはドイツからだ。私たちは同じ大学の大学院に学ぶ留学生で、1つのキッチンを6人でシェアしていた。
 
いつの頃からか、誰かが旅行に出かけてお土産のお菓子を買ってくると、テーブルの端に置いといて、「お好きにどうぞ」と提供するのが習慣になっていた。
 
ある時、アンゲロスがギリシャに帰省し、お土産として買ってきた、日本の求肥を3cm角に切ったようなお菓子を置いておいたのだ。
 
人気がある場合は、3日ともたないのに、このお菓子だけは表面がカサついてみすぼらしくなりながら、10日ほど過ぎても残っていた。
 
そこで出てきたのが、ユディットの冒頭の言葉だ。
アンゲロスはちょっとうろたえながらも、「え、うん、なんで? ギリシャで有名なお菓子だからだよ。あんまり好きじゃなかった?」と答えると、ユディットは「そうね、みんなすごい気に入ってる、って感じじゃなかったよね。まずいわけじゃないんだけど、すっごいシンプルよね」とさらっと言う。
 
アンゲロスも特に気にする風でもなく、「じゃぁ、今度は別のを買ってくるよ」と答えて、私がちょっと拍子抜けする感じで終わった。
 
後からユディットをつかまえて、「よくアンゲロスに正直に言えたね! みんな同じことを思ってただろうけど、彼に言う勇気は私にはなかったな」と話すと、「正直に言うべきか、言わざるべきか」の話になっていった。
 
ユディットいわく、言わなければアンゲロスはまた同じお菓子を買ってきてしまうかもしれない、それは彼にとっても、他のルームメイトにとっても残念なことだと。
 
それに、とさらに彼女は付け加える。ドイツでは、大人だったら、率直な意見でもきちんと受け止められるはずだし、お互いに率直に意見を言い合うのは良いことでだと考えている。その方がお互いが自分の良くないところを知って改善し合えるからだ、そう。
 
なるほどなと思った。
 
ただ、ユディットを観察していて気づいたのは、「ただ単に率直に意見を言えばいい」というものではない、ということだ。必ず言い方は柔らかく、良いところもきちんと言うし、そして相手を詰問するような形ではなく、相手の意見を聞き、なんなら自分の意見は代替案として提案するのだ。
 
なるほど、「飴(建前)とムチ(本音)は使いよう」なのだ。ただ、日本の場合は飴の比重が高くて、ムチはほんのちょっと見せるぐらいでも十分に効果を発揮しているように思う。それでも、「ムチを見せたら、相手が気を悪くするんじゃないか」という気遣いの方が先に立って、見せることすらしないことも多々あるんじゃないだろうか。
 
ドイツの場合は、飴とムチの比重はあまり変わらないか、ムチの方が大きい時もあるかもしれない。しかし、ムチと言っても相手を叩くのではなく、なんなら手渡ししているような感じなのだ。
 
ちょうどその頃、フェイスブックに流れてきたある物に、日本とあまりに似ていて、笑ってしまったものがあった。「イギリス人が言うセリフと、その本当の意味」という表だ。
 
紹介されていた表現が、
「Very interesting.(非常に興味深い)」
→本当の意味:明らかにつまらない

「I’ll bear it in mind.(心に留めておくよ)」
→本当の意味:もう完全に忘れた(心に留める気なんか全く無い)
 
「I’m sure it’s my fault.(きっと私のせいですよ)」
→本当の意味:完全にあなたのせい
 
「I almost agree.(ほぼ賛成です)」
→本当の意味:全く賛成できない
 
イギリスも日本と同じように、飴でムチを見えないぐらいしっかりくるんで相手に渡すんだろう。
 
それでも、日本よりはムチははっきり示されるようで、別のルームメイトで、ポルトガル出身のミゲルがボヤいていた。
 
「ミツコ、イギリスではbut(しかし)の前は一切聞かなくて良いんだよ。教授のコメントは、最初はすごく褒めちぎってくれるんだけど、結局言いたいことは全部butの後なんだよ」
 
私の返ってきたレポートも、表紙に評価が貼られてあり、上段が良かった点、下段が改善すべき点が書かれているのだが、明らかに上段と下段の比率が違ったりする(当然、下段がみっちりだ)。それは私が提出したレポートだからかもしれないが……。
 
こうやって、国によって飴とムチの比重や使う方法が違うことを学んだ。しかし、「飴がメインの国」出身の私は、なかなか一朝一夕では、上手な「ムチの使い方」を学ぶことができなかった。
 
もうちょっと上手く学べていたら、せっかく私が持っていった自慢の日本製の包丁を使って、かったいフランスパンをガリガリと切って、「やっぱり日本製は違うわね。ドイツでも有名よ」とご満悦のユディットに、「それだけは止めて……」と言えたかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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