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メディアグランプリ

散歩中の宝探し


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森真由子(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
私は今日も下を向きながら川沿いを歩いてきた。
 
ん? この人、大丈夫? と心の心配をしてくださった方、
人生に絶望した、などという暗い話では全くないので心配ご無用。
 
これは散歩中の宝探しという名の、雑草観察の話だ。
ちなみに、私は植物博士でも何でもない、ただのOLであることをまずは明言しておきたい。
だから素人なりの日常の楽しみ方として捉えていただけると幸いである。
(草にはそれぞれ固有の名前が付いているが、今回は便宜上丸めて「雑草」と呼ばせていただく。)
 
皆さんは何かがきっかけで昨日まで見えていた世界と違って見えるようになった経験はあるだろうか。
私は雑草を知ったことによって、違う景色が見えるようになった。
 
京都天狼院のスタッフだった三宅香帆さんの『人生を狂わす名著50』という本を最近読んだ。その中で有川浩さんの『図書館戦争』が挙げられていた。
読んだ時、私は思わずガッツポーズ。私もこのシリーズが大好きである。
本も漫画も読んで、アニメも映画も観ているほど、大好きだ。
三宅さんの文章を読んで、同じ本のことなのに彼女ほどの深読みができていなかった自分のことがちょっと恥ずかしくなった。
でも、自分が熱中した本について自分と同じくらい、いや、自分以上に熱く語ってくださっていて同じファンとしては非常に嬉しかった。
 
『図書館戦争』以外に私の人生を狂わした有川浩さんの本を挙げるとするならば、それは間違いなく『植物図鑑』だ。
狂わした、と書くとちょっとネガティブな印象があるかもしれないが、この本によって私のその後の日常が豊かになったという前向きな意味を込めている。
なぜならそのまま影響を受けて、私は雑草好きになったから。
 
『植物図鑑』はいわゆる図鑑ではない、これは恋愛小説である。
この小説には、植物にめちゃくちゃ詳しい、特にそこらへんの野に生えている雑草に詳しいイケメンが出てくる。彼とひょんなことで一緒に暮らすことになった女性との恋愛模様を読むのが思わずニヤケてしまうくらい、楽しい。
しかし読了後、私にとって「あーいい本だった」だけでは終わらなかった。
この本を読んで以来、道を歩いているとコンクリートの隙間から生えている雑草が気になって気になって、とんでもなく気になって仕方がなくなってしまったのだ。
 
「あ、あの本に出てきた雑草だ!」
「あれは、物語の中盤で彼と彼女が調理して一緒に食べたやつだ!」
今ままで私の目に入って来なかった草たちがどんどん鮮やかに映るようになった。
そしてそれだけでは飽き足らず、見つけた名前の分からない雑草を調べるために自分で図鑑まで購入した。
 
この本は2016年に映画化もされている。これもまたあまーくて恋愛もの好きにはたまらんのだ。演じていた岩田剛典さんと高畑充希さんの爽やかさにも癒された。
私の雑草調べは映画を見てから更に拍車がかかるのであった……。
 
それまで他の通行人から不審がられるのが嫌で、雑草を横目でちょろっと見るくらいに抑えていた。それが、物語と言えど、映画で実際に人が雑草で楽しんでいる映像を観ると、雑草好きになってもいいと認められたような気になって、歩いている時はもう堂々と雑草を見るようになった。それでも気になるようだったら立ち止まって、まじまじと観察するまでに。
 
人によってはこの光景が滑稽に見えるだろうか。
他人の目がちょっと心配ではあるが、
あー、でももう好きが止まらない……!
 
雑草の楽しみ方は人それぞれ。
前述した作家の有川浩さんの本では雑草を使った美味しそうな料理がいくつか出てくる。
彼女は食べられる雑草も楽しまれているとお見受けした。
一方、私は素人のため、雑草の種類の分別をつけられる自信がない。初見のものについては特に自信などない。
この間見たものと見た目は似ているが、実はこっちは毒のある雑草だった……硬直。
となるのはやはり怖いので、食さず、あくまで鑑賞対象として楽しんでいる。
目に入りやすいというのもあるが、特に桃色、黄色、水色の花を咲かせる雑草を見るのが好きだ。
 
道を歩いていると、
「ユウゲショウ」
「こっちは、ヒルザキツキミソウ」
「ネジバナ」
「キュウリグサ」
「もう夕方か、あ、これはマツヨイグサ」
……口から小声でぶつぶつと草の名前が出てくる。
(ちなみに写真はニワゼキショウ)
 
誰にも求められていないのに、自分が知っている草を見つけると嬉しくて、つい答え合わせをするかのように名前を言ってしまう。
名前の知らないものを見つけたら、その写真を撮って家の図鑑で調べる。
それを続けていてもまだまだ知らない種類がたくさんある。
雑草は季節や場所によって見れるものが違う。
だから私はきっと一生この好きを続けていくような気がしている。
 
雑草に限った話ではないだろうが、全く興味のなかったものが、一度知ると違う景色に見えてくる。
いつもスルーしている場所でも、宝探しの地図を手にしたらその場所を隈なく見るようになるだろう。
同じように、私にとっての宝探しの地図は、散歩の雑草図鑑だ。
好奇心が高じて図鑑を手にした途端、散歩は宝探しの時間になる。
 
だから私は今日も下を向きながら気になる雑草を探すのだ。
 
※この間、危うく電信柱に頭をぶつけそうになったので、危ない場所はちゃんと前を向いて歩こう。そして大変恐れながら、もしこの記事を読んでくださって雑草観察を始められた方がいらっしゃったら、毒のある品種もあるため、己の知識に自信が付くまでは容易に触れないようにして楽しんでいっていただきたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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