メディアグランプリ

オーディオランドスケープ〜音から広がる風景〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小島由佳子(ライティングゼミ・GW集中コース)

「ああ、これこそニューヨークだ……」
目を閉じて聴き入ると、その音から脳裏に浮かぶ風景に、心をざわざわと掻き立てられた。

人々の行き交う雑踏のクラクション。
レストランでのグラスの当たる音。
室内の床のきしむ音……。

未だかつて、このような「雑音」とも言える日々の生活音に聴き入ったことがあっただろうか。
この音を聴くことで、私は心がざわつくほどの感動を覚えている。なぜだろう。
少し前までは当たり前すぎて気づかなかった日常の音にすぎないのに。

5月1日、ニューヨークを代表する図書館として知られるニューヨーク公立図書館(New York Public Library、以下NYPL)は、“Missing Sounds of New York”と題して、ニューヨークの人々の生活の音を集め「オーディオランドスケープ」の音楽トラックとして配信を開始した。
https://www.nypl.org/blog/2020/05/01/missing-sounds-of-new-york

NYPLは19世紀のボザール建築の本館の建物がシンボリックであることから、観光客にも人気のスポットにもなっている(現在は休館中のようだ)。
しかしニューヨーカーに広く支持されている理由は、もちろんその見た目だけではない。「公立」という言葉にあるように、半官半民の施設として市のお金と寄付によって運営していることから、トークショーを行ったり、ネクタイまで貸し出したりと、地域に根ざした独自の取り組みを多く行っている図書館である、ということが愛されるゆえんである。

実は、今回の企画に限らずNYPLには驚かされたことがある。
それは昨年日本でも公開された、『ニューヨーク公立図書館 エクス・エブリス』という映画だ。

普段決して見ることのできない図書館の舞台裏が、赤裸々にそのままの形で映されているドキュメンタリーである。
さまざまな部署でのスタッフの活躍や、予算の限られる中「地域に根ざす図書館として何ができるか」と幾度となく繰り返される職員による会議……。
これらの舞台裏の日常を記録し、届ける。
この「ありのまま」であることに心を打たれたことと、映画本編が3時間25分と長いことから休憩を挟んだ前後半に分かれている点も特徴的であり、印象に残っている。いわゆるハリウッド映画のような華やかさはなくとも、そのありのままに価値がある。日々のニューヨーカーの生活を支える、NYPLの大切さを実感させる作品であった。ここまで漕ぎ着けた監督の思いを強く感じるところであるが、図書館側の思いもなければここまで深いところまで入り込んだ作品にはならなかっただろう。

さてそのようなユニークなNYPLの新しい取り組みが、この“Missing Sounds of New York”である。
クリエイティブエージェンシーのマザー・ニューヨークとのパートナーシップによって実現したこの企画は、彼らが「没入型の体験」というように、例えば図書館内の音などの身近な生活音でありながらも、世界観に入り込みやすい全6トラックの構成になっている。

奇しくも今年の1月に出張でニューヨークを訪れていた私は、これらの音から風景がありありと思い浮かんできた。

レストランで賑やかに食事を愉しむ人々の声。
通りを行き交う人々の喧騒。
セントラルパークでランニングをする人々の息づかいや、馬の足音……。

すべての記憶がニューヨークの人々の音と深く結びついていることに気づかされる。
音から想像力が広がり、その臨場感を思い出すことができる。

「オーディオランドスケープ」とは私たちには耳馴染みのない言葉であるが、まさにこれらは「音から広がる風景」と言い換えることができるだろう。

よく味覚は記憶に結びつきやすい、というが、音も、記憶を呼び覚まし、そして想像力を掻き立てる効果を持ち合わせているのかもしれない、と感じた。

この「音から広がる風景」はもちろんニューヨークだけでなく私たちの街にもあり、いつも私たちの傍にある。
少しだけ目を閉じて、思い浮かべてみてほしい。
公園で遊ぶ子どもたちの元気な声、友人や家族との楽しい会話、散歩の時に感じる心地よい風の音……。
今思えば、日々、たくさんの音に囲まれていることがわかるだろう。

そして、“Missing Sounds of New York”のリリースを読んで、最後に気がついたことがある。
彼らはこの副題を「ニューヨーカーへの、耳へ届けるLove letter」としているのだ。

ここでまたガツンとやられた。
「そうか、まさにこれは “Love letter” なのだ…!!」

届けたい人を思い、したためて、届ける。

“Love letter” は、思い出を綴り、今を思い、未来を描くもの。
だから、この音を聴いていると穏やかな優しい気持ちになれるし、いつか来る新しい未来への希望を自然と持つことができるのだ。
そう思ったら、心が穏やかに解放されていった。

今、みなさんにもこの“Love letter” を、ひとりひとり大切に受け取ってもらいたい。
楽しい記憶に思いを馳せ、今ここにある自分の気持ちを思いやり、未来へと希望をつなげてほしい。
少しずつ、前へ、未来へ、穏やかな「Love letter」の音から広がる風景をつなげていきたいと思うのだ。

***

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2020-05-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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