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メディアグランプリ

子どもの可能性の芽を摘んだ罪深い親、その贖罪。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森北 博子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
口をとがらせて、怪訝そうに長女が言った。
「なんで親ってさ、子どもに自分の夢を押し付けたがるんだろう」
 
テレビ画面には、「天才ゴルフ少女」と呼ばれる8歳の女の子が映っていた。
父親の厳しい指導にもくじけず、懸命にトレーニングに打ち込んでいる。
目に涙を浮かべながらも、決して弱音を吐くことはなかった。
 
少女は小さいころ、父親にゴルフの才能を見出され、父の独学による指導を受けて実力をつけていった。そして、わずか5歳で世界一になったそうだ。すごい親子がいるものだ、と感心して私はテレビ観ていた。
 
しかし長女は、それは親のエゴだ、とウンザリしているようだった。たぶん、自分の幼いころに少女を重ねていたに違いなかった。長女が口にした「押し付け」という言葉に、私は胸がチクリとした。
 
多くの親はおそらく、自分の子に期待を抱いているだろう。
 
「この子は何か特別な才能を持っているかもしれない。その可能性を見つけて伸ばしてやるのが親の務めだ」そんなふうに私も思っていた。それが初めての子育てなら、なおさら力が入る。
 
はじめに子どもたちに与えた習い事は、フィギュアスケートだった。
きっかけは、私が週に1回、大人スケート教室に通っていたことだった。最初は私一人で通っていたが、長女と次女がそれぞれ5歳になると、子どもクラスに入れて一緒に習うようになった。小さいうちから体を動かす楽しさを教えたい、と思ってのことだった。
 
教室と言っても、まだ小さかった二人には遊びの延長のようなものだった。同い年ぐらいの子たちと共に、ワーワーキャーキャー言いながら氷の上を転げまわっている。そんな楽しそうな姿を見るのは、私の癒しでもあった。「片足に長く乗って滑れるようになったよ」「うまく止まれるようになったよ」と、逐一、笑顔で報告してくれるのも嬉しかった。
 
しかし上達具合に差が出てくると、上手な子はコーチの指示で次々に上のレベルに異動していく。コーチから昇級を告げられる光景に、いつしか私は羨望のまなざしを向けるようになった。我が子たちは、いつまで経っても声がかからない。上のクラスとはカラーコーンで仕切られただけなのに、なんだか高い壁があるように思えてならなかった。
 
気持ちの焦りから、娘たちの劣った部分だけが妙に目についてしまう。やがて教室の帰り道に、ダメ出しがはじまった。ひとたび他の子と比較をはじめた私は、それを止めることができなくなった。教室の最中に少しでもダラけた姿を見せると、キッと厳しい視線を向けて怒りをアピールした。子どもたちは、チラチラと私の顔色をうかがいながら練習するようになっていった。
 
そうなるともう二人には、スケート教室は苦痛でしかない。可愛い練習着や高いスケート靴を買い与えても、個人レッスンをとってやっても、モチベーションはあがることは無かった。ついには長女が辞め、後を追うようにして次女も辞めてしまった。
 
「6年近く費やしたこの時間は、いったい何だったの?」
子どもたちが辞めた直後は虚しさでいっぱいだった。
 
その後、いろんな習い事をさせては、同じことを繰り返してしまった。
私の過剰な期待は、いつも子どもたちの楽しい気持ちを削っていった。
それに気づいたのは、だいぶ時間が経ってからだ。
 
今思うと、私と、天才ゴルフ少女の父親との違いは明らかだった。
 
少女の父親は、いくつか選択肢を与えた中の1つとして、本人が興味を持ち、楽しんで取り組めるものがゴルフだと気づいた。常に子どもを観察し、気持ちを推し量って、本人の望むように環境を整えてやった。そこに親の押し付けは一切ない。少女はただ「楽しい」「上手くなりたい」という気持ちに従ったにすぎない。それが結果として、彼女の才能を開花させたのだ。「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものだ。
 
子どもの可能性は無限大だ、などと言われる。
それを生かすも殺すも、親をはじめとした周りの大人次第だ。
 
しかし今さら、私の失敗は取り消すことはできない。しかも「子育て」において、私に残された時間はわずかしかない。長女は今年、二年後には次女が、二十歳を迎える。すでに親のお膳立てを必要とする歳でもない。好きなものを見つけ、上手くなりたいと努力し、自分の可能性を伸ばしていくことは、自らやっていくだろう。
 
でも。
もし最後に一つ、何かしてやれるとしたら……?
 
贖罪の手立てを考えていて、ハッとした。
 
今まさに私は、自分の可能性を模索している最中ではないか。
50歳を目前にして、「天狼院ライティング・ゼミ」という新たな学びに夢中になっている。苦しいけれど、楽しい。厳しいけれど、頑張ろう、と思えるくらいに。
 
自分の可能性を見つけ、今からでもそれを伸ばすことができると、私は本気で思っている。
そんなふうに「好き」を信じて、幾つになっても挑戦する姿を見せること。今の私にできるのは、それ以外にないのではないか。
 
今週末も、パソコンの前に座って、課題に頭を悩ませる日々だった。
 
しかし、娘たちよ。
母は今、自分の未来にワクワクしています。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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