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メディアグランプリ

遠足のおやつは未来を生き抜くための貴重な教材である


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:市川みどり(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「先生、バナナはおやつに含まれますか?」
 
どこにも出掛けられないゴールデンウィークの昼下がり、バナナを食べながらふとそんなセリフが思い浮かんだ。
小学校の遠足時、先生が繰り出す「おやつは300円まで」という規制に対し、生徒から放たれる定番の質問である。
実際にそんな質問があったのかどうか、私の経験で言うとあまりに昔過ぎて覚えていない。
しかし、バナナがおやつに含まれるか否かによって、買えるお菓子の量も変わってきてしまうので、子供にとっては非常に関心の高い問題であり、当然そのような質問は出たのだろう。
 
結局、バナナはおやつに含まれるのか?
 
気になってネットで調べてみたところ、どうやらバナナはおやつに含まれない説が主流らしい。
私の感覚でも、バナナはおやつではない。
理由は、バナナの価格が一定ではないからだ。
バナナはたいてい房で売っている。しかも房についている本数がまちまちである。
1房198円としても、房によって1本あたりの価格が変わってくる。
その上、バナナはグレードによっても金額が違う。
高級バナナとお買い得バナナでは3倍ぐらい値段が違うのだ。
そのように値段が一定でないものをこの場合のおやつに含めてしまうと、周囲の判定が難しくなってしまう。
 
「おや? 君のおやつは300円を超えてないかい?」
「いやいや、このバナナは昨日特売で買ったので1本10円にも満たないのだよ」
「いやいや、そんな安いバナナがあるものか。バナナはたいてい1本40円前後だ」
「いやいや……」
 
などと、楽しいおやつの時間だというのに、不穏な空気があちこちで流れ始める恐れがある。(ないか……)
 
この「バナナはおやつか否か」問題。
もう少し調べてみたくなったので友人たちが集うグループLINEで聞いてみた。
 
「バナナはおやつだと思いますか?」
 
「バナナは朝ごはんだと思う」
 
聞き方が悪かった。
 
「遠足のおやつにバナナは含まれると思いますか?」
 
すると現役のママである彼女たちから返信が続々と届いた。
 
基本的には全員バナナはおやつに含まれないという回答。
しかし、驚いたことに遠足のおやつを学校が用意していたという例があったのである。
理由はおやつ交換が激しくなってしまったから。
 
激しいおやつ交換……何それ。
 
別の友人からはこんなお答えもいただいた。
 
「とにかく個包装してあって、数が多く入っていて、みんなと被らないものを選ぶのが大変だった」
 
うーむ。世の中はそんなことになっていたのか。
子供がおらず、最近の遠足事情を全く知らない私はビックリ仰天である。
私たちの時代もおやつの交換はあったが、仲の良い子同士、「プリッツ2本あげるからポッキー2本ちょうだい」といったレベルのかわいいものであった。
わざわざ個包装を選ぶということは、その交換はかなり大規模に行われていることが伺える。
もはや300円では足らず、金額の上限設定を無視することもあったらしい。
 
さらに、クラスでも人気のある子はみんなとお菓子交換ができるけど、そうでもない子は交換ができないというせつない問題も発生。
特に人気者は自分が持っていった以上のお菓子がゲットできるという構図も生まれていたらしい。
こんなところにも格差が生まれるとは恐ろしい時代になったものだ。
 
このような経緯を考えると、学校がおやつを用意するという方法は一見最適な解にも思える。
 
しかし、なんだかもったいない。
 
遠足の前日、親からお金をもらって友達とおやつを買いに行くワクワク感。
正直、当日よりそっちの方が楽しかったんじゃないかと思うくらいの記憶がある。
校長先生によれば「家に辿り着くまでが遠足」だが、既に「おやつを選ぶ時から遠足」なのである。
 
それだけではない。
限られた金額の中でお菓子を買うという行為は、またとない学びの機会である。
300円以内でどのような組み合わせにしたら自分の満足度が最大化するかを考えることは、将来限られた資源をどのように活かすかを考える練習になる。
 
クラスで人気がない子はお菓子交換ができないという問題は非常に切実であるが、どうしたら交換の輪に入ることができるかを考えることも一つの学びであるし、なんなら自分は交換しなくても良い、遠足の楽しみは別のところに見つけるというように我が道を確立してしまうのも一つの学びである。
 
遠足のおやつが予想外の問題を引き起こすからと言って、それをやめてしまう(学校が用意する)というのは少々短絡的な気がしてならないのだ。
問題があるのであれば、それを解決するためにはどうしたらよいかを子ども達に考えさせることで、これからの時代に求められる思考力や判断力が養われるのではないだろうか。
その時に子ども達が「学校が用意すれば万事解決じゃん」という答えを出すのであれば、それはそれである。
 
別の友人からはこのような話も聞いた。
遠足のスケジュールがタイトなので、おやつを食べるのはバスの中になるかもしれないと説明された子どもたちは、バスに迷惑がかかるのでボロボロ落ちるお菓子はやめようと自分たちで判断して選ぶときの参考にしたそうだ。
 
すごい。
自分たちで問題を想定して対応を考えている。
子ども達にはそれだけの能力があるということである。
その能力を使わせる教育と使わせない教育では、育てられる思考力には大きな差が出るだろう。
 
学校行事は全てが貴重な学びの機会である。
問題が起こったらむしろそれを教材にして自分たちで考えさせる。
予測不能なこれからの時代を生きていかなければならない彼らのために、そういう教育にシフトしていく必要がある。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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