メディアグランプリ

5年間愛した男より、その日出会ったばかりの男を信じた話


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記事:kotokoto(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
山奥の仙人に会いに行った。
 
1月のある日、友人に誘われて。
なんでも、千葉の山奥にすごい人がいるらしい。
除霊をしてもらったとか、病気が治ったとか、仙人の言うとおりにしたら仕事が大成功したとか。まぁ、よくある話だ。
 
「こんな時だから、人生変えようよ」
 
友人はそう言ったが、私は十分自分の人生に満足していたし、特に相談することもないなぁなどと思っていた。
だいたい、山奥の仙人てなんだよ(笑)
 
それでも、こういう時は流れに乗った方が良いことを、私は経験上知っている。
きっと何か必要があって、私はそこに呼ばれている。
そして、大抵行って良かったと思うことになる。
何よりも、私だって山奥の仙人に興味があったのだ。
会ってみたいじゃない。
私はワクワクした気持ちで、彼女と一緒に行くことにした。
 
仙人は、想像よりずっと若く、60歳前後に見えた。
東京天狼院書店の店長のような、頭がつるつるで福顔の優しそうな男性だった。
 
「あなた、会社辞めた方がいいよ」
 
話し始めてすぐに、仙人はそう言った。
突然の言葉に度肝を抜かれつつ、期待で胸が高鳴った私は
グイグイと仙人の話に引き込まれていった。
話してもいないのに、仙人には私の本当の望みもみんな分かるらしかった。
 
「あなたはね、思いっきりやりたいことをやった方がいいよ」
 
帰り道は、不思議と安堵の気持ちに包まれていた。
ズバリ言い当てられた、というような興奮ではない。ワクワク、とも少し違う。ただ、肩の荷が降りたような、心の奥深くからホッとした感じ。
静かな安堵感だった。
 
「来てよかった。連れてきてくれてありがとう」
 
運転席の友人に御礼を言いながら
やっぱり、流れに乗って正解だったなぁと考えていた。
 
しかし……困ったことになった。
 
私の大好きな、とても信頼している彼が、仙人と正反対のことを言いだしたのだ。
 
帰宅後、
ゲッターズ飯田の占いを見てみると、こんなことが書いてあった。
 
「今月、仕事を辞めたくなると思うけど、今はまだ決断しないように。ここでの決断は必ず後悔することになる」
 
……。
 
さっきまでの、「仕事辞めよう!」という私の決意がグラグラ揺れる。
 
だって、ゲッターズ飯田さんだよ?
大好きな、愛するゲッターズさんが、だよ?
どうみても今の自分にぴたりと当てはまるっぽいアドバイスをしてくれてるのだ。
しかも「必ず後悔する」って。
「必ず」って、思いっきり釘を刺されてる!
 
ゲッターズさんには、この5年間、大変お世話になった。
登録している公式LINEでは、毎日素敵なメッセージを送ってくれる。
ちょっと元気がない時、迷っている時など、彼の優しい言葉にどれだけ救われたか分からない。いつも前向きな気持ちにしてくれて、本当に感謝している。
占いは、普段はそれほど重要視していないのだが、何か行動のタイミングを知りたい時、決断する時などには、彼の占いで自分の運気の流れを確認したりしている。
頼りになるのだ。
もう、そんな優しくて頼りになる素敵な彼が大好きなのだ。
 
そんな彼が、今、私が仕事を辞めることを反対している。
果たしてこのアドバイスを無視して良いのだろうか?
5年間築いてきた信頼関係があるというのに。
 
だいたい私、今の仕事だって大好きなのだ。
仙人に会うまで、仕事を辞めようだなんて考えていなかったのだ。
今日会ったばかりの知らないおじさんに言われた言葉に、影響されすぎじゃない?
そっちの方がどうかしてる。
いつか仕事を辞めるかもしれないけど、別に今すぐじゃなくても良いのだ。
ゲッターズさんだって、「今」は動くなって言ってるだけなんだ。
ベストなタイミングが来てから辞めるのだって、遅くはない。
うん、そうだそうだ。そっちの方が絶対いい!
 
そう考えながら、どんどん心が重たくなっていくのを感じる。
このまま仕事を続けることを具体的にイメージしてみると、ますますがっかりした気持ちになった。
 
「いいかい? あなたが今やらなければいけないことは、会社を辞めること。今すぐ」
 
別れ際に言われた仙人の最後の言葉が、頭の中に響いた。
その途端、重たい感じが消えて、パァーっと目の前が明るくなる。
 
そうだよな……
 
いつもそうなんだ。
 
例えば長年付き合っている恋人がいて、もし、ある日運命の人に出会ってしまったら、私はきっと新しい運命の恋を選ぶ。
今までの恋人はなんにも悪くなくて、変わらず大切で、別れる理由なんてないように思えるのだけど、けれども、もしそれ以上に惹かれる人に出会ってしまったのなら、次の恋へと進むしかない。自分の心に嘘はつけない。出会った時点で、すでに答えは出ている。
もうそれまでの恋は、私にとって過去のものになっているのだ。
 
どんなことでも、大事なのは、今の自分の気持ちに従うことだ。
そして自分の気持ちは、自分にしか分からない。
 
それがどんなに信頼している人でも、
どんなに愛している人であっても、
 
自分の人生を、自分以外の誰かに決めてもらうことなど、できない。
いつだって、答えは自分の中にあって
本当の自分は、最初からその答えを知っている。
 
そうなんだよな。
 
……うん、そうしよう。
 
翌日、私は会社に辞表を出した。
 
あれから3か月。
辞表提出から退職まで、3か月かかったが、今ようやく全てが終わった。
仙人の言葉を信じてよかったと、毎日のように思っている。
信じてよかったなぁ、仙人を。
 
本当に、信じてよかった。
自分の気持ちを。
 
あ、ちなみに
私は今でもゲッターズ飯田さんのことが大好きである。
彼は私の浮気もお構いなしに、相変わらず優しく前向きなメッセージを
今日も私に届けてくれている。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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