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メディアグランプリ

人間関係は鏡


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:川﨑 裕子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は都会に怯えていた。夫の仕事の関係で、東京に引っ越したばかりの頃のことだ。4歳の娘を連れての外出が怖かったのだ。
 
私は、人生の大半を田舎で過ごした。田舎ではどこへ行くのも車だ。電車でお出かけすると、慣れないことばかりでモタついていた。舌打ちをされたり、面と向かって注意されたりしたこともある。何がいけないのだろうと凹んでも、なかなか解決策が見つけられなかった。
 
都会はとにかく人が多い。田舎者としては、歩くスピードに圧倒される。自分がダサくて、周りは素敵に見えてしまう。のほほんと田舎のペースで歩いていると、自分が浮いているように感じる。いつも、娘の手を引きながら「すみません、すみません」と平謝りするしかなかった。
 
最初は「低姿勢で謝っていれば丸く収まる」と本気で思っていた。でも、なんだかモヤモヤしてきた。外出にビクビクしていては、新天地でうまくやっていけない。でもどうすればいいのか分からなかった。
 
そんなモヤモヤを抱えていた頃、小さな出会いがあった。娘と休憩をしたくて、駅近のドトールに入ったときのこと。静かにパソコンや本に向かっている人が多く、子連れはお呼びでないという雰囲気が少しあった。なので、隣の席も空いている、はじっこの席にひっそりと座ってみた。
 
ほどなくして、隣の席にマダム風の70歳前後の女性が来た。「娘がはしゃぎすぎたら注意されるかも」と一瞬、緊張した。でも、その日は思い切って、相手の目を見て微笑んでみた。そうしたら、その方も微笑んで軽く会釈してくださった。
 
ホッとしたのも束の間で、今度は娘が「チーズトーストが食べたい!」と騒ぎ出した。都会で子連れで外出することに対して、臆病になっていた私。店を出た方がいいのか、注文してこのまま店にいても大丈夫なのか。小さなことの判断もできなくなっていた。
 
迷っていたその時、「全部は食べ切れないから、半分いる?」とその女性が話しかけてくだった。おまけに、娘のことを「かわいいわね〜」とおっしゃってくださった。「え? 私たち母娘はドン臭くて煙たがられたりしてないの?」と、拍子抜けしたが、ありがたく頂戴することにした。
 
しかも、その女性は、帰り際に娘にお菓子までくださった。「デパートで買い物してオマケでもらったけど、私はどうせ食べないから。あげる人もいないの」と言いながら。
 
「こんないい人もいるんだ」本当に嬉しかった。私たちはお礼を言って店を去った。子連れが迷惑というわけでもない。田舎者がバカにされているわけでもない。都会は怖い人ばかりとステレオタイプを持っていたのは、この私だった。
 
私には都会の人々が、別世界に生きているロボットのように見えていたのだ。でも、みんな同じ、血の通っている人間。都会と田舎、どちらに住んでも温かい交流はできる。その女性とのほんの少し会話が、私の心を溶かしてくれた。
 
駅からの帰り道、自転車に乗りたがらない娘が逃げ回るのが恒例行事だった。一瞬だけ頭をよぎった。「通行人が多い場所だから邪魔かな。しつけがなっていないと思われるかな」と。
 
でも、首をブンブンと振って、気を取り直した。もう壁を作るのはやめにしよう。走り回る娘を追いかけながら、目が合った人に微笑みかけてみた。そうしたら、その人が立ち止まって、「ママとじゃれ合いたいのね〜」と声をかけてくださった。他の通行人の方達もニコニコしていた。
 
自分で作った壁の存在に気づいたら、見える景色が変わってきた。都会の人たちもやさしい。私のことを馬鹿になどしてはいない。ほとんどの人は、こちらが微笑めば微笑み返してくれる。時には好意的に話しかけてもくれるし、助けてもくれる。
 
そう、私はとにかく不安だったのだ。自分が傷つくのが怖かったのだ。都会に合わせなければと、自分にプレッシャーをかけていた。もしかしたら、そんな私の方が怖い顔をしていて、近寄りがたかったのかもしれない。
 
なんだか急に、足取りが軽くなった。都会が怖くて、嫌な目に遭って、でもどうしたらいいか分からなかった私。でも、答えは簡単だった。人間関係は鏡のよう。こちらが恐れれば相手も恐れるし、こちらが温かくなれば相手も温かくなる。
 
嘘のようだが、それ以来、嫌な思いをすることがなくなった。もちろん、電車生活にも慣れた。それでスムーズになったことも確かにある。
 
ただ、一番大きかったのは、自分の思い込みの問題だっだと思う。田舎出身の自分に胸を張ってもいいし、都会でも目が合ったら微笑んでもいい。傷つくのが怖くて交わりを避けたら、ずっと孤独のままだ。
 
これは何にでも当てはまるのではないだろうか。進学や就職などで環境が変わったら、ワクワクするけど不安もある。私のように萎縮してしまう人もいるかもしれない。傷つくのが怖くて殻に閉じこもってしまうかも人もいるかもしれない。
 
恐れで頭がいっぱいになって、私は悪循環のループにハマっていた。でも、あのドトールの女性みたいに、私も温かい行動ができる人でいたい。
 
今はコロナで外出の機会は減った。だが、鏡に写った自分を誇れるよう、わずかな外出の機会でも微笑みを忘れずにいようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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