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勉強を苦に息子は家出した


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:川俣智恵子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
勉強を苦に息子は家出した。
 
どうして、勉強しなくちゃいけないの?
 
この問いにはいろいろな答えがあるだろう。
でも、子どもが本当に心から納得して勉強に向かえるような、そんな答えを、私たち大人はどれくらい用意できるだろうか。
 
午前9時、夫が息子の勉強を見てくれていた。
「オイ、『お』の点が抜けてるぞ! 書きなおし!」
「お」の文字は、右上に点がある。息子はそれを抜かして書いていた。
息子は書き直しにしばらく抵抗し、そしていなくなった。
 
新型コロナウイルスの影響で、休校が続いている。自宅学習の日々。親子ともどもストレスをためていた。
 
「なんだ。あんなところに」
息子はお隣のガレージの前にいた。閉じたシャッターの前で膝を抱えてうなだれていた。
 
隣に行くと、私のことを強く拒否した。
「来ないでくれよ! オレは家出したんだ!!」
 
夫と交代で声をかけ、15分後。夫に背負われて7歳児は帰ってきた。
 
ピカピカの1年生がもうこんなに勉強を嫌っている。
むりやりに押し付けて勉強を再開させたら、また同じことの繰り返しになるだろう。
どんなふうに話そうか?
 
「ママが今、ユーチューブで勉強してるじゃん? 日曜日。知ってる?」
「うん。作文」
「あれ、すっごく面白いんだよ。おもしろい勉強ってあるんだよ」
「へえ」
息子は私のほうを見た。私は、自分が今取り組んでいる、ライティング・ゼミについて話すことにした。
 
息子とよく行く駅の本屋さん、天狼院書店。あそこで申し込んだ勉強であること。
先生が教えてくれる作文の方法が画期的であること。それをマスターするとおもしろい作文が書けるように進化する。ピカチュウがライチュウになるみたいに。
 
私は話し続けた。
 
授業も面白いけれど、本当に面白いのはここからだ。ママたちが書いた作文をコーチが読んでくれる。このコーチが鬼だ。昔、ママたちの時代にはケンシロウという強い男がいて敵の急所を突きまくっていた。今なら「鬼滅の刃」だ。あんなふうに生徒の作文を「あそこがダメ」「ここが弱い」ってバッタバッタとなぎ倒す。
 
今朝、ケイタは「『お』の点がない」ってパパに言われたでしょ? 悔しかったよね?
その何倍も厳しいダメ出しを、ママもやられている。不合格になって悔しかったなー。何回も「ひでぶ」って言って倒れたよ。
 
ただし、生徒の中にもツワモノがいる。コーチが認める作文を書き上げたらゲームクリア。合格したら、天狼院書店のホームページに載せてもらえる。
その作文が全部本当に面白い。みんなの勇気がすごい。例えば、「ある女の子をすごく好きになって4回告白して全部振られた話」。ケイタならそんなこと書ける? ムリだよね?   それで、「こんな秘密、読んでいいのかよ」ってドキドキしながら読むわけ。みんなの失敗談とか苦労話に、はじめは笑っちゃうんだけど、最後は、泣いちゃう。それくらい感動する。
感動して泣くぐらいの作品を、そこら辺にいる普通のおじさん、おばさん、お兄さんやお姉さんが書いている。
それを読んだら、ママも、「やってやる!」って思うんだ。「私もこんな作文を書きたい!」 って思って、やる気が湧いてくる。
 
「へえー」息子の顔が少し明るくなった。
 
「それでさ、ケイタ」
私は息子の目を見た。
 
「ママが今、こんなに面白い勉強ができているのはどうしてだと思う?」
息子も私を見た。
「それはね、小学校の頃にひらがなを勉強したからなんだよ」
 
私は話した。私だって勉強が大嫌いで、イヤイヤ取り組んできたこと。
私の両親は「勉強しろ勉強しろ」とうるさくて、「親、うぜー!」と思ってきたこと。
 
だから気持ちは本当によくわかる。
 
でも、今、私は本当に面白い勉強に出会った。それは今までイヤイヤながらも学んできた基礎があったからだ。つまらなかった勉強も無駄じゃなかったと思うようになった。
 
人生はゲームに似ている。アイテムをたくさん集めるほど、有利に戦える。
ケイタはスタートしたばかりだから、今は地道にアイテムを集める時期だ。
ひらがなは50個もある。全部ゲットするのは大変な道のりだ。
「でも、ママは信じてるよ。ケイタみたいな勇者なら絶対にできるって」
 
息子は、少し口をとがらせていた。
なんだ、結局、つまらなくても我慢して勉強しなさいって話かよ、って思ったのかもしれない。
 
けれど、そのあと彼は自分からドリルの続きを始めた。
「お」「す」「ぬ」「ね」の文字を、いつもより丁寧に書いて、見せてくれた。
私は息子を誇りに思った。
 
息子のプチ家出は、私を宝探しの旅に連れ出した。
彼の言外の問いは「どうして勉強しなくちゃいけないの?」。
 
正しい答えが出せたかどうかはわからない。
でも、答えを導き出すために、私は考えた。
そのことに価値があるんだと思う。
 
私は今回、宝物を2つ見つけた。
ひとつは、天狼院ライティング・ゼミ。
もうひとつは、内心では両親に反発しながらも、勉強した経験。
宝はどこか別の場所ではなく、私の中にあった。
 
子どもと話そう。
それは、あなたを内なる宝探しの旅に連れて行ってくれる。
「あの経験も実は宝だった」。そんな気づきのチャンスなのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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