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メディアグランプリ

共感を呼ぶネガティブ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小島由佳子(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
先日、民泊仲介の世界最大手であるAirbnbの創設者兼CEOであるブライアン・チェスキー氏が、レイオフ(従業員削減)のメッセージを発表した。
 
その言葉だけを聞くと、「ああ、やっぱり観光業は厳しいか……」もしくは「あのAirbnbまでも……」「悲しいニュースか……」という感想をもって見過ごしてしまうのが普通ではないだろうか。
あるいはひとつの企業の対応、という目線で見れば、「従業員削減なんてひどい」「なんてことだ」「見損なった」とSNSで炎上してしまうこともあるかもしれない。
 
だが、このレイオフのメッセージの中身は「○○人削減します」だけで終わるものでは決してないのだ。
 
彼は冒頭、率直に「悲しいニュースを伝えなければいけない」と従業員へ語りかける。
そして収益が昨年の半分になる予測であることや資金調達をおこなったことに加え、
「いつ旅行産業が回復するかわからず、回復したときにもその様子は変わりはてているだろう」という状況から、
Airbnbの原点−自宅をホストし体験を提供する−に立ち返り、焦点をしぼった事業戦略をしていくために今回のレイオフが必要になった、と意思決定のプロセスを述べている。
 
ここまででも十分丁寧に説明をしている印象であるが、
おもしろいのはここからだ。
 
削減に取り組む際の原則の明示、そして、退職する従業員に向けた退職金・株式・ヘルスケア・仕事を見つける際のサポート、など多岐に渡る対応が項目ごとに書かれているのだ。
 
まずは削減に取り組む際の原則について。
ここでは、
・すべての削減を、将来の事業戦略および必要とする能力に位置付ける。
・影響を受ける人々のために、できる限りのことをする。
・多様性へのコミットメントに対して揺るぎないようにする。
・影響を受ける人々のために、1:1のコミュニケーションを最適化する。
・すべての詳細が明らかになるまで、決定事項の伝達をしない。
(部分的な情報は事態を悪化させる可能性があるため)
と明らかにし、これらの原則に忠実でありつづけるために最善を尽くしてきた、としている。
 
さらに退職する従業員に向けた取り組みについては、
追加給与のある退職金、株主になれること、健康保険の費用負担をすることなどが続く。
 
なかでも、仕事を見つける際のサポートについては、かなり手厚く述べられている。
 
アルムナイ(卒業生)が新しい仕事を見つけるためのWEBを立ち上げること。採用チームそして従業員が、アルムナイが新しい仕事を見つけるためのサポートをすること。
ラップトップのPCを持ち続けられるようにすること……など。
 
そしてスケジュール感を提示し、
最後は、真摯な謝罪と感謝で締めくくっている。
 
最後まで読んでこう思う。
はて、この意思表明は、本当にレイオフのメッセージなのだろうか?
 
まるで事業ローンチの際のプレゼン資料のように、洗練され、非常に明快なメッセージだ。
 
私は彼がしゃべっている場面を目にしたことはないが、
その姿を思い浮かべることができるほどに、熱量と誠意、従業員を思う気持ちのこもったメッセージであると思う。
 
Airbnbは「belonging」(居場所という意味合いが近いと考える)をミッションとしているが、まさにこのメッセージとその取り組み内容は、従業員の「belonging」を大切にしている、というミッションそのものが伝わってくる内容になっていると言えるだろう。
 
もちろん従業員の方からしてみれば厳しい局面であることに変わりがないのは承知のうえであるが、
きっとこのメッセージを読んだ多くのAirbnb利用者は、
「次に旅行に行けるようになった際には、またAirbnbのサービスを利用しよう」と思うはずだ。
 
これこそが、企業のブランディングだ。
取り組みから彼らの意思と存在価値が読み取れる。
 
しかしレイオフのメッセージすらブランディングとしてしまう彼には脱帽である。
 
社会は、そして私たちはいま、事実だけを求めているのではなく、そのプロセスや、ブランドとしての姿勢・スタンスがしっかりと明示されたうえでの発信を自然と求めている。
 
思考プロセスの裏側を見せることは勇気のいることであるが、その分、共感を呼ぶことができる力強さを持ち合わせているともいえるだろう。
 
いま企業のトップは何をどう発信するべきか、と問われたら、
このAirbnbのメッセージは、ブランドが世間に与えるイメージを左右することについての好事例といえるのではないだろうか。
 
ネガティブなことも、発信の仕方次第では共感を呼びブランディングにつなげることができる、ということの証明である。
 
***
 
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2020-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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