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BBQは茶の湯に通ず


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:本田啓介(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
ゴールデンウイークには、新型コロナウイルス対策のステイホームのため、お家でBBQをしていた方が多くみられました。お出かけをできないので、家族だけで自宅の庭で美味しくお肉を楽しんでいました。
 
実は、私は日本バーベキュー協会の初級インストラクターなのです。講座を受講して、検定を受けるのですが、そこでは今までのBBQ観、人生観が変わる教えを受けます。
 
みなさんは、外で火を起こして、各自が網の上に薄い肉を焼いて食べていくのをBBQだと思っていませんか?
日本バーベキュー協会では、これをBBQとは呼びません。これは、ただの野外焼肉です。
BBQは、迎えるホストが塊の肉を美味しく焼き上げ、切り分けてみんなにサーブするおもてなしをいうのです。同じ肉をみんなでシェアしながら、会話を楽しむその空間、コミュニケーションをBBQとします。
BBQの語源は、南米の先住民がよんでいた肉を塊で調理する調理方法「バルバコア」からきています。
そして、アメリカのパーティー文化と合わさって、ホームパーティーで一つの塊の肉をみんなで楽しむことをBBQというのです。
 
日本バーベキュー協会は、このバーベキュー文化を広げるため、バーベキューの心得を「バーべ九則」として定めています。
これは、茶の湯の祖、千利休が茶の湯の心得を説いた「利休七則」を基にしています。利休の説く茶の湯も、茶室のなかでは身分の差なく対等の立場でお茶を楽しみくつろいでいただく、というコミュニケーションツールであることから、バーベキューと目的を同じくしているのです。
ちなみに、利休七則は、
1、茶は服のよきように点て 2、炭は茶の沸くように置き 3、花は野の花のように生け 4、冬は暖かに夏は涼しく 5、刻限は早めに 6、振らずとも雨の用意 7、接客に心せよ
としています。
バーべ九則は、
1、下調べは慎重に 2、準備はお家で 3、降らずとも雨の用意 4、焼ける前に一品 5、食べ物を炭にするべからず 6、子供相客に心せよ 7、飲んだら運転しない 8、ごみ、炭は埋めない捨てない 9、来た時よりも美しく
としています。
振らずとも雨の用意、は共通していますが、降雨のようにままならない自然のことに心惑わせることなく、準備したうえで、目の前の客に心をしっかり向けようというものです。
ごみを捨てないというのも、みなが気持ちよく使える場所にするため、すべて、相手のおもてなしのためです。
 
焼ける前に一品、とは塊の肉は焼けると美味いが焼けるまでに時間がかかるので、前菜を楽しんでもらおうというものです。色とりどりの前菜に目を楽しませ、食前酒で会話を盛り上げゆったりとした時間を過ごしてもらう、これもパーティー文化のおもてなし精神からきています。
 
サービス精神を表すものとして、バーベキュー協会にはバーベキューの三種の神器があります。
火おこしのラピッドチムニースターター、スマートな撤収のための日消し壺、そして水鉄砲です。
脂の多い肉の場合、脂が炭に落ちてブワーっと炎が上がる時があります。
そんなとき、「あわてるな、オレに任せておけ」、
サッと腰から水鉄砲を抜いて、シュッと消火するのです。
オー、っと歓声が上がればしめたもので、それからの演出にもみが入ります。
ホストが肉を焼くのも、すべておもてなしですから、肉や野菜、調理法の解説をしながら小粋なジョークをはさみつつ盛り上げていきます。
一番盛り上がるのは、フタをしていたバーベキューグリルをオープンするときです。
すぐに開けてしまってはつまらない、
「さあ、みなさん、お待ちかねの○○チキンが焼きあがりますよー。 3,2,1,ハィッ」とマジシャンが鳩を出すときのように、演出たっぷりに提供するのです。
もちろん、開けたなかには、白い蒸気の向こうに皮が照り照りに光るいかにもおいしそうなチキンが待ち構えているので、みんなのテンションも最高潮に上がっていきます。
チキンは、柔らかくなると手で分解できるのですが、それも演出です。手袋をしても熱いのですが、そんなことはおくびにも出さず、(逆に出川哲郎さんのように思いっきり熱いリアクションするときもありますが)手際よく足を外し、胸を開いて食べやすい大きさにしていきます。
 
一番うれしいのが、このような演出に喝さいをいただき、それでみんなの会話が盛り上がっていく時間です。
 
そう、BBQはコミュニケーションツールなのです。
みんなをもてなすために、メニューを考え、会場の準備をし、演出していく。
もちろん、楽しんでいただきたいので調理への研究も欠かしません。
この、おもてなしの楽しさが、BBQの神髄なのです。
 
 
 
 
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2020-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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