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メディアグランプリ

全身に赤い服をまとった男の秘密


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Tatsunori Fujikawa(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
12月24日の夜。整えられた白いひげをたくわえて、黒いベルトとブーツ、そして、上から下まで全身に赤い服をまとった男がいた。彼の肩に抱えられた白い袋の中には、たくさんのプレゼントが入っていた。
「Ho~! Ho~! Ho~! Merry Christmas!」
そんな言葉を口にしながら、毎年欠かさず、子どもたちにプレゼントを届けている。
顔いっぱいに生えている白いひげの隙間から覗かせる瞳は、どこか優しい光を帯びていた。
彼は、いつも世界中の子どもたちの笑顔を願っていた。
 
私は、その男の正体を知っている。
そう。初めて出会ったのは、2010年10月。当時の私は大学4年生で、大学院への進学を考えていた。特にやりたいことがあるわけでもなく、ただ漠然と学校とアルバイトに時間を費やす日々を送っていた。学校の成績は並ぐらい。アルバイトもそつなくこなしていた。他に特出すべき個性があるわけでもなく、どこにでもいる普通の大学生だった。
「もっと人とのつながりがほしい! できれば、学校やアルバイト以外の新しいぬくもりのあるつながりが!」
そんな時に私は大学の友達に紹介されたボランティア活動を通じて、その男と出会った。
 
その男は、いつも私に色々なことを教えてくれた。私は、彼を尊敬していた。
そもそもボランティア活動の目的って何だろう? 誰のための活動何だろう? ただの自己犠牲なのか?
当時の私のボランティア活動へのイメージは、正直良いものでは無かった。
そんな彼は、私に『恩送り』という言葉を教えてくれた。
「お前、『恩送り』って、言葉を知っているか?」
「え!? 恩返しではなく? 知りません」
「『恩送り』とは、誰かから受けた『恩』を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ることだ。
その送られた人は、更に別の人へ『恩』をつなぐ。そうして『恩』が社会へ連鎖していく」
「なるほど! 情けは人の為ならず……みたいな感じですね」
「そうだな。人のためにすることは巡り巡って自分のためになる。
誰かのために何かをするってことは、決して自己犠牲では無いんだ」
そのとき、誰かのために行動することの大切さに気がついた。私は、彼と出会えたことを心から誇りに思った。
 
また、その男は顔が広く、日本全国に知り合いがいた。彼と一緒にボランティア活動を続けることで、私にも全国にたくさんの友達ができた。想いやりをもった人たちが多かった。気がつけば、私の求めていた「ぬくもりのある人たちとのつながり」ができあがっていた。老若男女の多種多様な考え方に触れて、自分の視野を広げるきっかけにつながった。
 
さらに私自身に全国の友達へ会いに行くフットワークの軽さも身についた。もし友達がいなければ、その知らない土地に行くことは無かっただろう。知らない土地へ足を運ぶのは発見も多く、いつしか私の楽しみになっていた。社会の地理の授業でしか「知らなかった土地」は、私の五感を通して「思い出の土地」へと変わっていった。
 
3年後に大学院を卒業するときに振り返ってみると、その男を通じて、私はたくさんの経験を積んでいた。
……彼の正体は、“チャリティーサンタ”という団体である。
サンタクロースのような人を世の中に増やし、想いやりがつながる社会を目指している。
クリスマスイブの夜にサンタクロースに扮したボランティアが、ご家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」。
サンタ活動の際にご家庭からお預かりしたチャリティー金で
困難な状況にある子どもたちの支援を行なう「チャリティー活動」。
これらの活動を通じて、サンタクロースを待っている、すべての子どもたちへ笑顔を届けている。
(https://www.charity-santa.com/about/ : NPO法人チャリティーサンタ公式HPより)
 
生まれて初めて、サンタクロースになってプレゼントを届けた夜のことは今でも忘れられない。
ちょっと緊張しながらも、心の底から嬉しそうに笑ってくれた訪問先の3才の女の子。
プレゼントを届けにいったはずの私の方が、その笑顔からたくさんの感動をもらった。
 
もしもあなたが生まれてからサンタクロースになったことが無いのであれば、1度は経験してほしいと思う。
誰かのために行動することで、間違いなく圧倒的な多幸感を得られるだろう。
これからの人生に彩をもたらすことをお約束する。
 
かつて、どこにでもいる普通の大学生だった私も、気がつけば立派なサンタクロースになっていた。
目の前で困っている人がいれば、さっと手を指し伸べられるようになっていた。
日頃から誰にでも感謝の気持ちを忘れない温かな心を持つようになっていた。
2020年5月。私がチャリティーサンタと出会って、もうすぐ10年が経つ。
この活動を通じて出会った彼女と2年前に結婚した。妻との間には子どもを授かり、もうすぐ生まれてくる。私は、今度からサンタクロースになる側を卒業して、サンタクロースを呼ぶ側になるのだ。
愛する我が子へ誰かのために行動することの大切さを伝えていきたい。
私がチャリティーサンタから『恩送り』の大切さを教わったときのように。
 
 
 
 
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2020-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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