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長岡花火大会の人込み攻略法


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記事:くえ(ライティング・ゼミ GW集中コース)
 
 
夏の蒸し暑い日、人込みには行きたくない。
心底行きたいイベントでない限り、乗り気がしない。
夏は楽しみたいが、人込みが作る、あのむせ返る暑さ、熱気に包まれたくない。
夏の風物詩、花火大会だってその一つ。
もし、その人込みに、自ら入って行くならば、ある程度の武装が必要だ。
 
人込み嫌いの私が、長岡花火にハマりだしたのは、今から三年前のこと。
 
長岡花火というのは、新潟県長岡市で毎年八月二日と三日に開催される、日本三大花火大会の一つ。昭和二十年八月一日の大空襲の翌年から続いている復興祭ならぬ「復興花火」の意味を持つ花火大会だそう。日本三大花火大会の一つだけに、約百万人の来場者が訪れるようだ。
 
学生時代から社会人になるまで、約十年間、実家から離れて暮らしていた。
今は訳あって実家に戻っているが、当時は一人暮らし。
 
父から連絡があり、
 
「八月二日は、予定を空けておけよ」
 
とだけ言われた。
 
子供が成人すると、家族行事が減る家庭も多いのではないか。
私の家庭は「家族の集まり」的なことが多い。というか、私が暇だからよく参加しているだけか。
 
とにかく、目的地は、長岡の花火大会だった。
行く前日まで目的地を聞かない私は、どうかしていた。
「めっちゃ、込みそう。そして、めっちゃ疲れそう」
覚悟した。
 
しかし、うちの父は用意周到だった。それが、人込み嫌いの私の武装になったのだ。
 
先ほども言ったが長岡花火大会は日本三大花火大会の一つ。全国各地から人が集結するのだ。多少は人込みにのまれるが、この武装をするとしないでは、花火大会が終わった後の疲労感が大分違う。嘘だと思ってやってみてほしい。
 
父は言った。
「いいか、まず駅に着いたら改札階の下の駅ビルのレストランで夕食を食べる。どこにでもありそうなレストランだけど、今日の夜飯はそこで我慢。会場で食べながら見るにしても、込んでいるコンビニで並びたくないだろ」
 
父は、気合が入っていた。そんなに意気込まなくてもいいのに、歳だからかと思った。
しかし、それは、駅を降りたら一目瞭然だった。
 
「や、やばいよ、これ。この人込み、潰される」
 
東京渋谷の人込みなんてもんじゃない。誰かの熱狂的ファンが全国から押し寄せている状態とでも言おうか。
人込みをかき分け、駅の下のレストランへ向かった。駅近で食べることがポイントだ。
 
すぐに夕食を済ませ、花火大会の会場へ向かおうと店を出た。
 
父は言う。
 
「我慢できるなら、ココでは、トイレに行かない方が良い。これから歩く大手通りの途中に穴場があるから」
 
駅のトイレには、長蛇の列ができていた。
歩いてすぐだというので、私たちは会場へと向かった。長岡駅から大手通りというアーケード街のまっすぐな一本道を五分程歩くと、一般市民が出入りしているオフィスビルのような建物があった。何人かが、エレベーターでトイレのある階へ上っていく。私たちも続く。駅のトイレと比べると、並んでいる人は、たった二組。しかも、きれい。
駅から少し離れただけなのに、正に、穴場だった。
 
用を済ませ、私たちは会場へ。
突然父が、「優良席シートのチケット」を手渡してきた。
首からかけ、優良エリアの入り口で見せ、席に向かった。
 
父は言った。
 
「優良席が一番よく見えるし、どこに座るか迷わなくて良い。事前にネットで購入するんだ。色んな優良席シートがあるけど、この両脇の長生橋の間で見ないと良さが半減するんだよ。打ち上げ場所がこの橋の間だから。橋の外の席になると、花火が橋で隠れちゃって、全部を良く見ることはできないんだ、覚えとけ」
 
ほぅ、そうなのか。
会場は信濃川沿いで、長生橋という橋が二つかかっていた。
 
てか、この席凄い。前にさえぎる物が何もない。
打ち上げるおじさんは見えないけど、打ち上げて玉が空に伸びて、頭上で開くところまで、見えるんだろうな。
 
私たちは打ち上げ開始時間の十分程前に席に着いた。
くつろごうとすると、父がリュックの中から水筒とおつまみを取り出した。
 
「会場で買えば高いだろ、だからワインを入れて持って来た。コンビニで買うと並ぶしな」
 
飲む酒のことまで考えてたのか。
でも、確かに、駅から会場の席に着くまで、おしくらまんじゅうのように押しつぶされそうになったのは、改札を出たところだけだ。
武装さえちゃんと整えれば、意外と満更ではなかった。
 
私にとって初めての、長岡花火大会。
川辺の涼しく、でも生暖かい、夏の夜の風。心臓に響くドーンっという振動。あ~夏だなと浸ってみる。
開始のナレーションと共に、一万発という圧倒的数の花火が打ち上げられた。約二時間打ち上げっぱなし、それもデカい。都内の花火大会のフィナーレがずっと続いている感じだ。
 
「次は、フェニックスだ!」
「次は、天地人だ!」
 
一つの演目が終わる度に、後ろの席に座っていた地元カップルの彼が、彼女に説明していた。どうやら、常連のようだ。めちゃめちゃ詳しい。
 
初めて訪れるこっちとしては、次に何がくるかが聞こえてしまって、ネタばれ感もあったのだが、やはり、長岡花火の見どころは、後ろの彼が叫んだとおり、「フェニックス」と「天地人」だ。これを見ずには、語れない。知らない方は、是非検索してほしい。
音楽のリズムと同じタイミングで花火が上がる、進化した技術を駆使したエンターテイメントを一度見て頂きたい。感動的だ。
 
父がやっていた人込み攻略法も参考にしつつ、コロナが終息した暁には、新潟の長岡花火大会に足を運んでみるのも良い。
 
一つ、注意点がある。
あなたがもし、普通の花火大会を楽しみたいのなら、長岡花火大会は絶対に行かないが良い。
あの花火を見たら、もう他の花火大会では満足できないだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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