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メディアグランプリ

インドには月世界がある


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:牧野 佑紀(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
8月になるのに、もやのかかった空からは白い雪が降ってきた。
隣では観光のインド人が、「生まれて初めて雪を見た」と喜んでいる。
 
「世界で2番目に高い峠道」と書かれた看板の前で、記念写真を撮る。
標高は5,320メートル。
息が切れる。
看板につるされたたくさんのタルチョが、風にはためいている。
 
そしてまた、「天空の湖」と呼ばれる場所を目指して、車は走り出す。
 
ラダックを知っているだろうか。
インドの北端、中国との国境沿いに位置する、チベット人の土地だ。
中国のチベット自治区に存在したチベット文化は、かつての文化大革命によって破壊されてしまった。
そのため、このラダックは「チベットよりもチベットらしい」と呼ばれている。
 
標高は高い。
ラダック地方の中心であるレーの街は、3,400メートルの高地に位置する。
そして、このレーから車を駆って、峠を越え「天空の湖」と呼ばれる場所を目指す道のりが、ラダックの旅のハイライトだ。
 
インドの山奥の土地だから、景色は秘境っぽさにあふれている。
というより、相当の秘境だと思う。
それでも、インドの首都・ニューデリーからわずか1時間でアクセスができるし、治安も良い。
現地で出されるチベット料理は日本人の胃にあっている。
 
だから、「秘境」にあこがれてはいるけれど、一歩踏み出す自信が無い、という人にこそ、ラダックをおすすめしたい。
 
私はお盆の休みを利用して、ラダックを訪れた。
空港を降りると、四方に迫った険しい山に目を取られる。
そして、空が見たことが無いほど青い。
それだけ空に近い。
 
8月なのに、肌寒いくらいの風に吹かれ、宿に向かう。
早速街へ出ようとすると、宿のスタッフに止められた。
 
「高地に馴れるために、まずは軽く昼寝をするの。窓を開けて、しばらくゆっくり休むのよ」
 
窓を開けていると、優しい風が入ってくる。
遠くに見える、6,000メートル級の山を眺めながら、富士山よりもはるかに高くから流れてくる風を感じると、とても贅沢をしている気分になる。
 
食事も優しい。
チベット文化圏での主食は、沖縄のソーキそばを思わせる、白い麺だ。
細いのをトゥクパ、きしめんみたいに太いのを、タントゥックと呼ぶ。
インドのカレーみたいに胃に厳しくない。
特にタントゥックはきしめんと変わらない。
そして日本のギョウザとあまり変わらない「モモ」を一緒に食べる。
チベット風の味を感じながら、胃に優しく、満腹になることができる。
 
食事も良いし、治安も良い。
白いチベット寺院のたたずまいは、魅力がいっぱいだ。
 
しかし何よりも、ラダックの魅力はその景観だと思う。
名も知らない、日本では想像もできない高さの山々に囲まれている。
そして空は青い。
 
私「天空の湖」と呼ばれる、ラダック随一の見どころを訪れた。
車で半日の道のりだ。
インド映画の名作「きっと、うまくいく」のラストシーンの舞台にもなった、「バンゴン湖」という巨大な湖を目指し、最奥の村でホームステイをする。
 
バンゴン湖に辿り着いた時ももちろん感動したけれども、
その途中で出会った、羊飼いと羊たちの光景が、目に焼き付いて離れなかった。
 
ラダックの一部が「月世界」と呼ばれている通り、街を抜けると月を思わせる荒涼とした土地に出る。
遠くに見える岩山には、グレーの地表の中に、頼りなさげな道路が走っている。
どこからか、湧水が流れてきて、小さな川になっている。
 
「ヒマラヤの湧水ですかね」
 
同行した人が、そうつぶやいた。
それを考えると、とても贅沢な水に思えた。
 
道はどんどん狭くなっていて、すれ違えないほどになってくる。
右側には山がそびえていて、左側は崖になっている。
少しハンドル操作を間違えれば、崖下に真っ逆さま。
実際に、トラックがひしゃげていた。
 
月みたいな景色を見ながら、クネクネとした峠道を上っていくと、突然、広い草原に出た。
 
広い草原。
四方は相変わらず、ゴロゴロとした岩山の先っぽに囲まれていた。
そして空は青い。
草原ではたくさんの羊が放し飼いにされていて、羊飼いのおばあさんが見守っている。
 
その景色を見て、なぜか感動した。
なぜだろうと考えるうちに、自分が「道なき道を、好きなだけ歩きたい」という思いがあったことに気が付いた。
 
普段私たちは、人の手で加工がなされた道路を歩いている。
道を外れて、好き勝手に歩いていこうとしても、人工物に阻まれるだけだ。
それが、映画や何かのテレビをみて、阻むものが無い中で、どこまでも広がる自然の中で、思う存分歩き回りたい、という思いがあった。
 
ここは、そんな思いを叶えてくれる場所だった。
草原はやがてゴツゴツと岩場になり、山となってどこまでも続いていく。
余計な人工物は何もない。
周囲の山は険しいが、どこか「守られている」と感じることができる。
なんだか小さな自分に「小さいことは気にするなよ」とでも言われている気分だった。
 
その後見た景色、自称「世界で2番目に高い峠道」や湖、村で見た星空など、どれも素晴らしい景色だった。
でも何よりも、道中で見た草原と山々が、何よりも忘れられない景色になった。
 
あなたがラダックを旅行したら、色々な景色に出会えるだろう。
 
珍しいチベットのお寺、ヤクやマーモットなどの小動物。
そして道中で見た自然の中に、忘れられない景色を見つけることができると思う。
ニューデリーから1時間。
日本から、最小で乗り継ぎ1回。
 
これで、月の景色に会いに行ける。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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