メディアグランプリ

日々の散歩が新しい産業になるかもしれない話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小島由佳子(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
みなさんはいま、日々の気晴らしに何をされているだろうか。
もちろん家にいることも大事だが、身体を動かす機会が減ってしまったことから、普段はしていなかった散歩をルーティンとして取り入れはじめた方も多いのではないだろうか。
 
いつもは歩きでは行かない距離のところまで足を伸ばしてみたり、いままで入ったことのない路地に入ってみたり、いままで知らなかったお店や公園を見つけたり、このお店テイクアウトを始めたんだな、って気付いたり……。
 
実際に私も、いままで足を運んだことのなかった、二つ先、三つ先の駅まで歩いてみたところ、最近オープンしたというおしゃれなカフェを見つけて、久しぶりに思いがけず本格的なコーヒーにありつくことができ、大変嬉しい気持ちになった。
私の友人も、家の近くにワインショップを4軒も見つけて、それらのお店でワインを購入して自宅で嗜むことを日々楽しみにしているという。
 
身体を動かす、という異なる目的で始めたかもしれない散歩も、そこから派生して、このように「街を知る」ことに少しずつ意味合いが自然と発展してくれている気がする。
 
そして今までは自分の住む「街」としてとらえていたものを、よりミクロな「路地」などの単位で捉えるように、感覚が変容しているような気がするのである。
 
もちろん不便な生活を強いられている感覚もないわけではないが、身近な自分の足元に目を向けてみるのも、いままで忘れていた大切なことかもしれない、と気づかせてくれる。
 
さてそんなミクロな視点で街を捉えることがいま、観光業界では「マイクロツーリズム」という言葉で表現され始めている。
 
星野リゾート代表の星野佳路氏が提唱している言葉で、「自分の家から10分、15分、30分、1時間の範囲の観光」のことを指しているという。
 
ツーリズム=観光、という言葉を聞くと、自分の日々の生活とは無縁に聞こえるかもしれない。
しかし先に話したように、例えば歩いて15〜30分圏内(もちろん自転車でも車でもよい)の街のことをミクロにわかるようになってきた、ということは、このマイクロツーリズムの範囲とちょうどおなじ規模の考え方だと言えるのではないだろうか。
 
星野氏は、観光業の今後の方向として「ローカル→大都市圏→インバウンド」の順番で需要が戻っていくだろう、とインタビューに答えている。
 
またアメリカの旅行情報を専門とするWEBメディア「Skift」においても、「今後、数ヶ月〜数年の間に戻ってくるであろう最初の旅行形態は、国内旅行やローカル旅行であるというのが一般的な予想である」、としている(「The Winners & Losers of a Staycation World Ahead」記事より)。
このことからも、この傾向は日本だけではなく世界的な旅行業界に通じる見解といってもいいだろう。
 
この流れの中で、ローカルに特化した「マイクロツーリズム」に注力していくというのは事業者として当然の流れと言えそうだ。
 
そして星野氏はこの「マイクロツーリズム」にはさまざまなメリットがあるとしながら、特に「地域の方にもう一度その地域の魅力を再発見していただくことに繋がる」と言っている。
さらに、「日本の観光が復活するときには、地域の人たちが地域の魅力を知っていることが世界に対して日本の観光の強さをアピールできる大きな力になる」だろうとも。
 
つまり、私たちが日々している「散歩」のような視点の延長線上で、ツーリズムが成り立つ、成り立っていくだろう、ということなのである。
 
もちろん、今までもそれぞれの地域でローカルを楽しむ旅というのは充分に広がってきていたが、その単位がさらにミクロになり、数が増え、そして加速して広がっていくのではないだろうか。
 
日々地元で目にしているものが果たして「魅力」であるかどうかの判断はしにくいかもしれないが、やはり地元の人がおすすめするものは継続的にみて判断しているという点でも確度が高いと言えるだろう。
 
そう考えると、私たちの散歩も単なる消費ではなく、未来の産業をつくるひとつの「コンテンツ」なのである。
それを集積させていけば、日本の観光の強さをアピールできるツーリズムの潮流に発展していく可能性を持っているということになる。
 
というわけで、日々の散歩においても、そんな目線を持ってみなさんが自分の住む街やよく知っている街についてさらに探索を重ね、ためしに周りの友人にその体験や情報をシェアしてみてはどうだろうか。
 
「あなたの住む街に行ってみたい!」とみんなが言ってくれて、実際に訪れてくれたなら、日々の散歩にもさらに精が出るかもしれない。
そして街の持つコンテンツや情報は集積され豊かになり、あなたの住む街の明るい未来につながっていくだろう。
そんな魅力が日本中にあふれ、みんながミクロな街を楽しめる未来を楽しみにしたい。
 
 
 
 
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2020-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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