メディアグランプリ

みんな違って、みんな良い。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平間 稔啓(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「へぇ~、万年筆ですか……。これはまた珍しいですね……」
 
感心してくれているようで、やっぱりちょっとネガティブリアクションだよな……。
 
「なんですか? それ?」
「万年筆です」
「まんねんひつ? ペン、ですか?」
「えぇ、まぁ……。水性ボールペンのような、ちょっと古いペンだと思ってください」
 
また万年筆を知らない世代に出会ってしまった……。今の説明で解ってくれたかな……。
 
私は、打ち合わせの際のメモに万年筆を用いている。
デジタルデバイス全盛の時代にあって、敢えて、万年筆。
初めて万年筆を手に入れたのは、社会人1年目。
初任給で買った。1万円ちょっとだったかと思う。
それから25年近く、万年筆を愛用している。
 
「なぜこの時代に万年筆なんですか?」
この質問には、いつも困ってしまう。本音で答えるべきか。建前でごまかすか。
実は万年筆はとても書きやすい、筆圧をかけずにスラスラ書けてしまう。
「ジェットストリームとかも良いんですが、やっぱり万年筆が性に合うと言うか……」
文具業界で爆発的なヒットを記録したジェットストリームは、これまでのボールペンの常識を覆すほどの書きやすさ、スラスラ書けるボールペン。
多くの人はジェットストリームのことは知っているので、万年筆がどれだけ書きやすいアイテムなのか、理解はしてくれる。
でも、本当の理由、本音は、”人と同じものが嫌だから”というもの。
 
小学校の頃、スポーツと言えば野球だった。
多くの同級生は、お気に入りのチームの野球帽をかぶり、4年生にもなれば、こぞって少年野球チームに入部していた。
誕生日かクリスマスのプレゼントは、みんな”新しいグローブ”だった。
でも、僕は少年野球チームには入部しなかった。
親友にも誘われたけど、断った。親友とは遊ぶ時間が減ったけれど、それでもよかった。
”なんで野球をしないといけないの?”
みんながお気に入りの野球帽をかぶり、業間休みすら野球をしているのを見て、いつもそう思っていた。
「あんたは野球やらないの?」
母親にそう言われても、入部しなかった。
 
自分がどういう人間なのか人はなかなか理解できないと言うが、子供の頃から”みんなと同じは嫌”という性格だったことはわかる。これはわかる。
結局小学校では、なんとなくのきまぐれで卓球クラブに入部し、卒業とともに辞めた。
中学校ではバレーボール、高校では陸上。
どれも”人気のある部活はヤダな”という理由。それに、本気で練習しないこと。
 
”人と同じものが嫌”、というのは幼い頃に芽生えた感情だと思う。
「ねぇねぇ、昨日のテレビ見た? ×××、面白かったよね~」
人気アニメの放送の翌日に、みんなでワイワイ盛り上がる会話に入れなかった。
ウチでは、どんなTV番組を見るのか、その決定権は父にあった。
中小企業のオーナー社長、厳格な父。
他の家庭とは家でのルールが随分違った。もちろんアニメを見せてはもらえなかった。
 
「ねぇねぇ知ってる? ××って△△なんだってよ」
「あ、知ってる知ってる。昨日テレビでやってた奴だ。俺も見たよ」
中学になっても、そういう会話には入っていけなかった。
 
小学校の頃は会話に入れない寂しさもあったが、中学になってからは開き直るようになり、だんだん”人と同じものが嫌”という感覚になっていったのだと思う。
要は、”同調圧力”みたいなものが嫌なんだと思う。
だから、流行にも疎いし、”みんなが持ってるから”という理由でモノを買うこともない。
 
社会人になり、会議や打ち合わせに万年筆でメモをしている僕のことを、先輩や同僚、そして上司までもが『ミスターマニアック』と呼ぶようになった。
気持ち揶揄しているようでもあったが、少しも嫌な気持ちがしなかった。
『ミスターマニアック』
この”ミスター”という表現には、”こだわっている人”という意味があるんだよ、と先輩たちは教えてくれた。そんな気持ちで呼んでいたから、いやな気持ちがしなかったのかも。
社会に出れば、いろんな考えの人がいる。
社会には、いろんな境遇の人がいる。
違いがあることが当たり前で、その違いを受け止めることができるのが大人であり、社会人なのだ、と先輩たちは教えてくれた。
自分の努力で自分の境遇を変えることができる人には、どんどん応援しろ。
自分の努力で自分の境遇を変えることができない人には、寄り添ってやれ。
僕が入社した会社は、“年中無休24時間営業が当たり前”と呼ばれるほどハードな環境で知られるコンサルティングファームだった(ちなみにその会社の尊厳のために言っておくと、今は働き方改革も奏功し、働きやすい会社になっている)。経営戦略や事業戦略に必要なスキルを”これでもか”と叩き込まれたが、スキル以上に学ぶことが多かった。
 
『みんな違って、みんな良い』
 
僕がこう思えるようになったのは周りの人達のおかげ。
だから今は、”こう考えてもいいかも”という人が増えればいいな、と。
できることを、できる限りにおいて実践するようにしている。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

★10月末まで10%OFF!【2022年12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《土曜コース》」


 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

天狼院書店「プレイアトレ土浦店」 〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2020-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事