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家庭内ビジネスの失敗「空腹じゃないと焼きそばは売れない」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森北 博子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「お昼ごはん、作っておいたから食べてね」
部屋にこもってゲームをしていた次女に声をかけた。
 
「お昼、何?」
顔を挙げて次女が聞いた。
 
「焼きそば」
と答えると
 
「うーん……、お腹、空いてない」
そう言って、次女は再びゲームに目をやった。
 
またか……。
予想通りの反応に、私は納得半分、落胆半分だった。
 
実はさっきも長女に
「あんまりお腹、空いてない」
と言われたばかりだった。
 
こうして家族4人分の焼きそばは、大半を私が残飯処理することになる。いつものことだ。今日の昼、晩御飯、そして明日の朝も、焼きそば決定。外出自粛期間がはじまってからずっとこんな調子だから、私はすっかり丸々と肥えてしまった。娘たちが揃いも揃って「お腹、空いてない」と言うのも仕方ないとは思う。ずっと家に居て、運動していないのだから……。
 
娘たちの空腹が極限まで達した場合、ぶっちゃけ何を作っても、たいがいは食べてくれる。
でも「なんか、お腹空いたな」程度のときには選り好みをする。
 
「チャーハンが食べたい」「冷やし中華が食べたい」などと思っているときに、焼きそばを作ってやっても「なんだ、焼きそばか」といった鈍い反応が返ってくる。そりゃそうだ、すっかりクチは、チャーハンや、冷やし中華の味になっているのだから。
 
だからと言って「何が食べたい?」と聞くのもキケンだ。
 
「ラーメンが食べたい!」とリクエストされても、ラーメンの買い置きが無ければ作ることはできない。今から買いに行くには、スッピンに化粧を施して、ボサボサの髪を整えて、部屋着から外に出られる服に着替えて……、と「武装準備」しなければいけないことがたくさんある。考えただけでもウンザリだ。
 
しかし、「いま作れるのは、焼きそばか、チャーハン」と選択肢を絞ると、「焼きそば!」と、どちらか一方を選んでもらえる。さらに「どれぐらいお腹、空いてる?」と聞くとバッチリだ。作る量の調整ができるから、残飯処理に三食費やすことも無くなる。
 
私は一人ダイニングに座って、皿によそった焼きそばを箸でつついた。ソースの良い香りが嗅覚を刺激する。なんとなくお腹が空いてきたような、そうでもないような……。こんなふうに毎食ずっと、惰性で食べている感じだった。
 
「そうか!」
ふと箸を口に運んだとき、ある考えが浮かんだ。
 
「お腹が空いていない人には、何を作っても食べてもらえないんだ!」
 
何を当たり前のことを、と思うかもしれない。
しかしこの「焼きそば問題」は、私が最近勉強している「マーケティング」に置き換えられる気がしたのだ。
 
私は自宅で、個人事業主の女性向けにパソコン教室を運営している。
集客ツールは主に、SNSとブログの発信だ。
 
せっかく作った焼きそばが、「要らない」と娘たちに断られた理由は、商売の基本を無視した結果ではないか、と思った。
 
欲しくない人に売ろうとしたって、売れるわけがない。
 
欲しい人に売るから売れる。
欲しい分だけ作れば、ムダが無い。
一番効率の良い商売の仕方だ。
 
しかし、欲しくなかった人にも、欲しいタイミングが来ることがある。
そのときに商品を提示できれば、当然、売れる。
 
では、欲しいという人をどうやって探せばいいのか?
そして、欲しいタイミングで売るには、どう時期を見計らえばよいのだろう?
 
そこで必要になってくるのが「リスト作り」だ。
 
例えば、SNSで言えばフォロワー、ブログで言えば読者ということになる。日々の投稿で、商品に興味がありそうな人たちを集めてリスト化する。そこからファンになってくれた人たちを、公式LINEアカウントやメールマガジンに誘導していく。さらに、一度でも購入してくれたお客様を、顧客名簿化する。そのうち、二度三度とリピート購入してくれたお客様は、お得意様リストに入れていく。
 
このリスト化を行っておけば、「欲しい」のレベルに応じて発信する情報を変えていけばいい。継続した情報提供により、読者をファンに育てていくことも可能だ。たまたま相手の「欲しいタイミング」に合うと購入してもらえるようになる。
 
誰でもお腹は空く。
けれど私が、焼きそばとチャーハンと冷やし中華しか作れないのであれば、それが欲しい人を集めておく必要がある。(……実際は、ほかにも作れるが)
 
「今日のお昼は焼きそばです。欲しい方はどうぞ」と情報を流せば、「焼きそばが食べたい空腹の人」を喜ばせることができる。それ以外のチャーハン組や、冷やし中華組には待ってもらうことになるが、次に期待していただくように工夫する。
 
さらにそこから「私が作る味が好きな人」に絞っていけば、何を作っても食べてもらえる可能性が高まる。空腹で、焼きそばが好きで、私の味が好きな人。それが、私に絶大な信頼を寄せてくれるお得意様だ。
 
……と、ここまで書いてみて、ある重大な事実に気が付いた。
 
たまたま今日の焼きそばは、娘たちの欲しいタイミングに合っていなかったことはわかった。でも「お得意様」であれば、私が作れば何でも食べてくれるはずじゃなかったのか?
 
うーん……。
 
焼きそばは、まだ大量にフライパンの中にある。
まずは、残飯処理してから考えることにするか。
 
家庭内ビジネスは、意外に難しい。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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