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これから入院してもらいます

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:有野哲章 (ライティング・ゼミ 通信限定コース)
 
 
「これから入院してもらいます」と、突然、医者に言われびっくりした。
 
少し前から倦怠感と微熱があり、両親に付き添われていった救急の外来。夜だったのでどのくらい待ったのか分からないが、照明が数カ所しかついてなくて、薄暗い雰囲気だった。
 
風邪ひいたのかなと、軽い気持ちで考えていた。早く家に帰ってお笑い番組みたいな、
宿題まだ終わってないのにどうしよう、などこれから起きることを知らずに、ぼんやりしていた。
 
私が診察を受け、血液検査をされ、その後両親と先生が長い時間話していたのを覚えている。座っているのも怠かったので、長椅子に横になりうつらうつらしていた。
 
以前に、姉もこの病院の救急外来を受診していた。
それは、ポテトチップスの破片が目に入ったからだ。
ポテトチップスは、兄弟3人で取り合いになるほどの好物だった。袋からなくなるころ、最後にのこったポテトチップスの破片を誰が食べるかいつも喧嘩になり、その時はジャンケンで姉が勝ったのでその権利を得た。
 
顔を上に向けて、ポテトチップスの袋で顔を覆い、ポテトチップスの破片を滑り台の要領で口の中に流し込む。綺麗に空になった袋をみると、何とも言えない満足感を得るのが最後の特権だった。
 
いつものように最後の儀式をしている時に、突然姉が「痛い」と言って目を覆った。
「何が起きた?」と驚いていたら、みるみる姉の目が腫れていた。試合が終わったプロボクサーのような顔になり、驚いて病院を受診していた。
ポテトチップスの破片が目に入り、姉の目は腫れあがってしまった。幼心に、ポテトチップスに恐怖を感じた。
 
待合室で横になりながら、「あの時の姉ちゃん、アホだったよな」と思い出し笑いをしていた。
 
どのくらい時間が経過したか分からなかったが、先生に診察室に呼び出され、両親も同席するなかで、先生に言われたのが、
「これから、すぐに入院してもらいますよ」だった。
私は一体何の病気? とびっくり。後ろでなぜか母親がシクシク泣いていた。
何なにこのシーンは、よっぽど悪い病気なのか?と驚いていたら、先生から、「B型肝炎です」と病名を聞かされた。
「え、肝炎って、お酒飲む人がなる病気じゃない?俺未成年ですよ。」と、頭のなかが混乱しながら病室に行き、病衣に着替えその日は終わった。
 
その後の説明で、私がB型肝炎になったのは、母子感染が原因と聞かされた。
同居していた祖母が、戦後病院の手伝いの仕事をしていた。衛生環境もきちんとしてなかった時代なので、注射針の交換なども、素手で行っていた。祖母も知らないうちに肝炎に感染していたらしい。そして血液で感染する病気なので、何かのきっかけで同居していた母にもうつったらしい。
 
私が感染したことで、母は「ごめんね」と泣きながら話した。
私は責めることできない。私のためにたくさん苦労して育ててくれた母だから。でも「なんで、俺ばっかりが」と悔しい気持ちになった。
 
母が入院したころは、病棟の廊下の色も違い、食器の色も違っていたそうだ。まだB型肝炎の発症の原因が分からない時代だったので、何だか汚らわしいものを見るような目で見られていたと。そんな母から言われたのは、「この病気になったことは、誰にも言ってはいけないよ」だった。
 
病気になりたくてなった人はいない。でも、それをすぐに受け入れられるのに時間がかかった。半年ほどの入院治療だった。体はどこも痛くないし、朝夕の2回点滴を受けて、一日中横になっているだけだった。
 
同じ部屋の患者さんたちは、自分より年上の人ばかり。話相手は、夕方顔を見せてくれる家族だけだった。体のなかで起きていることよりも、退屈な時間が続いていることが苦痛だった。
復学した時には大学受験も迫っていたが、全く勉強に身が入らなかった。自分の頭が馬鹿なのに、病気のせいにしていた。病気を受入れることはできなかった。なかば投げやり状態に。でも自分が自暴自棄になることで、母を責めているような気持になり、この嫌な気持ちを誰にぶつけていいのか……。苦しかった。
 
病気や事故、本当にいつなるのか分からない。新型コロナウィルスだって、いつ自分がなるのか分からない。自分がいくら気を付けていても、病気や事故は突然やってくる。ポテトチップス食べていてケガすることもある。
自分の力でなんとかできることと、自分の力でなんともできないことがある。
自分にはコントロールできないこと。自分には受け入れられないこと。
抗ってもしょうがない。
 
ちょっと待って……。
 
今振り返ってこうして書いていて気が付いたが、B型肝炎になって自分が不利益になったことって何だろうと考えてみた。肝臓を壊したことはデメリットであったが、その他デメリットの要因が思いつかない。
仕事をし、結婚し、子育てし普通の生活が過ごせている。
 
今の自分にとって、あの時の経験は良き財産になっている。それは今福祉の仕事をしていて役にたっていると考えるからだ。病気になることで、悩み苦しむ経験の人たちに少しだけ寄り添える経験ができたから。
書いたことで、少しだけ解放された自分が生まれた。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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