メディアグランプリ

美容の沼のほとりから


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記事:スガイユカ(ライティング・ゼミ通信コース)
 
 
保存容器の中の残り少なくなったクリーム。果たしてあと何日持つだろう。
 
洗顔後の顔にうすく伸ばしながらそんなことを考えた。大切に使っているこのクリームは、渋谷にある美容クリニックの院長特製クリームだ。
 
クリームを買いに行きたいのだが、新型ウィルスによる自粛生活下において、美容クリームの購入は不要不急の外出に分類されるだろう。でも買いに行きたい欲求は募るばかりだ。

それほどまでに信奉しているクリームと出会ったのは、やけどがきっかけだった。
 
ある晩、私はやかんの湯気で左手の薬指をやけどした。すぐに治るだろうと甘くみていたら、傷みはどんどん強くなった。翌朝出勤したものの、傷みは増すばかり。これでは仕事にならないと、職場から通える皮膚科を探した。すると、職場の隣のビルに美容クリニックを見つけた。診療科に「皮膚科」の文字。
 
美容クリニック……。通っている人からすれば、なんてことない場所かもしれない。でも、今まで縁遠く生きてきたので、なんとなく怯んでしまう。美の追求目的ではないが、診てもらえるのだろうか。恐る恐る電話をしてみると、「今すぐなら診れますが、来れますか?」とのこと。
 
私はクリニックへ急いだ。白を基調とした院内は、THE清潔といった印象で、適度な湿度とハーブの香りが充満していた。ここにいるだけで美的ポイントがワンランクアップした気分になれる。
 
生まれてはじめての美容クリニックにソワソワしつつ、待合室の大型モニターを眺めていると、シミ、シワ、ほくろ、アンチエイジングの治療について、次々に紹介映像が流れている。
 
世の中には、平日の昼間にこんなところに通っている人もいるんだな。一度足を踏み入れたら沼にハマりそう。そんなことを思いながら、診察室に呼ばれるのを待った。
 
院長に診察してもらうと、少し深い火傷になっているそうで、完治までは1ヶ月ぐらいはかかるだろう。と言われ、2週間分の薬が処方された。
 
診察が終わり会計を待つ間、待合室でまたモニターを眺めていた。すると、「院長特製オリジナル商品」の案内が始まった。
 
そこには、先ほど診察室で私の指にも塗られた、クリームの写真が映し出された。クリームの他にはローションもあるらしい。
美容クリニックってすごいところだな。院長特製オリジナル商品なんて販売しているのか。知る人ぞ知るアイテムといったところだろうか。そんなことを考えながらクリニックを後にした。
 
それから私はやけどのケアに専念し、2週間後もう一度傷跡を見せにクリニックを訪れた。
 
よくよく見てみると、このクリニックのスタッフさんたちは、全員肌がキレイだ。色が白いし、キメが細かい。待合室にいるマダムたちもきれいな肌をしている。
 
やはり、「院長特製オリジナル商品」を使っているのだろうか。もはや、やけどよりもそちらが気になって仕方がない。実際、2週間あのクリームを使ってみたが、伸びもよく保湿効果もあり、たしかに使いやすいクリームだった。指に塗ってあの使用感、顔に使ったらさぞ良いだろう。
 
診察室に呼ばれ、火傷痕を見せると、院長は「キレイに治ったねー。あとは色素沈着しないようにしていきましょう。いやー、前回なに処方したんだっけ? あー。やっぱり。いい薬処方してるなーオレ」と、カルテを見返して、自分の処方を自画自賛していた。
 
院長の自己肯定に圧倒されつつ、「他になにかある?」と聞かれたので、「あのクリーム、良かったです」と伝えてみた。
 
すると「あぁ、あれね。あれいいでしょ! 評判良いんだよ。全身に使ってる人もいるんだよ。あれはほんと自信作! 受付で購入できるから、いつでもどうぞ!」そう言われた。
 
やはり知る人ぞ知るクリーム。私は受付に置いてあった「院長特製オリジナル商品」の案内を見つめた。これは沼の入り口かもしれない。でも、美容クリニックなんてもう来る機会もないだろう……。
 
買うなら今だ。会計時「クリームも買いたいのですが……」気づいたときには注文していた。
 
実際毎日使ってみると、使えば使うほど肌の調子が良くなっている気がした。若干の自己暗示があるかもしれないが、すっかり院長特製クリームにハマった私は、再び美容クリニックを訪れ、ビタミンC入りローションも購入し、今や立派なリピーターだ。
 
そのクリームがもうすぐ無くなりそうなのだ。しばらくは買いに行けそうにないので、試しに、以前使っていた市販のクリームを使ってみた。するとどうだろう。ベタつきが気になって仕方がない。他のものと比べて、改めて院長特製クリームの良さを実感した。

やっぱり院長特製クリームがいい!
このコロナ禍の中、どうにか購入することができないか。クリニックに連絡してみると、外出自粛対策として、「院長特製オリジナル商品」の通信販売を始めていた。なんと素敵な対応だろう。ということで、さっそくクリームとローションを注文したのは言うまでもない。
 
思わぬ怪我がきっかけで、新たな扉が開くとは思いもしなかった。
次回注文するときはヒアルロン酸入りローションもいいかもしれない。思い切ってプラセンタに手を出してみようか。私は今、沼のほとりで、首を長くしてクリームの到着を待っている。
 
 
 
 
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2020-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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