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優しいツッコミ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平良みか(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なんでやねん!」
 
ツッコミの一挙一投足で、観客がどっと沸く。
 
私はお笑いが大好きだ。
昨年末のM1グランプリでは、グランプリの「ミルクボーイ」の他に「ぺこぱ」というコンビが注目を集めた。松陰寺さんの、すべてを肯定するツッコまないツッコミが人気の理由だ。松陰寺さんのツッコミはすべてを受け入れる。誰も傷つけない優しさがある。
 
「ぺこぱ」の漫才を見ながら、昔のある出来事を思い出した。
 
以前の職場で、同僚が盛大に遅刻してきたことがある。
 
そこは、名ばかりのフレックス制の会社だった。7時台から仕事をする人もいるほど朝の早い会社で、8時を過ぎるとメンバーはほぼ揃い、9時には全員がバリバリ働いている。それが日常だった。部署が人事部だったこともあり「メンバーは社員の模範となるように」というような部の方針もあった。
 
「遅れてすみません……」
10時過ぎに、消えそうな声で同僚が入ってきた。場の空気は硬い。その同僚が異動してきてまだ数日だったこともある。だれも何も声をかけない。何か声をかけてあげればよかったのに、空気が重すぎて言葉を発することができなかった。
彼にとってはいっそ、上司がカミナリを落としてくれたほうが楽だっただろう。幸か不幸か、部長は外出して留守だった。
 
今思えば、打ち合わせがあったわけでもないし、お客様が待っているわけでもない。雇用契約はフレックスなのだから、1時間遅く来たなら1時間遅く帰ればいいだけだと思うけれど、当時はどうしてそう思えなかったのだろうか。
 
「なんで遅刻したん。寝坊か?」
 
ぽつりと、彼に問う声があった。関西出身の先輩だった。
遅刻した彼は、表情を硬くしたまま
「はい、そうです。すみません……」
とまた消えそうな声で答えた。
先輩は、そうか、と言って、彼を別室に連れていき、程なくして戻ってきた。
おそらく、形ばかりのお説教をした体にしておき、気にするな、というようなことを言ったのだと思う。
戻ってきた彼の顔色はだいぶ回復し、もう一度部署全体に向かって「すいませんでした!」と頭を下げ、通常業務に就いた。部署の中には、どこかほっとした空気が流れていた。
 
「寝坊か?」という先輩の問いは、彼にとっては救いだったはずだ。言葉だけ取れば遅刻を問いただす言葉ではあるが、本質は彼を救う「優しいツッコミ」だ。
 
その先輩は、いつもむすっとしていた。先輩の同僚とたまに冗談を言って笑うことはあったけれど、真顔がむすっとした顔だったのだろう。あまり笑顔を見た記憶はない。(私が不出来な後輩だったせいかもしれない)
 
でも、いつも優しかった。困っているときは、相談すれば文句を言いながらも必ず助けてくれたし、相談すら出来ないときには見かねて手助けしてくれた。別の先輩に叱られてへこんでいるときに、さりげなくコーヒーをおごって慰めてくれたこともあった。(ドラマのワンシーンのようだが、実際にそういうこともあるのだ)
 
「優しさとは行動である」。先輩から学んだことだ。笑顔や、気づかいの言葉も大切だ。でもそれよりも、相手の気持ちを想像し、相手の状況を把握して手を差し伸べる行動こそが人を救うのだと思う。
 
数年前に転職をした。今の職場は正真正銘のフレックス制で、有給休暇も好きに使えるため、10時に来ようが13時に来ようが平日休もうが、仕事に支障さえ来たさなければ自由だ。
だから、先輩や後輩に「寝坊?」と聞く機会もなければ必要もない。けれど、関西弁のむすっと先輩に学んだことを活かし、優しいツッコミを心がけている。
 
職場の非効率なルールがあれば「それって必要ですか?」と上司にツッコむ。逆に他社と比較して遅れていることは「あれはやった方が良いと思うんですけど」とこれまた上司にツッコむ。これは、今の状況を把握したうえで会社にツッコむという私なりの優しさである。(影でグチを言うよりも100倍建設的だと思っている。でも、聞いてくれる上司もえらいと思う)
 
最近の成果としては、自社のWebサイトを本格的に改善することになった。「今のWebサイトってぶっちゃけいまいちじゃないですか」とツッコんでみたら、上司は「よし、改善しよう」と言ってくれた。その仕事がそのまま私に降ってきたのは上司の優しさだろうか。私がまさかその仕事をやりたいと思ったのだろうか。きっとそうなのだろう。私は、ぺこぱの松陰寺さんに習ってそのまま受け入れた。仕事は火の車である。
 
ここまでで分かったことは「優しいツッコミは世界を救う」ということだ。関西弁のむすっと先輩のように、こう着した状況を打破するツッコミも、ぺこぱの松陰寺さんのように相手のすべてを受け入れるツッコミも、共に過ごす相手の心を軽くする。
 
ツッコミにより、相手は笑顔になり、周りの人も笑顔にする。こんなに素晴らしいことがあるだろうか。
 
私は今日も、優しいツッコミを忘れない。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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