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ネズミの国の物語が吐く綺麗ごとに、私は思わず涙する

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大森瑞希(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
昔々あるところに、とても夢見がちな女の子がいました。
女の子は、歩いている時やお菓子を食べている時、洋服を着替える時、
一人の時間にはいつも空想にふけっていました。
テーブルの上の急須を擦ると、出てくる魔人。
夜、眠りについた途端に、部屋中のおもちゃたちは一斉に動き出して、ひそひそ声で話し始める。
お気に入りのワンピースと自転車に呪文を唱えたら、輝くドレスとかぼちゃの馬車になる。
目の前のリンゴが実は毒リンゴだったら、どんな味がするのかな。
きっと、今まで食べたリンゴの中で一番甘くて美味しいに違いない。
それはとても楽しい空想でした。
その少女は、何を隠そう私でした。
 
幼い頃、日常のありとあらゆる空想の源はディズニーだった。
それくらい大好きだった。
母親から当時の話を聞くと、私はまだ、ろくに言葉も話せない時期から、ディスニーのビデオをテレビ画面にかじりつくように見ていたそうだ。
今思うと、ディズニーの繰り出す魔法とファンタジーの世界に魅せられていたのだと思う。
たとえ召使の女の子でも、魔法使いの杖一振りで、たちまちお姫様に変身し、舞踏会に行ける。
私が落としたこの靴を、だれかが拾ってくれたらいいのに。
それがたとえ、履きつぶしたスニーカーであっても、私は想像することを辞められなかった。
たとえ結末が分かっていても、ビデオのテープが擦り切れるまで観た。
そして大人になった今も、突然、無性に観たい衝動に駆られる時が多々あり、アマゾンビデオで課金する。
もう25歳なので空想はしない。
しかし、25歳なのにディズニーを見て号泣するときがある。
 
「ディズニーなんて子供が観るモノでしょ?」
確かにそうかもしれない。私が観ているのは、近日公開される続編や実写版だけではない。
まだCGの技術すらなかった時代のディズニー王道作品が大好きだ。
どうして話を全て知っているのに、こんなに何度も感動するのだろう。
なぜ次のセリフが分かっているのに、同じシーンで涙するのだろう。
 
「ディズニーは子供が観るモノ」と言う人の中には、現実を生きる大人たちにとって、ファンタジーやロマンスはクサく、子供だましだと考える人が多いのではないだろうか。
たしかに、ディズニーに限らず、ベタベタなメロドラマや恋愛小説を観たり読んだりすると寒いと感じる時がある。
甘いお菓子も食べ続けると、途中で気持ち悪くなり、胃が受け付けなくなるのと同じで、観た後に消化不良を起こす。
現実にはそんな出来た話はないと、誰もが知っているから。
綺麗ごとばかりでは生きていけないと、みんなが思っているから。
本当にそのとおりである。
そして、まさにディズニーはそのクサさの典型である。
信じれば願いは叶うと希望を持つシンデレラ。
けれど、私たちは、現実世界でどれだけ強く願おうと、思い通りにいかないことのほうが多いこと知っている。
自由になることを夢見るランプの精ジーニー。
しかし、私たちは世の中に、実は自由が少ないことを知っている。
野獣を好きになるベル。
だけれど、大人になった私たちは、容姿の優れた人が人生で何かと得をすることを知っているし、自分の好きな容姿ではない人を心から愛することは、難しいと思ってしまう。
ディズニーは大人からすると、単純と思えるくらい出来すぎている勧善懲悪な世界だ。
なぜ、ここまでリアリティの無い世界に、私の涙腺はいとも簡単に壊れるのだろう。
本当に子供だましなのだろうか。
 
きっと本当は違うのだ。
ディスニーが心に刺さる理由。
それは、私が成長の過程で失くした何かを呼び起こしてくれるからだ。
観る者の心の一番枯渇している部分に響くからだ。
夢見がちな少女は、いくら自分が空想をしても、それが現実には決して起こらないことを知った。
そして年を重ね、酸いも甘いも嚙み分ける中で、頑張ることも増えたが、諦めも早くなった。
現実はこうだから。
所詮、自分はこんな人間だから。
理想と現実のギャップが受け入れきれず、全身で泣きわめいていた幼い頃と比べると、良くも悪くも、聞き分けが良くなった。
世界に順応していった私は、生きやすくなった一方で、自分の中にぽっかり空いた穴に気づいていた。
大人の世界では、思い通りにいかないことが多いと分かっていながら、
信じれば願いは叶うよ、と囁いて欲しかったのはきっと自分だった。
野獣なんて、とてもじゃないけれど好きになれないと思っていながら、
容姿ではなく中身を見て、人を愛せるようになりたいと思っている。
愛や正義や自由が、実は儚く脆いことを知りながら、
それらを貫き通すことが、いかに尊いかを痛感している。
所詮は綺麗ごとと思い、今までで避けてきた道に、私たちの渇いている部分が透けて見える。
ディズニーは、この綺麗ごとをたやすく言ってのける。
物語が伝えようとする美しさや正しさが、自分の欠けている部分にゆっくり浸透していくのを感じ、涙が出る。
消化不良より、栄養補給に近い。
綺麗ごととは、みんなが綺麗だと思っているから、綺麗ごとなのだと思う。
 
子供にもわかる、端的で強いメッセージは、弓矢が的をまっすぐ射貫くように私たちの胸に侵入してくる。
そのメッセージは、単純だが、いつの時代でも普遍的に真である。
本当の名作は、大人だけじゃなく子供にも、その良さが理解できるものだ。
それは、子供だましとは一線を画している。
きっと、本当に人を感動させるものは、何かを小難しくこねくり回したものより、
もっとシンプルなものなのかもしれない。
 
シンプルで、潔くて、観る人の心に真っすぐ届き、渇いた部分を潤す。
そう、私はそんな文章を書きたいのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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