メディアグランプリ

ショートカットキーは、人生の戦略


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森真由子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
私は唖然としていた。
なんという速さだろう。
隣に座っていた同僚がものすごいスピードでキーボードを叩き、さくさくと仕事を仕上げていった。それも、ほぼマウスを使うことなくパソコンを操作している。
これほど生産性に差が出てしまうものなのか……。
 
入社4年目、研修という形で、違う部署で3ヶ月ほど勤務する機会をいただいた。
この研修が始まってから、私の切羽詰まった気持ちがちょっと楽になっていた。
元の職場では、上司に心配されるほど、若手の中ではそれなりに残業をしてしまっている方だったからだ。事務職なので、たまに電話をして、それ以外はひたすらメールとファイル作成をパソコンで行っていく。
自分の不器用さに辟易しながら、次から次へと降ってくる仕事をなんとか捌こうと、とにかく必死な毎日を過ごしていた。
いわゆるブラック企業ほどの残業はしていないが、私のキャパシティー上、白目をむき泡を吹いてもおかしくなかった。
だからそういう日々から一旦離れて、違う仕事に携われるのはいい気分転換になると、ちょっとわくわくしていた。
 
研修先で仕事をもらったら、粛々と自分のやるべきことをやっていこうと意気込んでいた。
ゼロスタートだから溜まっている仕事もないし、前みたいにアップアップにはならないだろうと思っていた。
それがどういうわけだか、徐々に余白の時間が減っていく。
元の職場と比べて仕事量が少ないにも関わらず。
まずい、またあの悪循環に陥ってしまう……。
少しずつ焦り出している自分がいた。
 
隣に座っていた同僚が見兼ねて、パソコンの前でうなだれていた私に声を掛けてくれた。
「マウスを何回もクリックしているけど、君は何をしようとしているの?」
PowerPointのスライドに貼った複数の画像を一列に揃えようとしていると説明すると、彼はさっと私のマウスを取った。
彼は2回ほどクリックをし、あっと言う間に画像を整列させてくれた。
へ? こんな整列機能がPowerPointに備わっていたの?
顔を画面に近づけ、マウスを細かく動かして画像の位置を整えていた自分が急に恥ずかしくなった。こんな一瞬で終わることだったのに、無知だったばかりに、あんなに時間を取ってしまっていたなんて……。
 
その後も、定期的に彼からご指導をいただくようになった。
データが多いExcelファイルを扱っている時は、よく列を固定させるという機能を使っていた。
「そんなによく使うならこうすればいいんだよ」
彼は慣れた手つきで、キーボードを叩く。
おー、私は毎回マウスを使って列を固定させるボタンを押しにいっていたが、全部キーボードで済んでしまうのか。
Microsoftは、「Alt」→「W」→「F」→「F」の順に押すだけ。
ピボットテーブルという機能もよくExcelで使っているが、これも「Alt」→「N」→「V」と「Enter」を押せばすぐにできる。
 
キーボードから手を離し、マウスを手に取り、操作をしたらまた手をキーボードに手を戻す。
この3秒ほどの動作がたった1秒のショートカットキーで済んでしまう。
なんというもったいないことをしていたことか……。
 
それまで「Ctrl」+「C」のコピー、「Ctrl」+「V」の貼り付けくらいしかショートカットキーを使っていなかったのが猛烈に悔やまれた。事務職としてこの知識不足は致命的だった。
確かに業務の仕方自体で非効率な部分もあったことは否めないが、そもそも毎日使っている道具を使いこなせていなかった。入社1年目に習得しているべきだったと、今更ながら自分を恥じたが仕事はお構いなしに次から次へとやることが湧いてくる。止まっている場合ではなかった。
まだまだ未熟でも、これくらいの効率化なら覚えてしまえば自分でも使える。
やっとそのことに気付き、ショートカットキー検索熱に拍車がかかった。
 
メールアプリのOutlookでもショートカットキーはたくさん使える。
「Enter」でまずメールを開く。
「Alt」+「L」、全員へ返信する。
速く且つ正確にメッセージをタイピングする。
さらっとチェックして、「Alt」+「S」で送る。
メール1通でも、開く時と送る時に2回はマウスを触っていたのに、それが0回になる。
慣れれば、これで3秒は短縮できる。1日50通送ると150秒、1ヶ月20日勤務で3,000秒。
1ヶ月で50分の短縮。たかが50分、されど50分。これを他の効率化したものと積み上げていければどんどん無駄が省けていく。
 
効率化の技を習得していくと、少しずつだが仕事に変化が現れてきた。
処理速度が上がったことによって、メールも溜まりにくくなり、月々の残業時間も減ってきた。
パソコンのタッチパッドで事足りるようになり、ついにマウスを手放した。
短縮できた時間は、今までなかった文章を書いたり本を読んだりする自由時間になった。
仕事で一杯一杯になっていた私の人生はこれだけで徐々に充実し始めていた。
 
最近家事代行サービスや食洗機などを活用して、家事の負担を減らそうという動きが一般的になってきた。そう、活用できるものはどんどん活用すればいい。
パソコンの機能だって、ちゃんと活用できれば大きな味方になってくれる。
時短や効率化は目的や課題の本質ではないけれど、無駄なことを省くことができれば自分にとって大切なものにもっと時間を費やすことができる。
 
私にとってショートカットキーを駆使することは、いわば人生の戦略。
もし私のようにまだ普段使っている道具を使いこなせていなかった人がいたら、ぜひ調べてフル活用していってほしい。
自分の道具を熟知して、より大きな成果を、そしてその先の豊かさを目指していこう。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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