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情報を削除したら、月給が2万円上がった話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Yuko Tsubai(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
突然だが、わたしは1年ほど前まで「汚部屋」のヌシだった。
 
バラエティや報道特番に出て来るようなタイプの、ゴミが堆く積まれているような部屋ではなかったが、いわゆる「人をすぐに呼べない部屋」の持ち主だった。机の上には積読どころではない量の本が詰まれ、床には段ボールや紙袋がいくつも置いてある。中身は自分でもよくわかっていない。なかなかひどい状態だったと思う。
自室がその状態なら、会社の環境もまあまあ残念だった。外面はいいタイプなので、一見デスク周りは綺麗に整えていた。が、パソコンにログインすれば、画面を覆い尽くすアイコン。頻繁に使うデータは取り出すのが面倒で、デスクトップ上に置きっぱなしだった。
 
物理的な環境が乱雑だと、心理的な環境も荒むらしい。その頃わたしは部署移動したばかりだったのだが、慣れない環境も相まってストレスを溜め込んでいた。限界だと思うとすぐに同僚と飲みに行き、仕事に対しての愚痴を発散させていた記憶がある。
 
「仕事はうまくいかんし、給料は上がらんし。何で損なことばっかり!」
 
それがお決まりの台詞だった。
 
****
 
そんなあるとき、とある言葉に出会った。
仕事をうまく運ばせるために、と思って読んだビジネス書か、コラムの類だった気がする。
 
「仕事を効率よく進める環境を作るには、出来るだけ『情報』を少なくしましょう」
 
こんな感じの言葉だったと思う。
「情報とはなんぞや?」と思いながら読み進めると、要は仕事をする時には集中力を散漫させるものをできるかぎる少なくしようという話だった。
例えば、よく会社のデスクに可愛らしいマスコットや色鮮やかなペンなどを置いている人がいるが、そういった色や形などの「情報」が多いものをパソコンの周りに置いてしまうと、無意識のうちに画面より周りのものに気を取られてしまうことがあると。故に、出来る限りデスク周りはシンプルにしよう、という話だった。
 
これを読んだ時に、心あたりしかなかった。
自室の部屋を片付けようとする時も思い出に浸って掃除が進まないタイプだったのだが、仕事を進める際にも今入力している文章よりも周りに自然と目がいってしまったり、メールの通知(自分がすぐに読まなくてもいい類のもの)に気を取られ、先にそれを読んでしまうなどの経験があった。
 
そう、その時まであまり自覚していなかったのだが、わたしは「気を取られやすい」タイプだったのだ。
 
これを読んだ次の日、早速自分のデスク周りを片付けた。それまでカラフルな付箋や蛍光ペンなどの文房具が大量に置いてあったのだが、それらは全てロッカーへ動かし、ボールペンを数本残すのみにした。
また、パソコンの周辺グッズは特に「色」を気にせず使っていたのだが、マウス、マウスパッド、ペン立てなど全ての周辺グッズをパソコンと合わせた「黒」にした。ハードの「情報」を減らすように徹底したのだ。
 
外側が終わったら次は中身である。
乱雑なデスクトップでは情報が多すぎて、本来やるべきタスクとは別のタスクに気付いてしまい、気もそぞろになる。そこで、デスクトップにはよく使うフォルダのショートカットのみ残し、他は全て共有サーバー上に移動させた。また、ショートカットアイコン自体も減らすべく、出来る限りのアプリケーションはタスクバーに固定させて、そこから起動することにした。メールの通知設定もオフにして、決まった時間に能動的にメールフォルダを見にいくようにした。緊急の場合はチャットか電話が飛んでくるので、メールはそこまで通知を重要としないのだ。
そして、デスクトップの壁紙は、世界の観光地が表示される設定にしていたが、黒無地に変更した。旅行好きな私にとってはもっとも仕事から気を取られるものだからだ。
 
それだけ劇的に環境を変えたので、近くの席の同僚には少し驚かれた。打ち合わせで黒無地のデスクトップをモニターに画面共有した際は「なんか病んでるの?」と聞かれた。余計なお世話だ。
会社を綺麗にすると、自室も綺麗にしたくなる。それから数週間の土日をかけて、休日に自室の整理整頓も進めた。積読もよくわからない書類も全て断捨離して、かなりさっぱりとした部屋になり、花も飾れるようになった。
 
そして、この「情報削除」、目に見えて効果が現れはじめた。
 
まず思考を中断される要素が少なくなったおかげか、業務効率が明らかに改善した。今まで1時間かけて終わらせていたタスクが30〜40分程度で終わるようになったのである。むしろ今まで何をしていたのか……と思うが、とにかく生産性が倍である。
さらに、ちょうどその頃、事業部では大きなサービスリリースがあった。私も途中からプロジェクトに参加したのだが、他のメンバーが1週間かかっても達成できなかったタスクを2日で終わらせ、間に合わないと危惧されていた社内フローの立てつけもギリギリ間に合わせた。自分で言うのもなんだが、なかなか有能に立ち回ったと思う。全ては生産性向上のおかげ、恐るべし「情報削除」。
 
そんなリリースを越えたその次の給与査定、いつものように部長に呼ばれた。
差し出された通知書に目を落とした。
 
評価:A
昇級 20,000円
 
目を疑った。
私の会社はS評価でも5,000円程度しか上がらない。それが、2万円?
 
「俺も、こんなに上がったやつ見たの、俺以来かもしれないわ」
 
と部長が冗談めいた口調で言った。
 
****
 
正直こんなに目に見えて物事がうまく回るとは思っていなかった。
掃除をしなさい、なんてよく聞く言葉だし、整理されていた方が仕事が進むのはわかっていたが、「情報」を減らすと言う視点をもつようになってから様々な物事の捉え方や仕事の進め方が上手くなった気がする。
そう思うと、情報を削除することというのは、様々な学習をして情報を増やすことと似ている。全く相反する要素に見えるが、たどり着く目的は同じく、自分を高めることなのだ。
 
そうして今日も、「ゴミ箱」アイコンをクリックし、余計な情報を全て空にした。
なすべきことにフォーカスするため、いつもリセットしたデスクトップを維持するのだ。
 
 
 
 
***

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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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