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メディアグランプリ

スパイだった私とグラデーション


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松尾 恵実(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
私が人生で初めて、スパイになったのは小学生の時だった。
 
今の小学生や、他の学校がどうだかは知らないが、私の小学校では二年に一度クラス替えがあった。だから、あの小学五、六年生の時も、同じメンバーのクラスで二年間をすごした。
私はあの二年間のことを思い出すと、楽しかった思い出よりも、どちらかというと辛かったり、苦かったことをよく思い出す。
 
クラスでいじめがあっのだ。
ターゲットになったのは、クラスメイトの女の子だっだ。
 
これは私の記憶だし、何があったかを日記に残しておいたわけでもないから、客観性に欠ける視点からの話。
そして、私は誰かを訴えわけでもなく、名誉を毀損したいわけでもない。だから誰がどうして何があったかは詳細には書かない。
ただ、私は、あのとき、確かに自分はスパイだと思ったのだ。
そして、それが本当に長い間、私を、人間不信に陥らせてしまうことになった。
 
クラスでいじめが起きるとき、おそらく、大きく分けて3つのグループに分かれると思う。
ひとつ目はいじめる者、もう一つ目はいじめられる者、そして三つ目は、いじめはしないが、止めもしない者。
私はその三つ目のグループの人間だった。
いじめる人に注意をするほど影響力があるわけでもなく、いじめられる子を庇うほどの勇気もなく、ただ眺めている存在だった。
ただ、他の人と少し違ったのは、「誰がどんないじめ行動をしたのか」を、他のクラスメイトがみていない隙を狙って担任の先生に逐一報告していたことだ。
小学生の私からみて、担任の先生は、とてもやさしい人だった。私の学生時代のクラス担当をしてくださった先生すべての中から優しい先生TOP3を選ぶように言われたら、1位か2位になるくらいの先生だった。
クラスでいじめがあったと言っても、テレビで報道されるような悲惨な状態にならなかったのは、そのクラス担任の先生の私の知らない部分での働きかけがあったのだと思う。でもやはり、いじめは担任の先生の見えないところで続いていた。
 
なんでこっそり言わなければならないんだろう。
いじめている子たちに、注意する勇気もないし、庇う勇気もない私が、なぜかげでこそこそ担任の先生に「チクって」いるんだろうか?
 
いじめが起きる時、きっといじめを行う人は悪いだろう。そうだとしたら、私も結局はその現場を傍観者として存在していたのだから、間接的にはいじめている立場と同じだったはずだ。私は何が悪かったのだろうか。私がやった行動はあの時の最善だったのだろうか。もっといい方法があったのではないだろうか。
ずっと考え続けることになった。
 
月日は流れ、社会人になって数年目の時、私はまた人間関係で悩まされることになった。
職場の人間関係、コミュニケーションにほとほと困ってしまったのだ。
そして、人生で初めてカウンセリングを受けることを決断した。
 
カウンセリングで、私が一番学んだのは、ものごとそのものに良い悪いはないということだ。
物事はただそこにあって、その物事に「それは良い」「それは悪い」の判断を下すのは人間だということ。
カウンセリングを受けて学んだときは、その意味がよくわからなかった。
ただ、カウンセリングを受けた後、自分の行動を客観的にみる練習を繰り返すうちに意味がわかってきた。
 
それは色鉛筆のようなものなのだ。
赤、青、緑、水色、黄色……いろんな色鉛筆があるけれど、どの色がいいとか悪いとかはない。
水色が好きとか、緑色は苦手とか、そいうのはあるのだろう。でもそれは、ただ単に個人の好みの話だ。
一人の人間の中にもいろんな色が混ざっている。
多分、人はグラデーションのようなものなんだと思う。
 
赤とかピンクとか黄色のような個性を持ったグラデーションを持っている人も入れば、緑と赤と黄色とか派手な組み合わせのグラデーションを持った子がいる。
そして、人はいろんな一面を持っているから、その時のシチュエーションによって、緑の一面が強くなったり、赤の一面が強くなったりするだけなんだと思う。
いろんな人がいる。
それこそ、十人十色、いろんなグラデーションを持っている人がいるのだと思う。
 
部屋の掃除をしているとき、引き出しから色鉛筆の入ったケースが落ちて、部屋中に色鉛筆が散らばってしまった。
そのとき、私は、あの時の小学生のクラスの思い出に感じていた苦しさの正体が分かった気がした。
私は、誰かを悪い人とか、いい人、とラベルをつけてしまう状態が苦しかったのだ。
本当はそれぞれがいろんな一面を持ったグラデーションの存在なのに、いじめっ子、いじめられっ子という一色で描かれたラベルをつけた状態が辛かったのだ。
 
あの時の、何もできずただスパイのような行動くらいしかできなかった私。自信も勇気もなかった自分が、何度時を巻き戻して、あの頃に戻ったとしても、他の行動を起こせる気がしない。
今の私だったら、ああしたらよかった、こうしたらよかったと、いろいろ思い浮かぶこともあるけれど、過去に戻ることなんて不可能なのだ。
なぜなら、そう考える今ここにいる私は、苦しかった気持ちをなんとかしようとして、ずっともがき続けた結果の存在なのだ。
 
だから今私ができるのは、せめて誰かの色を決めてしまわないこと。
 
人はグラデーションだ。
そして私もグラデーションだ。
 
悲しみで青い色がでてくることもあれば、オレンジ色のように楽しい色がでてくることもある。
人によってその色がでてくるタイミングは異なるだろう。
 
たぶん、好き嫌いはある。
でも、せめて出会った人の一面を見て、一色の存在だと思わないようにしたいと思う。
その人も、私が知らないだけの一面がきっとあるのだろうから。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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