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散歩はアルバムを見返すようなもの

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 雄太郎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「沖縄かな? それとも、北海道にする?」
妻は真剣に、そして楽しそうに考えていた。緊急事態宣言が5月末にあけた。完全にコロナが収束したとはいえないが、何かホッとした感じもした。まだ5月末の段階では他県への移動は制限されているが、状況次第では7月からは他県へも旅行することができるかもしれない。そのことで、今まで絶望的に考えていた夏休みの旅行先を考え始めたのである。
「まだ、分からないし、これからどうなるか分からないよ。」
僕は妻の期待を上げないように諭しながらも、自分自身としてもどこかに行きたい欲望があることは正直あった。ただ、正直未だ怖かった。緊急事態宣言があけて初めての週末は家にいた。まだ電車に乗って遠くに行くことに対しては抵抗があった。テレビを通して銀座、渋谷の街の様子を見ても、「安心」を感じることはできなった。そのため、本当に今後旅行することができるのか不安しかなかった。
お昼ごはんを食べ終えて日曜日の午後。何もしないことが許されることがうれしい反面、なにかしたい衝動が起こる。それは、僕だけでなく妻も同様だった。
「せっかく、今日は雨も降っていないし、散歩しない?」
「いいね。毎日家にいるだけでは運動不足になるからね」
僕はうれしかった。実際、家に出ることは買い物くらいしかなく、運動不足が体を表していた。お昼ごはんの片づけをして、少し休んでから家を出た。家の周りを散歩する予定であった。今住んでいる場所は隅田川に近い下町のところである。平日はビジネスパーソンが多い街ではあるが、最近マンションが次々と建てられたこともあり、家族連れが多い。正直、家の周りはあまり歩くことは少なかった。緊急事態宣言前の平日は夜遅く帰宅、土日は登山や都心に買い物に行くということがほとんどであったため家の周りを歩くということは少なかった。だから、家の周りを歩くのはとても楽しかった。散歩ではいつも知っている通りから始まり、ふと知らない道に入ってみる。
「ここいってみない?」
いつも知らない道へ導いてくれるのは妻である。今回も新しい道へ導いてくれた。
通りの幅は広いが車は多くはない。コンビニ、お花屋、ビジネスホテル、ドラッグストアに飲み屋と多種多様なお店があった。日曜日ということもあるのか、人の数は少なかった。妻と歩きながらどんなお店があるのか見ていった。すると一軒の居酒屋に足を止めた。お店の雰囲気がとてもよかった。オシャレなイタリアンレストランという感じであり、ワインの空き瓶が飾ってあった。すごく、カッコいいお店であるということで興味が高まり、店先に貼られていた張り紙に目を通したそこには、緊急事態宣言を受けてランチ営業を火曜、木曜、金曜に実施しており、夜は当分間お休みであることが分かった。ランチにはチキンカレー、ラザニアをはじめ、ちょっと飲むのに適しているおつまみが数種類であった。そして、店の名前を検索して評判を見てみた。すると、驚くことがあった
「あれっ。ここって美味しいお店を数字で評価するミシュランに掲載されているお店なの?」
僕は驚いて検索した内容を妻に見せた。
「本当だね! こんな家の近くにもあるんだね」
僕と妻は驚いて何度もお店の周りを見始めた。雰囲気がオシャレで見始めたときよりも驚きと尊敬のまなざしで見始めた。
「今度、ランチ買ってくるね。今、リモートワークで家でいる時間長いし、毎回作るの大変でしょう」
僕は妻に提案してみた。
「そうだね、それは助かる。しかも、食べてみたいし、今度はお店にも来てみよう」
僕と妻の散歩は楽しくなってきた。
また、歩き始めていると今度は懐かしいお店が出てきた。3年前にこの場所に引っ越してきたときに食べに来たもつ鍋屋さんであった。知っている道に戻ってきたのである。
「ここにつながるんだね」
僕は自分の頭の中の地図を整理した。
近所の散歩はいつもの同じものを確認するだけの気分転換の要素が大きいと思った。ただ、それだけではなかった。同じ街に住んでいても知らない新しい場所を見つけることができるのである。自分の思い出のアルバムを見ていると懐かしさを覚えつつ、新しい発見をすることができる。今回、散歩をすることで自分の中にあるアルバムを整理して、新しいお店を見つけることができ、アルバムに新しいページを作ることができた。
散歩をしてみると2時間くらい経っていた。そろそろ夕飯の準備をしないといけない時間である。ここからは知っている道であるので、いつものスーパーによって、妻と買い物をすることにした。
「今夜はカレー以外にしないとね。早くても火曜日にはカレーだから」
妻はすでに火曜日にはカレーであることを楽しみにしている。
「そうだね、じゃあ、今夜は肉じゃがにしてもらえませんか」
僕の要求をのんでくれた妻は必要なものを整理していつものスーパーへと向かった。
 
 
 
 
***

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2020-06-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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