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地味に弱い夫と私と働き方改革


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ヨシオカ ユーコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「俺は検温動物!」と言って、毎朝毎晩体温を測る夫。検温動物とは、変温動物をもじった夫の造語だ。
夫は疲れがたまるとすぐ熱を出す。発熱以外にも、頭痛や吐き気や激しいだるさで寝込むといったことが、だいたい1ヶ月に一度はある。
そのため夫は毎日検温し、自分の体調の変化に気をつけている。
 
特に持病があるわけではない。普段は健康そのものだ。熱は半日寝れば下がる。頭痛と吐き気が酷かったとき、脳外科のある病院に行ってMRIも撮ったが、異常なし。
医師も、「大きな病気はないので安心してください。でも、原因は不明」とのこと。
病気でもなんでもなく、本人曰く「体質」だそうだ。
 
そんなわけで、我が家にはおよそひと月に一度、「なんか今日は調子悪いみたい……」と布団にくるまってグッタリしている夫が登場する。
「今日はそういう日か。熱は?」
「微熱。けど、なんかしんどい、ごめんね……」
お互いいつものこと、という感じだ。心配はするが、大変だ! とうろたえるようなことはない。
ただ、いつもの体調不良の夫を見ながら、私はふと思う。
 
生理のときの女子みたいだ。
 
生理に関連する体調不良に悩まされる女性は多い。私もその1人だ。生理が仕事に差し支えるのを防ぐために、低容量ピルを飲んでいる。
月に一度の月経と一緒に襲ってくる生理痛、下痢、倦怠感によって、仕事の効率が落ちるのを防ぎたかった。
生理休暇はあったが、私が働いていたのは男だらけの職場で、使えるわけがない。上司は全員男性だ。生理で体調が悪くて……なんて言えない。
 
そこで私はピルの服用を選んだ。
私がもともと鈍い性格なのもあるかもしれないが、なぜ女性だけがこんな思いを、という気持ちはなかった。たまたま女性に生まれて、たまたまこういう体質なんだと割り切っていた。
 
ピルが身体に合うかどうかには個人差がある。私の身体には幸いに馴染んでくれて、おかけでとても助けられた。生理前や生理中のあの不快な症状がないだけで、こんなに快適に働けるのか! と驚いた。
 
ピルで何とかできる私の生理に比べたら、夫のあの定期的な体調不良は、これといった原因もなく、対処のしようがない。体質である以上、薬も何もない。できることといえば、疲れをためないよう、規則正しい生活を心がけるぐらいだ。
 
病気ではない。でも、症状が現れたときはほんとうにつらい。
夫の体調不良も、女性の生理も、その点ではとても似ていると思う。
 
でも、こんな病気未満の地味に困る体質を抱えて働く人というのは、男女問わず、実はそれなりにいるのではないか。
 
病気未満の地味に困る体質といえば、私には生理以外にもうひとつ、思い当たることがある。うつ病から復帰した後のことだ。
私はある仕事でうつ病にかかり、療養した後に転職した。新しい職場では元気に働いていて、うつはすっかり良くなっていた。
 
しかし、数ヶ月に一度くらいだろうか。忙しい時期が続くと、朝どうしても起きられない時があった。後遺症に近いのかもしれない。身体に負荷がかかってくると、過去に病気を経験した身体が待ったをかけてくる。
あのときみたいなしんどい思いをしたくないから、あまり頑張らないで! と身体が訴えているかのように、起きられなくなる。
 
そういう時は、朝少し休むだけで落ち着いた。1時間ほど休んでから出勤すれば、その後は何事もなかったかのように普通に働けた。
職場に休暇を取りやすい空気があったからこそ、できたことだった。
 
職場には、1時間単位で有給が取れる制度があり、社員みんなが普段からこの有給を利用していた。理由の申告も不要だったが、実際は、自分の体調不良だけでなく、突然熱を出した子どもの通院など、家庭の事情で使う人も多かった。
必要があれば休むことが、当たり前にできる職場だった。
 
夫も同じ職場にいる。おかげで、彼はいざいつもの体調不良が来ても、「朝起きたら、また熱が……休む」「出勤したけど、やっぱり頭痛がひどくて早退した」ということができる。
職場には、「彼、たまにこういうことあるよね」「仕事、忙しいもんね」と咎める人はいない。
それどころか、「大丈夫? 病院にはちゃんと行った?」と上司の方から心配の電話をいただくほどだ。
早退するまで青白い顔で仕事をしていたのでしょうね、夫の周りの皆様、驚かせて申し訳ありません。
でも、病院に行っても何の病気もないと言われるのです。
 
病気ではなくても、仕事を休まなくてはならない人、仕事のパフォーマンスを維持できない時がある人は、男女に関わらず存在する。
みんながみんな、週5日もしくはそれ以上、常に元気に働ける強い人、という前提で仕事の体制を組むことには無理がある。
働き方改革に必要なのは、休む必要のある人が普通に休める環境づくり、誰かが少し休んだくらいでも仕事が回る環境づくりではないか。
 
休む必要のある人の一例として、生理に伴う不調に悩む女性がいる。でも、それだけではない。
ほかにも、周りに言い出しづらい事情を抱えている人がいるかもしれない。体質だったり、持病だったり、家庭のことだったり。
「休んでサボっているのかもしれない」と想像するのではなく、「休んで困っているのかもしれない」と想像できる人と一緒に働ける方が、安心だ。
 
ピルや生理休暇は、働く女性を助ける一手段に過ぎない。でも、悩みを抱えて働いている人を救う方法は、ほかにもあるかもしれない。
有給を取りやすくする、業務分担の偏りをなくす、スケジュールに余裕を持たせるなど、いざという時に休みやすい環境がある方がありがたい人もいる。休む事情を明かしたくないケース、特別扱いされたくないケースもある。
理由を問わず、全員が平等に休みやすい職場は、悩みを抱える人にもそうでない人にも、トータルで働きやすい職場になる。
 
生理のある女性も、身体のやや弱いうちの夫も、病気の後遺症が少し残る私も、働く人の多様性の小さな枝葉のひとつに過ぎない。
毎日元気に働くために、薬の服用や規則正しい生活など、個人でできる努力はもちろんする。
その上で、「いろんな人がいる」という前提で動いている職場があれば、仕事で効率よく自分の力を発揮できる人も増えるだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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