メディアグランプリ

某大女優が教えてくれた、俳優として売れるための秘訣とは


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田成正(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
何としても爪痕を残したい……
 
大きなチャンスが巡ってきた時、若い駆け出しの俳優なら誰もがそう思うだろう。
そして僕も、もれなくそう思っている一人だった。
 
「金なし」「コネなし」「経験なし」で、大阪から上京してきた僕は、何としてもいい演技をして、爪痕を残して、もっと大きい仕事を貰いたいと四六時中考えていた。
といっても最初の一年は、書類審査すら通らずバイト三昧。
書類が通るようになっても、今度は最終審査までなかなかたどり着くことができない。
オーディションに受かるために、ありとあらゆることを試しては、毎回無残に散っていく。
なぜうまくいかないのだろう……
俳優のオーディションというものは、受かった時は、合格した理由を教えてもらうことができる。しかし、落ちた理由を教えてもらうことはない。
 
「残念ですが、次回またご一緒できるのを楽しみにしております」
 
落ちる度にこのような言葉しかもらえない。
落ちれば落ちるほど、心はどんどん荒んで、腐っていく。
 
「絶対残念に思ってないだろーな」
「ご一緒できる機会なんてあるのかよ」
「もうはじめっから出来レースだったんじゃねーの」
 
そんなことをいつも思っていた。
焦りだけが、どんどん募っていく。
家族、地元の友達、そして彼女に大口叩いて上京したのに、何一つうまくいってなかった。
 
そんな僕にチャンスがやってきた。
オーディションに合格し、ゴールデンドラマにレギュラー出演する仕事が入ったのだ。
合格の通知を受けた時は、心の底から大喜びした。
いや正直最初は信じられなかった。
「まじっすか」を100回は繰り返したと思う。
先輩も後輩も、バイト先の人もみんな祝ってくれて、その日はお酒を浴びるように飲み、もちろん記憶はなくなった。
翌日起きた時、ひょっとして夢だったんじゃないかと思い、急いで携帯を見た。
携帯の着信履歴には、合格の際にかかってきた電話番号がしっかり残っていた。
やっと……、やっと受かった! よっしゃー!!
だがここで安心するわけにはいかない。
チャンスである。僕にとっては、千載一遇の大チャンス。
なんとしてもこの仕事をきっかけに、たくさん作品に呼ばれるようになりたい。
合格通知を受けてから、撮影が始まる日まで、多くはない自分の台詞をどういう風に言うか必死にイメージトレーニングをする。
 
声の大きさはどうしようか。
どんなトーンで言おう。
どんな動きの中で言おう。
 
一生懸命考えて、ひらめいたことを当日全力で芝居にぶつける。
スタッフさんも、監督も「いいね」を連発してくれる。
おもしろいシーンの演技の時には笑ってくれた。
 
よしいいぞ、このままいけば……
 
「だめよ」
 
声の方を振り返ると、ある女優さんが立っていた。
 
「あなたの芝居は、独りよがり。台詞はどう言うかじゃないの。次の人の台詞が出やすいように自分の台詞を話す。このドラマを見る人は、ストーリーを楽しみにしているの。
あなたが目立つのを楽しみにはしていない」
 
ヒヤっとした。
うまく返答できずに、ただ立ち尽くしていると、
 
「そこに気をつけていれば、大丈夫。またお仕事もらえるわよ」
 
最後は笑いながら、そう教えてくれた。
 
もしもこのアドバイスが、普通の先輩だったらわかったふりをして、
これまで通り自分が目立つことを繰り返していたかもしれない。
しかし、アドバイスをくれた女優さんは、毎日テレビで見る女優さんだった。
僕は素直にそのアドバイスを実行することにした。
台本も自分の台詞の所だけを読むのではなく、全体の流れを意識して読む。
自分の台詞にマーカーを引くなんて、ダメ絶対!
自分がやりたいプランも作らず、撮影に臨んだ。
 
不思議な事にこのアプローチの方が楽しく撮影ができた。
自分のプランしか考えてない時は、周りが見えておらず、自分一人で焦ったり、興奮したり。
それを止めた時には、相手役や監督の話を聞きながら演技できて、
僕はそれからより一層演技することが楽しくなった。
 
といいつつも、僕は自意識過剰とナルシストを激しく持ち合わせているので、
気を抜くとつい目立とうとしてしまう。
撮影の時は、1日1回この言葉を思い出して、望むようにした。
女優さんが教えてくれたとおり、そこから仕事のオファーが少しずつ増えるようになった。
 
僕は今、俳優を辞めて、別の仕事をしているが、いまだにこのアドバイスにたくさん助けてもらっている。
 
そして先日、ライティング・ゼミの講座で三浦さんから
「新海誠さんも、劇場でお客さんに楽しんでもらうことだけを考えている」と聞いた時、とても腑に落ちた。
やっぱり超一流な人ほど相手に主体を置いているのだなと。
あのアドバイスをしてくれた女優さんも、あれから10年経った今も、ほぼ毎日テレビに出続けている。
 
オーディションに落ちまくって、それでも夢をあきらめられない俳優に伝えたい。
 
「演じることもサービスである」
 
そしてこれこそがきっと、俳優として売れるための一番の秘訣なのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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