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犬のように生きろ!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:澤田敏仁(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ある日、文字が読めなくなった。
 
遡れば、40歳を越えたある頃から、急に眼が疲れやすくなった。
パソコンに向かい合う時間が多かった日は特にだ。
疲れのせいだと思い、目玉を上下左右に動かす眼球マッサージをしたり、
蒸しタオルを目にあてていたが、一向に回復しない。
そんな日々が1年近く続いた頃、文字が読めないくなっていた。
いや読めなくなった、という表現は正確ではない。
正しくは、判別がつかなくなった、ということだ。
これは、“老眼”というやつだ。
 
「嘘だ!」認めたくなかった……。
近眼の私は眼鏡をつけていれば、ある程度遠くを見ることができる。
しかし、手元はかすんで細かい文字や数字は判らない。
眼鏡を外せば、手元の文字・数字は判るが、遠くはぼやけてしまう。
いちいち面倒なので、鼻まで眼鏡をずらすのが手っ取り早い。
 
以前、グループ会社の常務と仕事をしたが、眼鏡を鼻までずらし、上目遣いで手元の資料を見ていた姿が、衝撃的なほど年寄臭かったことを思い出した。
「俺はこうなるまい」そう心に決めていたのに、気が付けば、常務と同じことをしている自分にショックを受けた。
 
「これが老化か……」人生で初めて“老い”を感じた瞬間だった。
今まで、人間ドックで「これは老化現象ですので、特段気にしなくて大丈夫です」と医師から言われたり、妻から「白髪ふえたねえ」と言われても“老い”を感じることはなかったが、老眼は確実に“老化”を感じさせてくれた。
 
これまでの老化と違うのは、生活に支障があることだ。
「ちょっと数字確認したいんだけど」とデスクに内線電話が掛かってきたときのことだ。
このとき、相手のニーズに応えるには手元の資料とパソコンの画面の数字両方を確認しなければならなかった。
眼鏡を付けたままでは数字の6か8かを判別できない。
私は勘で答えてしまった。
私生活でも困ることは多々ある。買い物では、細かい表示は全く見えない。
まんがもコミックスサイズではセリフが読めない。昔、父が「こんな小さい本よく買うね」と言っていたのを思い出した。
 
老いを感じるということは、こんな直接的な変化ばかりではなく、自分の心に大きな影響をもたらした。新しいことにチャレンジする気力を失せさせるのだ。
言い換えれば、心を老いさせる、ということだ。
仕事をしていても、新しい取り組みに向き合えなくなり、現状維持に留めたくなる。
課題があってものらりくらりとかわしてしまう。
さらには、自分の残り人生を考えてしまい、会社生活において、いかに定年まで逃げ切るか、をつい考えてしまうようになった。
 
逃げ切る、とまでいかないまでも、自分の仕事を整理して、後進にゆだねていこうと考える。
自分が20代や30代のころ、あまり仕事に熱心でなく、改革を提案しても、「君が将来やりなさい」というばかりだった当時の上司の気持ちがわかるような気がした。
当時は腹立たしかったそんな上司と同じようになっている自分が情けなくもあった。
 
こんな気持ちを変えさせてくれたのは、ウチで飼っているチワワだった。
予防接種で動物病院に行くと、掲示板に「犬の年齢早見表」というものが貼ってあった。犬の年齢を人間に換算すると何歳になるか、という表だ。
犬種によっても差があるようだが、1歳の犬(小型犬)は人間なら15歳、2歳なら23歳という風に、犬は人間より早いピッチで年を取っていく。
ウチのチワワは6歳なので、人間でいうと40歳だ。ついこの間、生後4か月でウチにやってきたのに、もう40歳! このまま3、4年経てば、私の年齢も追い越してしまう! そう考えると人間に比べ、はるかに短い犬の一生に切なくなった。
 
でも、待てよ、犬は自分が何歳かなんて、ましてや、平均だとあと何年生きられるかなんて全く考えていないはずだ。
散歩に行き、ごはんを食べ、遊び、寝る。先のことを考えず、毎日をがむしゃらに生きているのだ。これから老いてきても、変わらず生きていくのだろう。
 
今を目いっぱいやっていこう!
私の気持ちにスイッチが入った瞬間だった。
人間は学習することと引き換えに、先のことまである程度わかっている。
が、それは幻想だ。人間もいつまで生きられるかわからないし、年齢なんて、社会的に必要なだけで、すべてを縛られるものでもない。平均寿命まであと何年、といったって、100歳まで生きるかもしれないし、次の瞬間にこの世にいないかもしれない。若くても死んでいるようなやつもいれば、100年後の未来のためにワクワクしながら生きている70代もいる。
結局、人間も犬と同じで、毎日を懸命に生きていくしかないのだ。
この先のことを想像しても、そのとおりになるはずもない。
新しいことや面白そうなことには、「今更、初めてもどうせ……」などと言わず、どんどん飛びついていきたい。
 
身体は年を取っても、心まで年を取る必要はない。
「犬のように生きろ!」心に誓いながら、今日も犬と散歩に出かけるのであった。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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