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相手が喜ぶことなんて、しなくてもいいのかもしれないね。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長尾創真(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「相手の嫌なことをしないようにしよう」
「相手がどう思っているか考えよう」
「相手が喜ぶことをしてあげよう」
 
小さいころから、そう教わってきた。
 
「真面目」とよく言われるぼくは、その言いつけを守ってきた。
 
おかげで、
 
中学校では生徒会長になった。
高校では、サッカー部の副キャプテンになった。
大学では、ヨット部のキャプテンになった。
 
俗に言う、優等生。
 
ひとの気持ちを考えて、自分が嫌な気持ちになっても、相手に合わせる。
相手が喜ぶであろう言葉をかける。
自分がされて嫌なことを人にしない。
 
これまで、そうしてきた。
 
しかし、その分、自分のありのままを出すのが下手だった。
 
2012年、春。中学の卒業式。
 
生徒会長の僕は、答辞を読むことになった。
卒様式まで、答辞の原稿を書き、国語の先生と何度もすり合わせた。
 
その原稿を持ち、体育館のステージに1人上がり、校長先生の前で話し始めた。
 
15分のスピーチ。
田舎の小さな中学校だったから、1学年72人。全校生徒で300人弱。
小学校の時から一緒のひともいっぱいいる。
 
みんなで迎える、最後の舞台だ。
 
季節の言葉から始まる。
これまでの学生生活を、振り返る。
これから離ればなれになることを、悲しむ。
 
練習してきたとおり、淡々と読みすすめる。
感慨深くないわけではないが、なかなか涙は出てこなかった。
 
スピーチ終盤、先生や保護者に感謝の言葉を伝えるパートがきた。
 
その時だ。
頭の中に、こんな言葉が浮かんだ。
 
「これ、泣いたほうが良いよな」
 
みんなに感動してほしかったから。
 
このまま、淡々と終わってしまったら、来てくれてる保護者の人も泣けない。
卒業生も、泣けない。
卒業式の雰囲気、醍醐味を作れない。
 
そう思った瞬間、泣き真似をした。
鼻をすすり、文章を読むテンポを遅くして、詰まりながら読んだ。
 
みんなと離れること、家族への感謝、充実感で涙を流した。ふりをした。
 
結果、ぼくの作戦は、大成功だった。
会場は、涙、涙。
保護者も、先生も、卒業生も泣いていた。
 
「感動したよ」
会場を出たとき、大人には、みんなから言ってもらえた。
 
僕は、純粋に「よかった」と思っていた。
 
でも、卒業式も終わって、事務連絡も終わって、下校するとき。
中学一番の親友は、おもむろに近づいてきて、こう言ってきた。
 
「そうま、泣いてなかったくない?」
 
ズキッ。
心当たりがあるから、とても心が痛い。
 
「そんなことないわ! 泣いとったわ!」
 
と明るく返したが、ぼくは焦っていた。
親友の目は、騙せなかったのだ。
 
8年経った今でも、この時のことはよく覚えている。
 
誰かに喜んでほしいと思って、演出する。
これまで、ぼくはそれが上手な人生だった。
 
すごいと心から思っていなくても、すごいと言う。
かわいいと心から思っていなくても、かわいいと言う。
 
そう言うと、相手は喜んでくれる。
 
でも……。
 
それは、自分を偽ることなんじゃないかと思う。
 
「相手のことを思う」
 
この言葉は、とても素敵な言葉だと思う。
 
もちろん、この言葉を大事にしてきたからこそ、良いことは沢山あった。
自分に味方してくれるひとはできたし
一緒に頑張る仲間も、沢山できた。
 
だけど、同時に、「自分に嘘をつくこと」が上手になった。
 
誰かを喜ばせるためなら、自分が嫌なこともする。
誰かを嫌な気持ちにしないために、自分は我慢。
 
そんなことをしていた。
 
でも、自分は気づいてたんだ。
 
魅力的なひとは「ありのままの自分をさらけ出せるひと」だって。
 
自分がいいと思ったことは、良いと言う。
自分が嫌だと思ったことは、嫌だと言う。
自分が感動したことは、熱っぽく話す。
 
周りの人に理解してもらえなくても、自分が美しいと思ったものを描く画家。
 
ひたすらに、夢を目指してフリーで活動する、サックス奏者。
 
組織で働くのが嫌だから、フリーで撮り続ける写真家。
 
自分の弱み、想いを赤裸々に書く、フリーライター。
 
ヒップホップが好きだから、闇社会に入っていき、MVを作る動画クリエイター。
 
自分の表現したいものを、表現するために歌い続ける、歌手。
 
みんな、みんな、格好良いんだ。
 
それは、分かってる。
いつも憧れてたんだ。
 
だけど、伏せてきた。
自分は、「そっち側の人間じゃないから」と言い訳を作って。
 
だけど、本当は、分かってたんだ。
自分も、「そっち側の人間になりたい」と思ってること。
 
こどものころ、恐竜が大好きだった。
貪るように恐竜の図鑑を見ていた。
 
どうして虹ができるのか気になった。
どうして雨が降るのか気になった。
 
サッカー選手になりたかった。
 
そう、小さい頃、ぼくはただ無邪気な子だったはずなんだ。
 
周りの人のこと、環境のこと、現実的なこと。
そんなことなんて、関係なく、その時を楽しんでたはずなんだ。
自分が好きなことを、してたはずなんだ。
 
でも、大人になるにつれて、何か。呪縛を感じて。
自分の夢に、自分の可能性に、蓋をして。
 
現実を見ようとしていた。
 
でも、それでいいのか。
一回きりの人生。
人に合わせるだけでいいのか。人のことばっかり気にしてていいのか。
 
いいわけない。
自分を表現したい。あの魅力的なひとたちのようになりたい。
 
自分が美しいと思ったものを表現したい。
自分が書きたいと思ったことを表現したい。
 
よし、やろう。
やるしかない。人に、何と言われようと関係ない。
 
ぼくなら、できる。
おれなら、できる。
 
2020年4月。カメラを始めた。
 
自分が美しいと思ったことを、表現できるように。
自分が綺麗だと思ったものを、残しておけるように。
 
カメラを初めて、2ヶ月。
まだまだ、下手くそだ。
 
光の具合もうまくできないし、レタッチもままならない。
 
でも、毎日が楽しい。
ワクワクする。
 
今日は、どんな写真を撮ろう。
キレイなものに出会えるかな。
 
毎日が、一気に明るくなった。
 
これからカメラでも、「誰かのために」撮ることも出てくるかもしれない。
ひとが喜ぶように、声をかけて。
ひとが喜ぶように、写真をきれいにして。
 
それは、もちろん大事なことだ。
 
だけど、
そんなときに、ぼくは、決して忘れないでおきたい。
 
「ありのままが、一番美しい」ということを。
 
 
 
 
***

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2020-06-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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