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髪形変えればいい気分


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐々木 慶(ライティングゼミ・日曜コース)
 
最近暑い日が続く。
まだ、6月も入って間もないのに、気温が25度を超える日が多くなってきた。
まるで、夏だ。まだ、梅雨の時期にも入っていないにも関わらずだ。
 
暑いのが苦手な私にとって、この時期は苦手だ。
梅雨前のこの時期でさえ、こんなに過ごしづらいなんて困ったもんだ。
これで本格的に梅雨のシーズンがやってきたら、いったいどうなってしまうんだろう?
 
そんなことを考えていても、梅雨の到来も夏の到来も待ってはくれない。
 
「かき氷が食べたいなあ。ビアホールで、一杯ぐっとやりたいなー」
「冷たいシャワーを浴びたいなー」
 
無意識に夏を少しでも快適にすごそうとしているのか、自然とそんなことが頭に浮かぶが、まず真っ先に浮かぶのは髪を切ることだ。
「髪短くしたいな。バッサリ切りたいなー」
老若男女問わず、そう思ったことがある人も多いだろう。
 
かくいう私もその一人だ。
私の場合、短い髪形というと坊主頭が浮かぶ。
きっと、過去に坊主頭だったことが原因だろう。
 
実際に、私が坊主頭だったことが2回ある。
 
1回目はたしか、たしか3歳頃だったと思う。
ほとんど覚えていないのだが、親の話によれば、私は理髪店に行くことをとても嫌がったそうだ。
親に手を引かれて、理容店の前に行ったのはいいが、そこからが大変だったらしい。
なんでも、理容店の前にある電信柱にしがみついて「いやだ! いやだ!」と泣きわめいたらしいのだ。
毎回こんな調子の私にお手上げになった親が考えたのは、私を坊主頭にすることだった。
坊主頭にすれば、理髪店に行く頻度を減らすことができる。
これなら、親も苦労しなくても済むし、私も嫌な思いをせずに済む。
まさに、一石二鳥というわけだ。
そんなこんなで、私は3歳からおよそ一年間、坊主頭で過ごしたらしい。
その後どうなったかは、残念ながら、全然覚えていない。
しかし、それ以降、親が私の散髪で困ったとも聞いていないし、私がぐずった記憶もないので、きっと私の中で何か折り合いがついたのだろう。気分が変えられたのだろう。
 
それから、10年ほどは坊主頭でもなく、長髪でもないいわゆる一般的な髪形が続いた。
髪の毛が耳にかかってきたら、髪を切るサインだった。
サインの周期は、だいたい一ヶ月くらい。
サインが出ると、近くの理髪店に向かった。
しかし、この時期もやっぱり理髪店に行くと気が滅入った。
別に、髪を切ってもらえるのはいいし、実際頭が軽くなったような気分にもなれる。
理髪店のおじさんが嫌いだった訳ではない。
 
理髪店に入る前と入った後では見た目が全然変わってしまうのだ。
とにかく、理髪店のおじさんは私の髪をバッサリ切ってしまうのだ。
私の髪の伸びるスピードが早いこと、そして、昔私が、髪の毛を切ることにぐずっていたのを気にかけて親切心からそのようにしてくれるのだろう。
しかし、当時の私からしたらたまったもんではなかった。なんたって、髪形がたえまなく変化してしまう訳だから。
 
しかし、「今までと髪形を変えたいのですが」。この一言を言うことができなかった。
当時の私は自分の気持ちをあまり口に出すことができない、いわばシャイな性格。
言えるわけがなかった。せっかく昔からよく通っている理髪店のご厚意を無碍にするような言葉を。
 
ただ、そんな状況に嫌気がさしていたのは今でもよく覚えている。
 
そして、2回目に坊主頭にするときがやってきた。
たしか、高校2年生の頃だった。
宮城県の田舎から、仙台にある高校に通っていた私。
私立の進学校ということもあり、運動部は禁止、週末は数学や英語の補講という勉強漬けの毎日。
ストレスのためか、クラスメートはいつもギスギスしていた。
話す話題は勉強の話ばかり。成績順でクラス内での発言力が決まるようなそんな環境だった。
みんな鬱屈した気持ちを抱えていたのだろう。
かくいう私もその一人だった。
いつまで、こんなことを話すつもりなんだろう?
あー、気分を変えたいなー。
 
そんなことばかり思っていた。
ちょうど、前に髪を切ってから、まもなく一ヶ月が経とうとしていた。
髪の毛も耳にかかりそうになっていた。
 
「こんな気分なのに、また大幅に髪形が変わっちゃうのか……」
 
そんなことを思いながら、家路についていたある日。
久しぶりに地元の友人とばったり会った。中学校の時によくつるんでいた人物だ。
再開の挨拶も早々に、友人にその時抱えていた悩みを打ち明けた。
すると、友人はこんなことを提案してきた。
「なら、いっそのこと坊主頭にしちゃえばいいんじゃない? 気分転換にもなるだろうし」
「でも、正直髪形を変えることに抵抗があるんだよね」
そんな私の言葉を聞いた友人は、言った。
「なるほどね。ただ、髪形を変えることって悪いことではないと思うよ。人がそれぞれ違うように、髪だって人と違っていいと思うんだよね」
 
その言葉を聞いて私ははっとした。
それまで、私は髪形を変えてはいけないと思っていた。
誰に言われたわけではない。しかし、怖かったのだ。
人と違うって言われることが。
ただ、どうだろう。友人の言うとおり、たしかに人それぞれ顔の形も見た目も、ましてや性格も服装も異なっている。
髪形が違っていて何の問題があるのだろう? どんな髪形だっていいはずだ。
服を着替えるように、髪だって変えたっていいはずだと。
「自分を通していいんだ」、そう気付いた。
 
それからは早かった。
その足で、行きつけの理髪店に行き、お願いした。
「坊主頭にしてください」と。
約一時間後、理髪店から出た私は変わっていた。髪形も。そして、鬱屈とした気分も。
そして、空がよく晴れていたことを今でも覚えている。
 
あれから、15年が経った。
高校生の時以来、坊主頭にしてはいないが、気分を変えたいたびに、髪形を変えるようになった。実際に気分転換を図れた。
 
髪形と気分ってリンクしているんだなってつくづく思った。
 
そして、今も髪形を変えたいと思っている。
きっと、暑さのせいだけじゃない。気分も変えたいのだろう。
 
であれば、やることはひとつ。最近よく行く美容院に電話だ。
「よし、今度はどんな髪形にしようかな」、そう思いながら。
 
 
 
 
***

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2020-06-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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