メディアグランプリ

根っこは一緒


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石見由起(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「彼って、とっても優しくて、いつも私に君の好きにしていいよ、って言ってくれるの」
という友人がいた。
例えばこんな感じだ。
「週末はどこに行きたい?」
「ディズニーランドが良い!」
「じゃあ、ディズニーランドにしようね」
ほら、とっても優しいでしょ? 私のことを第一に考えてくれるのよ。
 
会うたびにどんなに彼女を気遣い、どんなに彼女の意思を尊重してくれるかを、長々と聞かされた。
あのね、彼ったら私が好きなレストランを予約してくれたのよ! 好きなチーズケーキも覚えていてくれたの! 映画を見る時も、私の見たい映画にいつも付き合ってくれるのよ。
 
傍から見ると苦笑いしそうな舞上がり方とはいえ、とても幸せそうだった。幸せな人は周りも幸せにするものだ。実際、私も楽しい気分をお裾分けしてもらった。彼女と会った帰り道では、訳もなく笑みがこぼれてきたのを覚えている。
 
半年ほど経ってから、彼女と食事をした。お互い忙しく連絡をしていなかったので、彼のことを聞いてみた。また惚気だすのは分かっていたから、こちらから口火を切ってあげようと思ったのだ。
「彼とは順調?」
一瞬、彼女の顔が曇り、表情がクシャっと歪んだ。
その次に出てきた言葉に私は驚いた。
「あの、優柔不断男!」
 
堰を切ったように、次から次へと彼の悪口が流れ出す。
何でも私に相談するの。
デートの場所も一人で決められないのよ。
決断力が無いの!
 
締めくくりの言葉はこうだった。
「あんな人だとは思わなかった」
 
そっか残念だったね、と彼女を慰めながら、私はぼんやりと考えていた。
好きだ~と思っている時に良いと思えたことが、嫌いになった途端に欠点に思えてしまう。欠点どころか、生理的嫌悪に近いものを感じてしまう。
これ、恋愛では珍しいことじゃないし、寧ろ良くある話だ。実際私も経験したことがある。
 
10年以上も前に付き合っていたひとは、いわゆる“知的な男性”だった。
大変な読書家で、知識や経験が豊富だった。彼の方が6歳年上だったこともあり、私はいつも質問をしていた。政治も経済も文学も、映画も漫画もファッションも、私の知らない世界を教えてくれた。彼を尊敬していたし、自慢の恋人だった。私も彼女と同じことを言っていたと思う。
「彼ってなんでも知っているの! どんなことでも教えてくれるのよ!」
 
そんな彼にモヤモヤを感じ始めたのは何時の事だったのか、覚えていない。ただ小さな歪みがだんだん大きく広がり、取返しが付かなくなっていったのだと思う。
彼と口を利きたくないと思った瞬間は、はっきり覚えている。
 
ゴルフの話をしていた時だった。彼はゴルフの経験が全くないにも関わらず、あるプロゴルファーを批判していた。
そのとき突然、彼が知らない人のように見えた。
目の前にいる人は、評論家のように解説をしているだけで、何一つ生み出してはいない。他人が創り出したものを批評しているだけだ。経験もないのに、本で読んだ知識だけで得意げに解説をしている。
 
“知識が豊富な人“が、“知ったかぶり”になった瞬間だった。
 
ただ、彼が本当に不愉快な“知ったかぶり”なのかどうかは、もはや永遠の謎だ。当時の私が神経質だったのかもしれないし、相手の嫌いなところを列挙することで、失恋の痛手を癒そうとしていたのかもしれない。
 
冷静になって考えてみると、彼に対してひどく不公平な気がする。もともと物事を様々な角度から見る人ではあったし、評論家気質のところもあった。彼は最初から何も変わっていない。それじゃ、一体何が変わったのだろう?
 
そんな話を別の友人としていた。
ねえ、同じ性質が全く違って見えてくるって、どう思う?
 
心理学を学んだ彼女は、いくつかの企業でメンタルヘルスカウンセラーの仕事をしている。豪快にビールを飲みながら、あっさりと言い放った。
「解釈が変わったのよ」
人の性質は変わらない。だって、長所も短所も根っこは一緒なんだから。違いは表面に現れた性質をどう解釈するか、それだけなのよ。
 
優しい人は優柔不断。
頑固な人は信念が強い。
しつこい人は粘り強い。
 
「人の性質は変わらないの?」
「性質は変わらない。解釈が変わるのよ」
 
この意見が正しいかどうかは分からないが、星占い的な楽しさはある。すべては解釈次第という事なら、自分の短所にも当てはめて考えてみるのも悪くない。
 
私の短所は、段階を踏むのが苦手なところだ。問題を一気に解決しようとして、いつも失敗する。仕事においてもチームメンバーを置き去りにして、やり過ぎてしまうことが多い。
これだ。私の最大の短所の解釈を変えてみよう!
 
そう言えば、上司にこんなことを言われたことがある。
「君は外科手術のような対応策を見つけるね」
半分あきれ顔で言われた言葉だが、ヒントが隠されているような気がする。
 
“段階を踏むのが苦手な人”は、もしかしたら“本質を素早く掴む能力のある人”なのかもしれない。
う~ん、何だか気分がいいぞ。
それじゃ、次はこの能力の上手な使い方を考えてみるとしよう、そうしよう。
 
人の性質は同じ根から生えて、樹幹や葉が育つ時に色々な要素のバランスが決まるのかもしれない。短所と長所、弱みと強みなどを分類する前に、解釈を変えてみてはどうだろうか?
嫌でもポジティブな性格分析になること間違いない。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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