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寮生活をしていたら幽霊になった話


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記事:スガイユカ(ライティング・ゼミ通信コース)
 
 
私は中学高校と6年間、親元を離れ寮生活をしていた。
 
中学生用の寮と高校生用の寮があり、2つの寮で暮らした。「女子寮」というと、フローラルな香りのする生活を想像されるかもしれないが、実際はそうでもなかった。
 
集団生活のためのルールが沢山あり、起床時間から消灯までスケジュールが決められていた。定時で点呼(人数確認)が行われ、掃除、食事、洗濯、身の回りのことは全て自分でしなければならなかった。
テレビを見ることができる時間も決まっていたし、外出は月に1回だった。
 
その上、上下関係に関する暗黙のルールが山ほどあった。
 
中学1年生は、学年カーストの最下層。まさに「上級生は神様です」を地で行く世界だった。先輩がカラスは白いといえばカラスは白い。そんな毎日だった。
 
中学2年生は、中間管理職デビューの年。新1年生を迎い入れ、寮生活のルールを教えなければならない。その間、3年生の空気を読むことも怠ってはならない。1年生にミスがあれば注意されるのは2年生だ。
 
中学3年生は、中学生の中ではトップなので、平和な1年を過ごせた気がする。これが最初の3年間だった。
 
高校に進学し、また振り出しに戻る。
 
高校1年生は、高校カーストの最下層。中学時代に仕えた先輩たちがそのまま高校での先輩として君臨する。
 
高校2年生は、二度目の中間管理職。やはり1年生の様子を見ながら3年生の様子を伺う日々。
 
高校3年生は、まさにトップオブトップ。寮生活も6年目、もう他人との生活に慣れきっているので、不平不満も減り一番平和だった。
 
そんな最高学年である高校3年生のとき、事件は起きた。
 
当時、私たちが暮らしていた女子寮には、高校1年生から3年生まで約100人の生徒が住んでいた。各学年混合の部屋割りで、10人程度(高1が3人、高2が3人、高3が4人)で一つの部屋で過ごしていた。
 
勉強用の部屋と、寝室の2つの部屋が与えられており、寝室には2段ベッドと収納棚とだだっ広いスペースがある部屋だった。
 
その寝室の空きスペースを使って、私たちは夜な夜なお菓子パーティー「通称:おかパー」を開いていた。参加者は部屋のメンバー全員。15歳から18歳のうら若き女子が毎晩のように、暗闇のなかでお菓子を囲み喋っていた。
 
消灯の21時になると寮全体の明かりが消える。そこから寮係とよばれる先生の見回りが始まる。布団に潜り、寝たふりをしてやり過ごす。先生の見回りが終わったことを確認すると、いそいそと布団から抜け出し、おかパーが始まった。毎晩のように、たわいもない話に笑い転げていた。
 
ある日、寮係の見回りが終わったことを確認し、円座になりお菓子を広げていたときのこと。
 
廊下からスリッパを引きずる足音が聞こえてきた……。見回りは終わったはずなのに。全員で気配を消す。
 
あ! この足音は寮長だ!
 
それは、寮の管理監督者である寮長の足音だった。寮長は60代の男性で厳しい人だった。
 
大慌てで、床に広げていたお菓子を回収し、ベッド下に押し込んだり、洗濯物の下に隠したり。一斉に解散して、私は布団に潜り込み、息を潜めた。
 
すると寝室のドアが開き、懐中電灯の明かりが部屋の中に入ってきた。やばい、部屋の中まで来た。どうかこのままバレませんように。布団のふくらみを確認し、人数確認ができればクリア。寮長は帰っていくはずだった。
 
つばを飲み込みその時を待つ。
 
しかし、どうしたことか……部屋から出ていかない。寝返りを打つふりをして薄目を開ける。
 
すると、懐中電灯が一つの収納棚を照らしていた。そこには、頭を収納棚の中に突っ込んでお尻をだしている同級生の姿が……。
 
え? どういう状況? 頭隠して尻隠さず! 私は布団の中で笑いをこらえた。
 
終わった……。ほかのメンバーもその様子に気づいたらしく、布団がカサカサ揺れていた。きっと笑いをこらえているに違いない。
 
「おい、なにしとるんや!」寮長の声が響く。
 
友人はその声をスルーした。
 
もう一度「おい!」と言われたとき、「すみませんでしたー」と棚から顔をだした。その瞬間、「全員出てこい!」と言われ、私たちは布団から出てこっぴどく叱られた。
 
「全員廊下に正座しとけ!」と命じられ、廊下で反省することになった。
怒られたにも関わらず、笑いが止まらなかった。
「頭隠して尻隠さず」を地で演る人を見てしまったのだ。お尻を照らされた友人の姿が忘れられず、ニヤニヤが止まらない。
 
寮長が寮内を一周し、戻ってきた。
私たちは、あまりにニヤニヤしていたので、また怒られて、正座の時間は延長された。
 
翌朝のこと、眠たい目をこすりながら朝食を食べていると、こんな噂が聞こえてきた。
 
「ねぇ、聞いた? 昨日、3階のトイレの近くに霊が出たらしいで……」
 
「聞いた聞いた、生首やろ……」
 
え……。それって、正座していた私たちでは?
 
窓ガラス越しの向かいの部屋から見た私たちは、どうやら生首に映っていたらしい。夜更しして怒られているうちに、いつの間にか幽霊になっていたなんて。
 
またしても笑いが止まらず、吹き出した。箸が転んでもおかしい年頃とは言ったものだが、今思えば本当に楽しい毎日だった。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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