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メディアグランプリ

一人の女性から広がる素晴らしい世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田 真子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
数か月前私はフェイスブックでとあるお店に出会った。
そのお店はアンティーク着物を扱ったお店。
沢山のカラフルな着物の写真を見てそのお店のことがとても気になった。
 
先日私はそのお店に行った。ずっと気になって仕方がなかったので直接行ってみることにした。車を走らせて一時間半。
道中もそのお店のことだけを考えていた。
 
ようやくたどり着いたお店は想像よりこじんまりしていたけれど、西洋風な家具にたくさんの着物が置かれていて不思議な雰囲気。まるで明治時代にでも遡ったかのようだった。
 
中から一人の女性が現れた。
 
「何かお探しですか? 気になったら手に取って羽織って見てくださいね」
 
そう言って彼女は手を止めていた作業に戻ろうとしたので私はとっさに彼女に話しかけた。
 
「フェイスブックで見ていてずっと気になっていたので今日やっとこられたことがすごく嬉しいです」と。
 
それを聞いて彼女の表情はとても明るく嬉しそうな表情になった。
 
続けてわたしは「夏物の着物を探しています」
そう彼女に伝えると彼女は一つの着物を出してきた。
 
「これなんてどう?」
 
言われるがまま私はその着物を手に取った。
その着物はとても鮮やかな青で一瞬にして心を惹かれたのが分かった。
 
「よかったら羽織ってみない?」
 
そう彼女が勧めて来たので羽織ってみることにした。
 
その着物はあまりにも軽かった。
 
着物は重いものとしてしか認識のなかった私にその着物は衝撃的なものだった。
着物を羽織っているのに着物の重さを全く感じることが出来ないくらい軽かったのだ。
びっくりしている私を見て彼女が話し始めた。
 
「ここにある着物は全部百年以上前の着物ばかりなの。着物の生地は持ってせいぜい百数十年。だからこの着物たちが朽ちてしまう前にいろんな人に来てもらいたくてこのお店を始めたの。だから今あなたが羽織っている着物も百年以上前のものよ」
 
おどろいた。
百年以上も前の着物なのに現代の着物よりも色も鮮やかで軽い。
 
いろんな着物を試したくなった私は数着試着させてもらうことにした。
全て夏用の着物。どんな違いがあるか、それを知ることが出来ると分かっただけで私の心は踊りっぱなしだった。
 
初めは濃目の青に渦の柄が入ったもの。
二着目は淡い青で川のせせらぎの中に鮎の絵が入ったもの。
 
それぞれ独特の柄の着物。恥ずかしながらその着物に合わせる帯はどんなのがいいのか正直私にはわからなかった。
 
そんな私を横目に彼女は次々といろんな柄の帯を持ってきて私に合わせてくれた。
いくつかの帯を選んだら試着を開始した。
 
一着目、軽さはもちろん接触冷感の生地でも使ったかのような冷たさを感じられる着物でちょっとひんやりした。渦の柄に合わせた帯は二匹の鮮やかな鯉の絵が入っていてとても縁起がよさそうだった。
 
二着目は同じく軽く今まで着た着物の中で一番軽いものだった。着てみた感じもとても涼しかった。帯には今の時期に合わせてアジサイ柄や夏に合わせて朝顔の柄のものや扇子の柄が入ったものも合わせてみた。帯の柄を変えるだけで着物の雰囲気もガラッと変わり鏡越しに見ていてとても楽しかった。
 
私はまるで着せ替え人形のように次から次へと着物を着させてもらった。
彼女もまたいろんな着物を私に着せながらたくさんの着物の話を聞かせてくれた。
 
百年前は今みたいに洋服などなく着物が普通だった。
だから着物も今よりももっといろんな種類やスタイルがあり、機能性も今よりずっと優れていた。着物をコーディネートするときはその着物でストーリーを作るのだと。そしてそのストーリーから組み合わせられた着物で個性を表現し見る人をも楽しませるのだと。
 
夏の気温が高いときは風通しがよく涼しい着物。色も原色のような明るい色ではなく人が見ても涼しく感じられるようなもの。そこにストーリーを足して風流に。
 
彼女の話は止まることなく続いた。
でも楽しかった。楽しすぎて完全に私は彼女の世界にはまってしまった。
はまっていくうちに気付かされたことがある。
 
昔の日本人はおしゃれだ。
 
着物しか着るものがない中着物の柄や帯の絵でその時の状況や感情、世情などを表現し、まるで着物で絵を描いて遊んでいるかのようだった。帯の絵一つとっても色鮮やかで細部まで繊細に書かれていた。
今の世の中には無い日本の文化だ。
 
彼女はその失われつつある日本の良き文化を後の世代に伝えようとしているのだ。
 
日本に生まれ着物という文化がある。だが多くの日本人は自分で着物を着ることが出来ない。母国の文化であるにもかかわらず。そんな状況を海外の人が知ったらどう思うだろう。
 
そんな話をしている時の彼女の顔は少し寂しそうだった。
 
彼女の着物に対する熱意に触れ私は決めた。
せっかく覚えた着付け。もっと着物を沢山着て本当の日本の着物を彼女と同じようにたくさんの人に伝えていこうと。
 
現代の洋服も素敵なものは沢山ある。現代の洋服も好きなので全く否定する気はない。ただ着物の表現力のすばらしさを世界中のたくさんの人に知ってもらいたい。
 
一人の着物をこよなく愛する女性に出会い彼女の先に広がっている着物の鮮やかな世界を垣間見、私の新たな着物の世界はこの日から始まった。
 
 
 
 
***

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2020-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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