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私は稟議書が嫌いだ。ただし稟議書を極めることをオススメする


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:海老原 一司(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
稟議書を作らされたことがあるだろうか。
会社で物を買ったり、パートナー企業と契約したりするときに作成するアレだ。
 
「稟議書か。やだなー」
「なぜ、いちいちこんな面倒なことしなければいけないだ」
「日本企業の悪癖だ。稟議書は廃止すべきだ」
稟議書に対するイメージは大体こんなものではないだろうか。
基本マイナスイメージしか持たれていないのが稟議書だ
 
私は稟議書が嫌いだ。
ただ稟議書は大得意だ。
 
4つの事業会社の新規事業担当としてあらゆる稟議書を書いてきた。
多いときは2年連続年間100本の稟議書を書いてきた。
もしギネスブックに稟議書という項目があったら申請したいくらいだ。
 
私は稟議書が嫌いだ。
だが「嫌いだからやらない」では新規事業は進まない。
やりたいことを実現するには、やらざるを得ない。
 
いくら嫌いでも稟議書相手に10年以上悪戦苦闘し500本以上書いていると、いろいろなことが見えてくる。見方が変わってくる。
 
私は稟議書が嫌いだ。
しかし、稟議書を作ることで学べることが多いことは間違いない。
稟議書は会社の縮図だ。
稟議書をマスターすると会社のあらゆるコトが見えてくる。
 
なぜか。
もちろん会社は稟議書だけでは動かない。会議、会話、メール、あらゆるコミュニケーション手段を使って意思決定がなされる。
しかし企業においては、どんな意思決定も、内容と根拠は必ず稟議に現れる。
 
それは、会社規定で決められているからだ。
会社には規定がある。稟議規定がある。稟議規定は必ず文書化されている。
規定は、会社の憲法のようなものだ。もちろんある程度の裁量余地はあるが一社員が破ることは許されない。
 
社内を動かすのに必要なことは必ず稟議書でわかる。
何百本も書いて稟議書を極めてくると、会社組織の動きが透けて見えてくる。
どのポイントを押せば案件が進むのか、社内調整のコツが見えてくる。
 
たとえば、毎回「この件、営業役員なんて言ってた?」と役員の顔色を伺う上司。このときは、先回りして営業役員の許可を取り付けておけばいい。
たとえば、なかなか捕まらず承認が遅れる取締役COO。役員室の前で出待ちして、「これが通らないとお客様に迷惑掛けちゃうのでお願いします」といえば、すぐ承認される。
たとえば、数字にしか興味の無い財務担当役員。儲かりそうなEXCELの数字を添付しておけばノーコメントですぐ承認される。根拠の強さは関係ない。数字がきれいであればよいのだ。
 
稟議書を通して社内政治を知った。社内調整の本質を知った。
根回ししようが、口八丁手八丁でごまかそうが、結局社内を動かすには稟議が通ればよい。稟議は正義だ。
 
稟議書を極めると会社の動かし方がわかる。
会社の動かし方がわかれば新しいことをどんどん進められる。
特に新規事業では、会社の動かし方のうまい下手の差は、とてつもなく大きい。
稟議書を年間100本通す人がいる。片や同じ部に半年に1回しか稟議書を通せない人がいる。
稟議書が通らないと企画は実行できない。いくら書類を作ろうと通るまでは、ずーと「検討中」だ。
単純計算で2人のパフォーマンスの差は50倍になる。
50倍は極端だが、経験上5倍10倍ぐらいの差があるのは当たり前だ。
 
稟議書を極めると会社の動かし方がわかる。
会社で活躍したいなら、面白いことをしたいなら、面倒でも稟議書を極めること、少なくとも仕組みを理解することはオススメだ。
 
ただ、ここ数年稟議書に対する考え方が変わった。
厳密には新しい考え方が追加された。
「社内を動かす」には稟議書を極めることが有効だ。
しかし、「社外を動かす」にも稟議書を極めることが有効だとわかってきた。
 
講師として法人営業を教えるようになった。
実際に顧客訪問して、営業ヒアリングで何を聞いてきたか、そこから何がわかったか、を発表してもらう。
すると単に浅い、深いではなく、私からすると的外れとしか思えないヒアリング結果が返ってくる。
 
「説明した商品に興味を持ってくれたが、権限ない人にヒアリング」
「相手が権限ないに訪問したから、じゃあ誰なら権限あるかは未確認」
「そもそも商品購買するとき誰が稟議書を書くか聞いていない」
 
これらを理解することなしに商談を成立させることはできない。
仮に商談成立しても、それは必然ではなく偶然だ。
再現性がない。
 
なぜか。
相手の立場に立って考えれば簡単なことだ。
企業である限り相手の会社にも規定がある、稟議規定がある。
顧客社内が動くには、必ず顧客担当者が稟議書を書いて社内承認を受けなければならない。
法人営業にとって商談成立とは、裏を返せば顧客社内で稟議が通ることなのだ。
 
とすると、営業担当者がやるべきは売り込むことではなく、顧客担当者の稟議が通るように最大限サポートしてやることだ。
顧客担当者がやりたいことを実現するための味方になるのだ。
 
ここで稟議の仕組みを理解している法人営業は強い。
売り込むのではなく、顧客担当者が稟議を通すために必要な情報を探してくる、作る。
「隣の部署では同じような案件を、こういう理由で通したそうです。マネしてはいかがでしょう?」
「去年は、その理由を根拠に書いたら本部長が突っ込んだみたいですよ。無くても成立するので、削ったらどうですか?」
稟議がわかると、顧客の立場がわかる。
相手のかゆいところに手が届くようになる。
 
「稟議を極めると会社の動かし方がわかる」
「稟議を極めた営業は顧客の立場がわかる」
 
仕事で重要なことは稟議で学んだ。
私は稟議が嫌いだ。
ただ、だからといって稟議を軽視してはならない。
稟議規定がある限りすべての会社は稟議を軸に動いていくのだ。
企業の縮図が稟議にあるのだ。
 
どうしても納得いかなければ社長になってもらうしかない。
社長まで出世してぜひ自分の会社の稟議規定を廃止して欲しい。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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