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駐車場にはご用心

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:朝木亜佐(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
女性のみなさんは経験ないだろうか? パートナーを手助けするつもりで言ったセリフに、なぜか相手が突然怒り出したことが。
 
ふだんは穏やかな人なのに、車を運転しているときの夫には、地雷がいっぱいある。わが家が車に乗るのは年に数回、旅行中のレンタカーのみ。慣れない土地での運転は心細いもの……何年もハンドルを握っていない私は、そんな素朴な発想で「支援」を繰り出していた。
 
道に迷ったかという状況であれば、「さっきの所を曲がった方がよかったんじゃない?」などとアドバイス。もちろん非難のつもりなどない。けれども言った途端、雲行きが怪しくなる。黙り込んでいる夫に尚も言いつのると、「同じことを繰り返すな」と噛みついてくる。おお怖い……。
 
混んでいる駐車場で車を止めようとするときもそうだ。「あっ! あっちが空いてたよ」と声を上げても、「へんなタイミングで余計なことを」と取り合わない。歩行者がランダムに動いている狭い駐車場で止めるスペースを探しているときに「外野から思いつきでものを言う」と煙たがられる。ひどい濡れ衣だ。
 
なぜ不機嫌になるのか理由はわからない。が、こちらはよかれと思ってやっていても、運転中に口をはさまれるのは、どうやら夫にはオモシロクナイらしい。
 
あるとき、やはり駐車場で揉め事になった。私とではなく、駐車場の警備員と。
 
高原でキャンプした翌日のこと。朝からあいにくの雨だった。予定していた登山を取りやめ、そのまま真っすぐ家に帰るよりはと、周辺の観光地をめぐることになった。
 
濃霧で視界が悪く、車の運転には気を使うコンディション。予定変更を強いられ、そもそも観光にあまり興味のない夫は、テンションが下がっていた。
 
昼どきになり、車の中で適当に検索したカフェに向かった。到着すると、ちょうど何かのイベントを開催中らしく、駐車場の入口が渋滞していた。嫌な予感がする。
 
見たところ満車というわけではなかったが、案内の警備員が、一台一台に駐車すべき場所を細かく指示していた。自分の思い描く通りに車をさばきたい様子だった。
 
順番が来たとき、警備員は「ちょっとここで待っててもらえます?」とだけ言って、他の車の対応に行ってしまった。残された私たちは宙ぶらりん。数分経っても戻ってこない。
 
「ちょっとって何分のことなんだ?」と夫が言い出す。「見通しを最初に言ってくれてたら、ここで待つか他所へ行くか決められたのに……」状況の説明がないまま放置されていることにイラ立ち始めていた。「いつまで待たされるか読めないし、この店はやめようか」と夫が車をUターンしかける。
 
するとさっきの警備員が飛んで来て、「ダメダメ、そっちじゃないよ! 待っててって言ったでしょ!」
 
「もう行きますから」と夫。たぶん警備員の耳には届いていなかった。再び夫が車を動かそうとすると、この場のコントロール権は自分のものという気配をずっと漂わせていた警備員氏、言うことを聞かない夫に向かって、あろうことか、こう叫んだ。
 
「日本語わかんないのかよ!」
 
ひゃー! 自分の顔から血の気が引くのがわかった。怖くて夫の顔を見られなかった。
 
実は夫は外国人である。日本語を流暢に話す。これは屈辱だったに違いない。
 
誤解してほしくないのだが、ふだんの夫は、指示を聞かなかったり、サービス業の人に横柄な態度を取ったりするような人物ではない。このときは運の悪い条件が重なって、気持ちの限界ギリギリのところだったと言えよう。
 
車内の空気は凍りついていた。夫は警備員の暴言には反応せずに、無言で車を発進させた。私は一連の出来事に唖然としながら、やっぱり駐車場は鬼門だと内心思っていた。同時に確信を強めた。夫は運転中にアレコレ指図されたくない人なのだと。相手が私でも誰であっても。ただ、なぜそうなのか理由はわからないままだった。
 
答えは本の中にあった。心理学者が男と女の心の行き違いを解説した『ベスト・パートナーになるために』。男女関係のカウンセラーをしている知人の薦めで読んだ本だった。
 
「男にとって問題解決は独力でするもの。求めていないときに助言されると気分を害する」
「とくに車の運転など、ささいなことほど、プライドが傷つく。そんな簡単なことすら任せられないと宣告されたようなものだから」とある。
 
心当たりがありすぎて絶句した。典型的な男と女のすれ違い、よくある話だったとは。これを知って以来、私はまだ地雷を踏んでいない。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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