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君との別れを夢見て


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イトウユリ(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
Aさん「週末、うちの冷蔵庫が壊れちゃったから急いで買いに行って大変だったんだ!」
Bさん「それは大変だったね。でも、いいな。うちの洗濯機も早く壊れてくれないかな?」
私「どうしてですか? 」
Bさん「新しいのが欲しいんだけど、壊れないと新しいものが買えないのよね……」
私「なるほど!」
 
数年前、職場の休憩中にこんな他愛もない話が広がった。実は私も身に覚えがあった。一人暮らしを始めた時に、猫の額ほどの狭い部屋に引っ越した。家電を一通り揃えたのだが、その中でも一番使いにくかったのは最低限の機能しかない掃除機だった。
 
結婚して広い部屋に引っ越しても何の問題もなく使っていた掃除機が、ある日突然、ものすごく時代遅れなものに見え始めたのだった。それは、私の職場に新しく、きれいな、最新機能がついた掃除機がやってきたときのことだった。
 
その素敵な掃除機は軽いし、すいすい進むし、汚れている間はお知らせランプがついているし、吸い口はLEDライトで照らされているし……。
 
「こんないいこと尽くしの素敵な掃除機、欲しがらない人は絶対にいない!
が、うちの掃除機は元気よく動いている。困ったな……」
そう思う日々が始まってしまった。
 
いったんそう考え始めると、掃除機がいつ壊れるのかが楽しみになってきた。
しかし時は経つのに、掃除機が壊れる感じが全くしない。
いっそのこと壊してしまおうかと考えることもあった。
 
映画『アメリ』で主人公のアメリはイヤな人の家電の電源コードに針金を通して壊していたことを思い出し、自分も同じようなことをやろうか少し悩んだが、そんな勇気はなかった。
長年培われてきた「もったいない精神」がしっかりと根付いていることを痛感した。
 
だからと言って、買い替えることはできない。今は一人暮らしではないため、何か新しいものを買うにも、家の人と相談をしなければならず、ただ単に新しくて使いやすいものが欲しいという理由だけでは反対されると思い、相談をすることすら躊躇われた。
 
そうなると、私に残った道はたった一つ。一刻も早く寿命が来るのを願うしかない。
 
……
 
そんなことを考えていたら、どうしようもなく虚しい気持ちになった。
 
私は今まで問題なく使っていた物が壊れることを願っていた。そんなことを願う自分がとてつもなく悪い人に感じられた。
新しいもの欲しさに今あるものが壊れることを願うなんて、なんて卑しいことだろうか。
 
近藤麻理恵さん著『人生がときめく片づけの魔法』には「ときめく」もの以外は家に残すなと書いてある。
私は電気屋であの掃除機を買ったとき、本当は他の掃除機を買おうとしていたが、同行してくれた先輩に「一人暮らしの家にはこっちのシンプルなやつで十分じゃない?」と言われ、「確かに」と思った私は妥協をして購入したのだった。
ときめいた掃除機は他にあったのに。
 
ドミニック・ローホーさん著『シンプルに生きる』には「妥協でものを選ぶと、自分もその程度に」とある。そして、「ものを購入するということは、つまり、自分のからだの一部となるものを買うということ」と書いてある。
私は好きでもない、最低限の物を自分の一部にしてしまったのだ。
買い替えるタイミングの問題ではなく、購入の時点の間違えていたことに気が付いた。
 
掃除機のことだけではない。私は前から上等な黒い革のバッグが欲しいと思っている。
雑誌やインターネットでいろんなブランドのバッグを見るが、値段を見て静かに雑誌やネットを閉じたりする。
そして自分があまり深く考えずに買える価格のバッグをいくつか買ってきた。
 
妥協で買ったバッグたちはいつの間にか使えなくなったり、使わなくなったりした。
劣化して使えないこともあれば、どこかが目につき、不満に思い、タンスの肥やしになり果てていく。怖くて計算をしたことはないが、もしかしたら上等な黒い革のバッグを一つ買える金額だったのかもしれない。
 
私はいくつかの使えないバッグと共に満足できない気持ちを手に入れただけだった。
 
そういえば、40歳になったことをきっかけに、ファストファッションではなく、よい洋服を着ようと決めたのだった。
昨年は数点の洋服を百貨店で買ってみたが、カットも縫製も生地もよく、体にフィットして大満足だった。数年間はファストファッションの洋服のお世話になったが、中々サイズが合わず、満足することがなかった。そのせいか、頻繁に多くの洋服を買っては不満が募っていた。
私はここでも妥協をして、その程度の人間になっていたのかと思った。
 
色々と反省しながらも古い掃除機は捨てられなかったので、そのまま使うことにした。その矢先に、夫から「掃除機の電源がおかしくなった」との報告を受けた。
近藤麻理恵さんの教え通りに「ありがとう」と掃除機に伝えてからお別れをし、欲しかったあの掃除機を買った。最高の使い心地にしばらく小躍りが続いたのは言うまでもない。
 
これをきっかけに、これからは妥協することなく、素敵な人生を送っていこうと心に決めたのだった。
 
 
 
 
***

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2020-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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