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おじさんの「はじめての歯医者」体験レポート


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:フジタシン(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
“マジで、本当に、行きたくない……。”
 
駅前に続く道を歩きながら、SNSに弱音を呟いた。
 
行き先は、歯医者だ。
 
先週から、左の奥歯が絶望的に痛い。
痛み止めを飲んでも痛い。毎日まともに眠れない。
 
ちょっと前までは、食事の時に左側を使わないようにしていれば問題なかったのだが……。
 
駅前の交差点の信号を待っていると、友人から返信が来た。
 
“大丈夫だよ、うちの5歳児も行ってるんだから。笑”
 
“そんな大袈裟なw 虫歯ができて以来、年4回は歯医者行くよ。”
 
……。
よいか。大丈夫ではないし、大袈裟ではない。
 
僕は虫歯と認定されたことがこれまで1度も無い。
だから今日、32歳で初めて歯医者に行くのだ。
知らないから、怖いのだ。
「歯医者は怖い」というイメージが幼少期から払しょくできていないのだ。
 
これまで僕の小さな自慢は、虫歯がないことだった。
しかし、もはや眠れないほど痛みを発する左奥歯は、診断されずとも虫歯であること間違いなかった。
 
予約した時間1分前、歯医者の前に着いてしまった。
時間を守らないのは大人としてマズいので、腹をくくってドアを開けた。
 
受付で、電話で予約した人間であることを告げる。
保険証を求められたので渡そうとしたが、緊張のあまり免許証を渡してしまった。
 
待合室で少し待つと、名前が呼ばれた。
 
「2番の診察台へどうぞ」
 
②と書かれたパーテーションで区切られた場所に向かう。
そこには、ややリクライニングされた高機能そうなイスがあった。
 
……。
座っていいのだろうか?
 
「え、あの、座ってくださいね」
 
よく分からず突っ立っていると、助手らしきスタッフに促された。
 
……。
どう座ればいいのだろうか?
 
なかなか座らない僕に、対応してくれた助手さんも「どうしたんだ、この人」的な表情で困惑していた。
迷惑にならないように、とりあえずまっすぐ座ってみる。
 
……。
スリッパは脱ぐべきか?イスにもたれかかるべきか?
いや、さすがに偉そうだからやめておくか……。
 
……。
何も言われないからこれでいいらしい。
 
すると、座って左側にある小さな紙コップに水が自動で注がれていく。
 
……。
これで何しろと? 飲むの?
 
誰か教えて……。
 
「すいません、口をゆすいでもらえますか?」
 
ああ、そういうことね、OK、OK、飲むところだったぜ……。
 
……。
いや、教えてくれないと分からないから!!!
 
32歳男性が、まさか歯医者初体験だとは思わなかったのだろう。
しかし、『コップに水を注がれたら、口をゆすぐ』なんて常識は、初めての人には分かりにくすぎるのだ。
 
何食わぬ顔をしながら水を口に含んで吐いたが、内心はとても恥ずかしかった。しかも助手さんには「この人どんくさいな」と思われただろうと思うと、なんだか悔しくもある。
 
ちくしょう、こんな気持ちは久しぶりだ……。
 
初めての讃岐うどん屋さんで、天ぷらを取るタイミングを逃したこと。
初めての海外スーパーマーケットで、会計の仕方が分からずにレジ係の人に迷惑をかけたこと。
初めてのバイトで、配属先の暗黙の業務ルールを知らずに怒られたこと。
初めてバーで、携帯を使ったら隣の客に怒られたこと。
 
振り返ると、「バーで怒られたこと」から10年間くらいはご無沙汰の感情である。
 
僕は社会人になり、いつしか慣れた環境の慣れたルールに従って生きてきたのだ。
そのルールを知らないよそ者が来た時には「どんくさいな」と冷たい目線を送ってしまっていたのだろう。
 
30代になってもこういう経験ができたことは、ありがたいことではないだろうか……。
こうやって出来る限りポジティブに捉えることにして、気持ちを落ち着かせることにした。
 
すると、担当してくれる歯科医さんがやってきた。
レントゲンを撮られ、左の最奥がかなり進行した虫歯になっていることを説明された。
 
「この歯は、親知らずといいまして、抜歯される方も多いのですが……」
 
親知らずどころか自分でも知らないうちに奥歯が生え、十数年の歳月を経て虫歯になったようだった。
 
「抜かずに治療をするか、抜いてしまうか、どちらの方向で進めますか?」
 
正直、僕を今苦しめているひどい痛みがなくなれば何でもよかったし、せっかく生えている奥歯を抜かなくてもいいんじゃないかと思い、抜かずに治療しますと伝えた。
 
その日の治療を境に激痛は無くなった。
しかし「親知らずの治療」というのは難易度が高いらしい。あれから6回ほど通院してようやく治療がひと段落したが、まだ治りきれていない可能性もあり、その際は抜歯になるらしい。
 
それなら、最初から抜いておけばよかった。
 
「先に言ってよ!!!」
 
と、思ったが、もう歯医者に通うのが嫌ではなくなったし、まあいいか。
 
 
 
 
***

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2020-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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