メディアグランプリ

ニッチ戦略に隠された密の味は、スキマ植物が教えてくれていた論


ニッチ戦略 酒井

記事:坂井 孝範(ライティング・ラボ)

 

眼下に公園の緑が広がる福岡天狼院。
天狼院ライティングラボへ足早に向かいながら僕は思った。

革新的な商品やサービス、新たな市場にチャンスを見出したビジネスは、起業家精神を持つ経営者の情熱と研鑽のもと、日々生まれ続けている。
彼らは不安や孤独と闘い、産みの苦しみを味わいながら、これまでなかった価値を生み出している。同時に創造する喜びも感じていることだろう。そんな方々を僕は心から尊敬する。

「なにもわざわざあんな大変そうな分野に参入しなくても、よさそうなものを……」

おそらく軌道に乗るまでは陰で笑われ、苦汁をなめた日もあったかもしれない。
一方でそのビジネスが成功した途端、手のひらを返したかのように、模倣する会社が出てくるのも世の常だ。

「どうもあの会社が始めたビジネスが流行ってそうだから、うちの会社も同じこと始めてその波にのっかろうぜ!」

こんな風に真似することは、自分で一からビジネスモデルを創り出す必要がない分、楽で簡単なように思える。そしてゼロからの創造は困難ばかりのように思える。でも、本当にそうなのだろうか?

実はそうではなかったのだ!

 

僕は、福岡天狼院前の公園の脇でコンクリートのスキマから生える雑草が目に入ったことを思い出した。ちょうど先日、ラジオの科学番組でスキマ植物の興味深い話を聴いたばかりだった。

スキマ植物とは、「ド根性大根」でも話題になったように、コンクリートの裂け目やブロック塀の割れ目、石垣の隙間、電柱の根元など、一見条件が良くない場所にわざわざ生えている植物のことだ。窮屈でストレスばかりのように思える場所に、なぜ生息しているのかの理由がおもしろい!

実は、植物にとってスキマはとても居心地がいい楽園だったのだ。
なにも頑張って根性で生えている訳じゃなかったんだ。

ご存知の通り、動物は動いて何かを捕まえて食べて生きている。一方、植物は光と水と二酸化炭素があればいい。植物は動けない分、“光”と“水”が得られる場所の獲得競争が激しいのである。誰かの日陰になったら負け! スキマは他の植物が生えるスペースがないため“光”を独占できる格好の場所だったのだ。広い空き地や草原は、他の雑草も多く生えるせいで、どうしても誰かの陰になってしまう。だから誰よりも“光”を獲得しようと高い茎を伸ばしあう。“高さ”と“面積”を競う戦いが激しく繰り広げられるレッドオーシャンと言っていい。なんだか、売上拡大のために社員を増やしたり、好立地に自社ビルを建てる競争を想起してしまう。スキマ植物は高い茎を伸ばす余計なエネルギーも必要ない。

また、生存に欠かせない“水”もスキマに流れ込み、確実に、しかも勝手に集まってくる。あたかも営業をかけずとも、待っているだけで勝手に売れてお金が入る商売と重なる。茎の周囲はコンクリートに囲まれているから、日が照ったとしても水の蒸発が抑えられ、いつまでも湿っているという大きなメリットもある。

他に、隅っこは人から踏み潰されるリスクもない。電柱の根元では、犬や猫がおしっこをする。つまり肥料も得られるというのがおもしろい。今度もし電柱の根元から顔を覗かせたスキマ植物を見かけたら、「偉い!」って誉めてやろう。きっと屋根瓦の隙間、茅葺き屋根に生える植物なんかは、“光”と“水”を確実に得られる最高の場所を離れたくないことだろう。

 

何かに行き詰まったら自然に聴いてみればいい。人間も自然の一部なのだから。
スキマ植物もこんなに大切な秘訣を教えてくれていたんだ。

誰も挑戦したがらない未開の地にこそ、チャンスが隠れている。そこに誰よりも早くたどり着いた先駆者は、そこに至るまでの艱難辛苦以上に、美味しい密の味をきっと味わっていることだろう。それを享受できるのは、その場所に一人だけ。既に多くが集まる場所に群がっても、もうその旨みはないことをスキマ植物が教えてくれている。

天狼院店主・三浦さんの足元にも及ばないけれど、幸い僕も、経営者の想いや理念をストーリー化して書くサービス「ストーリーアンリミテッド」という“スキマ”を見つけ、創ることができた。傍目には大変そうに見えるかもしれないが、実は楽しくて、楽しくてしょうがない。“他の誰か”でもできることをやっていた頃に比べれば、辛いことはほとんどなくなったのだ。

「ニッチを見つけた先駆者は大変そうに見えて、じつは楽!」

福岡天狼院のグランドオープンの日。
三浦さんもきっとそう感じていることだろう。前日徹夜だったのを嬉々として語る三浦さんの弾む声がそれを何より証明していた。まだまだその頭脳に隠し持つ書店の概念を越えた“独自の試み”を体験できることに胸が躍る。福岡に住む僕らはラッキーだ。

初の福岡天狼院の興奮を抑えながら階段を下り、真っ先に目に入ったのが“スキマ植物”だった。

 

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この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2015-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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