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なんとなく、バリカタ……。 ~博多女子が考察する博多ラーメン麺オーダーに見る人生論~


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記事:小堺ラム(ライティング・ラボ)

 

バリカタ

今、これを読んでいる人の中で、いったいどれ程の人がこの言葉の意味を知っているだろうか。

バリカタ、そう バリカタなのである。
皆さんも、どうか一度、そっとつぶやいてみて欲しい。
バリカタ。
アクセントとしては、「バ」が弱く「リカタ」が強くあがる。
そう、女子学生が「サイアク~」と言う時のアクセントと同じである。

「バリ」の意味は、「とても」「非常に」。
英訳は「VERY」である。
カタは硬い。
なので、バリカタとは、とても硬い、という意味である。

どんなシュチュエーションで、バリカタを使うかと言うと、場所は主に博多のラーメン屋で使われる。
バリカタとは、博多ラーメンの麺の硬さ、つまり茹で具合の一つの段階を指す言葉なのである。
博多のラーメン店では、ほとんど100パーセントの確率で、麺の硬さをどうするかについて、店員から尋ねられるといっても過言ではない。
食券を提示したり、オーダーする際に、確実に店員さんから尋ねられる。
私は博多に30年近く住んでいるので、必然的に博多でラーメンを食べる機会も多い。
「博多ラーメン店ではオーダー時に麺の硬さを尋ねる率はどのくらいか」ということに関して、過去のデータや友人からのリサーチ、最近では飛び込んだお店で従業員さんに尋ねて収集したデータからはじき出しても、ほぼ100パーセントに近い確率で尋ねられるといってもいいだろう。
だから、博多でラーメンを食べるときに大切なものの一つは、「麺の硬さ」なのだろうと思う。

ちなみに、先ほど紹介したバリカタ以外に他の茹で具合オーダーについてどんなものがあるかについて説明しよう。
博多ラーメンの麺の茹で具合、つまり麺の硬さについては7段階に分けられる。
茹で時間が長く、麺がソフトな状態なものから順に説明していくこととする。
まず、「バリヤワ」。
とても柔い、茹で時間がかなり長く、これを頼んでいる人を殆ど知らないんだけれど。
次が「ヤワ」。
これは文字通り「やわい」。
おっと、やわいは、博多弁でした。
標準語では、柔らかいという、茹でる時間が比較的長く柔らかい麺なのである。
そして、その次に、「普通」。
通常の茹で時間で茹でられた麺がやってくる。
これ、「カタ」のような粋な呼び名はない。
みんな、「普通で」って注文している。
ちなみに、博多ラーメンになじみがない人が入店し、ラーメンをオーダーした場合、すかさず店員に「硬さはどうしますか」と聞かれ、よくわからないから「普通で」って答えてしまう場合が多いと思う。
普通は、店が、この茹で具合を推奨しているという店のおすすめのベスト茹で具合なのであるから、素直に従っておくのも手であろう。
その次が、「カタ」。
おそらく博多の人間の数多くが、「カタ」を頼むのではなかろうか。
カタを食べ始める一口目、まだ芯が硬く、かといってパスタのアルデンテのような硬すぎる芯の残り具合というよりも、ちょっと粉なところをかすかに、ごくかすかに感じられる、その絶妙な歯ごたえにスープが絡む感覚をやめられなくてカタを頼む人が多いと思う。
その次が「バリカタ」。
とても かたい。
そして、更に固くなるのが
「ハリガネ」である。
実はちょっとこわくて、私自身ハリガネは頼んだことがないんだけど。
博多モンのくせに。
更に、「こなおとし」がハリガネの上をいく硬さで、今まで5回くらいしか頼んでいる人に遭遇したことがない。
そして、存在する硬さとしての最上級は「ゆげおとし」である。
まだ現物にお会いしたことはないけど。

これが現時点で存在する博多ラーメンの、麺の硬さ7段階である。
さて、果たしてどの硬さが一番いいんだろうかと皆さんとても気になっているのではないだろうか。
「やわ」や「こなおとし」を多くの人が頼まないことは、容易に想像がつく。
でも、せっかく博多に来てラーメンを食べるのに、絶妙な硬さで食べたいじゃん、早く一番のベストな硬さをもったいぶらないで地元のアンタが教えてくれてもいいじゃないかと思う方がこの時点で6割ほどいらっしゃるのではないだろうか。
また一方で、お店の推奨する茹で具合なら「普通」がいいんじゃないの、もういいや、普通で!よくわからないし! と、半ば投げやり気味に消去法で普通に収まろうとしている方もいるかもしれない。

でも、博多に来て、ラーメン屋に意気揚々と入り「普通」でオーダーするのは、どことなく物足りないのではないだろうか。
この紙面のこの記事を読んでいる方なら、普通には収まりたくないだろう。
ちょっとツウぶってみたいところもあるだろうし、「普通」ってなんだか、ときめかない。
そんな貴方には「カタ」をお勧めする。
実際に博多の人間は、7割が注文時に「カタ」とオーダーするのではなだろうか。
周りを見ても、お店の人に聞いても「カタ」オーダーが多い。
それは、まだ赤身肉がはやっていない時期のステーキハウスで、大勢の人が肉の焼き加減を聞かれて「ミディアム」でと迷いなくオーダーしていた状況と同じように。
疑いもなく「カタ」を頼む。
「カタ」人気は根強い。

しかし、この「カタ」を頼む博多っ子にも、様々なタイプがあることがわかってきた。
一例をあげると、なんとなく「カタ」を頼んでいる潜在的カタ子と潜在的カタ男。
彼らは「普通」を頼まない自分のことについて、自分のこだわりや確固たる考えの元、私達は「カタ」を選択したのだ、と思っているに違いない。
しかし、真実は違うのである。
彼らは、自分の考えで「カタ」を選択したと思い込んでいるが、実はそうではない。
子供のころか両親が「カタ」しか頼まなかったから、「カタ」以外の選択肢を想像できず、心の奥底に、そして体の隅々に「カタ」オーダーが遺伝子・潜在意識レベルで刷り込まれているのだ。
こうして「ラーメンの麺の硬さは、当然にカタしかありえない人間」になってしまっていることに当人が気が付いていないだけなのではないだろうか。
彼らは、「普通」は試さないし、「バリカタ」に浮気することもないだろう。
生まれながらに、カタ以外に選ぶことを知らないのだから。
カタが一番だと信じて疑わず、カタを心から味わい、カタが好きだという。
一生涯カタ以外の選択肢を知らなかったとしても、これはこれで何とも幸せな人生ではないだろうか。

一方で、普通に始まりカタも頼んで、ハリガネや、やわも経験し一巡したけど、結局カタに落ち着いたという紆余曲折カタ子、紆余曲折カタ男も存在する。
彼らは、それぞれの麺の硬さについて、スープとの相性、食べるスピードと麺が伸びていく速度の関係性、その日の体調など様々なことを考慮した上で、入店し店員に硬さを尋ねられたその瞬間にオーダーを選択・決断し、その日の麺を経験し、じっくりと向き合う。
そして分析や検討を踏まえて、次回のオーダーに活かしていく。
あくなき探究心と、追求。
これをずっと繰り返した結果、最終的にカタに行き着いたのだ。
もう、カタ以外にはありえない、私たちはやるだけのことはやったのだから、悟りを経験した修行僧のようなすがすがしい心境であろう。

このように、同じ「カタ」というオーダーであっても、その意図はさまざまなのである。
まさに、その人の生き方を表しているということができると思う。
この記事を読んでいる貴方は、今度博多でラーメンを食べる機会があるのならば、自分のオーダーにも真剣に向き合ってみて欲しいが、周囲の博多っ子がどんなオーダーをしているのか、そして、そのオーダーをした人の人生を是非想像してみて欲しい。
話を交わすこと無くして、きっとその人の人生が垣間見えるはずだ。

かくいう私は、なんとなく「バリカタ」な女である。
もし、貴方が、福岡天狼院で書籍を買い求めた後に、ふらりと入った博多ラーメンのお店で、バリカタを頼んでいる三十路過ぎた女がいるとしたら、是非手元に注目して欲しいと思う。
その女が、茹で時間のごく短いバリカタが茹で上がるほんのわずかな時間でさえ、黒くスタイリッシュなブックカバーのかかった本を読んでいるとしたら、それは私であろう。
本能的に直感的にバリカタをオーダーし、わずかな時間で福岡天狼院で買い求めた本を読みつつ、バリカタを味わう。
ああ、なんと素晴らしき人生であろうか!!

最後にもう一度小さくつぶやいてみたい。

 

バリカタ。

 

***
この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

 

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