メディアグランプリ

天狼院書店だなんて、いかにも怪しい名前じゃないか ~ある夫婦の攻防~


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記事:金子千裕(ライティング・ラボ)

 

「天狼院のフォト部に出かけてくるから~」
「ライティングラボだから~」
「今日は漫画部だから~」

もう楽しくてしょうが無かった。趣味というのは孤独なものだ。好きな漫画や小説、そして写真や文章、それらを共有出来る仲間が居る。それはとても素晴らしい発見だった。

「天狼院の旅部で日光を観光して一泊二日で飯ごう炊さんしてくるから~」

こう言った時、家族……夫が初めてこう言った。
「そこ、本屋だよね?」
うちの家族はあまり私の行動に口出しはしない。口を挟んでくること事態が珍しい上に、どうやら『お説教モード』に入りそうな気配があった。

「うん。本屋さんだよ。雑司ヶ谷の」
「本屋さんが何で旅行の企画立てるの?」
彼はギロっと私の目を見ると。ふと、視線を左上に外した。これは彼が頭をフル回転させる兆候だ。彼の脳内のタービンがぐおんぐおんと回り出し、彼は私に言葉をたたみかける。
「ちひろさ、一回の部活にいくら取られている?」
「今月何回出かけた?」
「講義時間の半分も出られていない日もあったよね?」

質問に答えているうちに、彼は一つの結論を出した。
「それじゃあ、あまり知らない人との一回数十分の交流のために月一万円以上出しているんだ。ちひろは」
確かに、私は天狼院では新参でスタッフの名前もチーム天狼院の名前もろくに知らない。

「そうだね」
「今度はろくに知らない人と旅行に行くと言う」
「うん。でもバス旅行って、そういう……」
「でも、交流会があるわけじゃん。なんかおかしくない?」
彼は小首をかしげて、私に思考する事を求めた。
「……えっと、仲良くするのは良いことだよ」
「そうかな。ちひろ、ハッキリ言ってカモられてない?」

私、カモられているのかなあ? でも楽しいし。ちょっとした地元のサークルみたいなものだし。そこまで会費が高いとは思わない。お酒を飲むより安いくらいだよ……。

「じゃあさ、シンも一緒にバス旅行行こう?」
うん。それが良い。
「いやだ。俺は知らない人間と一緒に飯ごう炊さんをする趣味はない」
その日の話はそれで終了となった。

その数日後、私は突然高熱に伏せる事となった。

日光出発の数日前、熱がやっと引いてこれで日光に行けると思っていた時だ。彼がこう切り出した。
「あ~、ちひろ日光いけないね」
「行けるよ~」
元気だもん。
「熱が下がっても、日光で疲れてまた熱出して会社お休みしたらどうするの?」
彼が言うのももっともだ。生活のためにお金を稼がないといけない。
「……日光、行けないかもしれない」
「体が完全に良くなったら、俺と日光に行こうな」
「……うん」
飯ごう炊さんしたかったなあ。フォト部のみんなと写真撮りたかったなあ。歴史ラボ楽しみだったなあ。そう思いながら、私はキャンセルのメールを天狼院に入れた。

それから彼は日光に夢中だ。
私は基本的に土曜日出勤で彼は土日休みなのだ。彼は土曜になる度、日光に出かけて行った。彼はトレイルラン(※山道を走るスポーツ)が好きなので、男体山と女体山を望む山道を走ったり中禅寺湖を望む温泉に入ってきたり……

……私は日光に行けなかったのに。

なんか、ちょっとヒドイような気がした。でも、うーん。日光に行けなかったのは私の体調の都合がつかなかったせいでもあるし。下見だって言っているし……

でも、待って本当に体調に都合がつかなかったのだろうか?
私は昔から丸め込まれやすい。それを彼は知っているはずだ。
そこで彼に聞いてみた。

「なんで、私の日光行きを止めたの?」
「また、ちひろ具合悪くなっちゃうじゃん」

うん。まあそうなんだけれど。よし質問を変えよう。

「私が天狼院に通う事についてどう思う?」
「金額を決めて行けばいいと思うよ。何でもかんでもやろうとすると、ちひろ金銭的にも肉体的にもパンクしちゃうから。そうだな2講座ぐらいに絞って」
「講座を受けるのは良い?」
「そうだね。交流会はどんな人が来るか分からないから駄目だよ。ちひろ、前に宗教やセミナーの勧誘とかでヒドイ目に遭ったじゃん。だから不特定多数の人間が集まる交流会は用心した方が良い」
「でも、勧誘は主催が禁止しているよ」
「外に出た瞬間、捕まったりしただろ」

かつて、私は職場でやたら親切にしてくれるおばちゃんにホイホイついて行って何時間も宗教に勧誘されて隙を見て逃げ出したという過去があった。

「それに『天狼院書店』なんていかにもサブカル崩れが溜まっていそうな名前だよ」

確かに、サブカル崩れっぽいというかサブカルの話に熱くなっているのだけれども……いや、あなたも35歳がガンプラ合宿したりガンダムの新作を欠かさず見たり、聞く曲もナパームレコードなんてマイナーなレコード会社に偏っていたりと充分サブカル……
 
待てよ。これは、自分を棚に上げてらっしゃる?
いや、敵視だ。天狼院を少し……いや、結構敵視している?
良くない。これは良くないぞ。

彼はバリバリの理系だ。出身大学も東北大学理学部という日本でも指折りの理系だ。
バイタリティもあり、友人とIT系のベンチャー企業も立ち上げた。筋金入りのエンジニアであり『津軽じょっぱり』だ。
そんな彼の中で『天狼院=怪しい=敵』という理論が立っている。これを真っ向から否定しては絶対に言い負かされる。向こうの方が理には長けているのだから。
真っ向勝負は仕掛けない。搦め手に出るのも得策とは言えない。
……これは、このままハマりつづけるのが吉だ。

私の中で三浦店主・秘伝のABCユニットが組み上がってゆく。
よし。この作戦で行けるはずだ。

そこから私は天狼院にドハマりする姿をわざと彼に見せ続けた。メディアグランプリ投稿用の文章を毎日書いて、写真を現像し上げる頻度も高くした。Facebookでも天狼院の話題を頻繁に出すようにした。文章上達、現像上達にも繋がるし一石二鳥だ。

「ちひろ、集中しすぎていない?」
「ちひろ、そろそろ寝る時間だよ」

彼は相変わらず心配性だ。そう。心配して貰わなければいけない。もっと心配しろ。彼の不安をかき立てるんだ! 天狼院を自分の目で見て確かめたくなるまで!

ある日曜日。彼がこう切りただした「トレイルランニングのグッズがへたってきたので池袋に買い物に行く」いつもグッズは神保町で買うのに、おかしいな。そうふと思った。

「あ、今日は天狼院でお茶してから帰りたいな」

彼の方からそう言った。
……機は熟した。

買い物を終え、天狼院書店の店内に入る。オシャレなブックカフェに見える本屋を目の当たりにして、彼は少々面食らったようだった。
チーズホットドッグを食べて「おいしい」とまで言った。蔵書を読んで「ここは面白い品揃えだね。長居したくなるよ」とも。

帰り際、彼は店員さんに「いつもちひろがお世話になっております」と挨拶をした。
そして外に出て一言「想像していたのと全然違った。ああいうところなら通ってもいいかもね」と漏らした。

計画は成った。私は勝利した。
しかし、まだ第一段階である。この後、第二、第三の計画が私にはある。
それはまた追々。

 

***
この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

 

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