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メディアグランプリ

人の終末期・最期をビジネスチャンスに変える兵たち


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:五十嵐 浩志 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
半年前に父が逝った。
持病が悪化し段々と体が弱り始め、それから1年も経たずして、父は疲れた顔をして最期を迎えた。
 
父が自分ひとりでは歩いてトイレに行けなくなったころから、彼の介護生活は始まった。
病院から紹介されたケア・マネージャーがやってきた。声が大きい彼女は病人本人と話をするも束の間、手一杯に抱えた資料やカタログなどをテーブルの上にドカンと積み上げて、私たち家族に早口で説明を始めた。
 
「介護保険料を払っているのだから、堂々と介護サービスを使うべきですよ」。
 
もちろんそれは、彼女に利益もたらす。そんなビジネスライクのスタイルに良い印象はなかった。
 
「今の状況から考えて、ベッドからトイレやお風呂までの動線に手摺が必要ですね。それからお風呂には専用の椅子も必要です」。
 
「ご家族や介護士がお体のケアをする際に、電動ベッドがあると便利ですね」。
 
「ご本人が過ごしやすい環境を整えることは大事なのですが、介護をなさるご家族の負担をできるだけ少なくする道具を揃えるのも大切です」。
 
確かに適切なアドバイスだった。話もとても効率よくまとめられていて、テンポもよい。彼女のコミュニケーション能力の高さにこれから面倒を看る母は完全に包囲され、他のケア・マネジャーと比べることもなく彼女と契約することに決めた。母はアドバイスに従って色々と道具を取り揃え始めた。そこには介護用品を取り扱う業者、それらを設置する業者、もちろん介護士等々、たくさんの人が関わっていることを知った。それこそすそ野の広いビジネスシーンが見えた。相当のお金が落ちる一大ビジネスである。数ある中から選出されるケア・マネージャーのマーケティング能力は周りへの影響力が大きい。ケア・マネージャーを取り巻く業者のビジネスも彼女の力にかかっているのである。
 
彼女は頻繁に我が家に足を運ぶようになった。当初は多分にビジネスにフォーカスする印象が強く、あまり良く思えなかった。父自身、彼女が苦手に見えた。しかし、彼女は元看護士で、以前は介護の仕事をしていたことを知った。病気に関しても専門的な知識があり、皆、彼女に一目置くようになっていた。実は病人のみならず、家族、特に母に気遣いする人であることが分かってきた。介護だけにのめり込まないように母の話し相手になったり、事務的な処理もできるだけ母の負担にならないように配慮していたみたいだ。父も最後には彼女に手を振るようになっていた。彼女は父の心も掴んだようだ。
 
そんな介護生活もあまり長いものとはならなかった。持病そのものが急変する性質の病気だったので、3か月ほどの介護で終息した。悲しみに打ちひしがれている時間も長くはなかった。自宅で逝ったので、主治医による死亡証明書やエンゼルケアと呼ばれる看護士による死後処理の手配などを進めながら、次は葬儀の準備だ。
 
まずはウェブで検索を始めていくつかの葬儀社にコンタクト。故人が家族葬を望んでいたので、その旨を説明して大まかな料金プランを聞いてみる。こちらの希望に合いそうな葬儀社に絞り込み更に話をすすめた。葬儀社にとってみれば、この段階でノミネートされているかどうかは死活問題だ。
 
「詳しくプランについて、お会いしてお話させていただきたいのですが……」
 
ひとたびコーディネーターのような人が家にやってくると、その時点で葬儀社は決まったようなものだ。なぜなら、その段階で相見積もりを取るわけにもいかないし、ドライアイスなどを用意してきて、「おくりびと」のような人が作業を始める。葬儀プランの詳細を詰めていくと、コーディネーターの彼はとても仕事を進めるのが上手いことを知った。我々の事情を察して、お坊さんとの交渉も即座に電話で行ってくれたり、無駄な費用が発生しないように考慮もしてくれた。
 
葬儀ビジネスは葬儀そのものにかかる費用は大きいが、葬儀後に発生するものも多くある。ここでもたくさんの人が関わる一大ビジネスの序章をみることになった。そこに最初に契約した葬儀社が再び登場してくるのである。グループ会社のようになっていて、あとから様々なオファーがくる。香典返し、お墓、仏壇、位牌の購入、相続をはじめ、金融機関との手配、社会保険の相続人の手配、役所から取り寄せる閉口するくらい多い証明書類、もちろん遺族が自分たちでできることがほとんどだが、弁護士や司法書士なども手配してくる。ひと一人が亡くなった後の仕事の多さが、次のビジネスを生む。
 
不謹慎に思われる節もあるが、人の終末期と最期はビジネスを生み、それを善しとする優秀なビジネスパーソンがいることも事実である。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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