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くまモンは「おひとり」じゃない~生誕10周年を迎えるくまモンの知名度の理由~


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記事:過客(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
日本で最も有名なご当地キャラ・くまモンは今年で誕生十周年を迎える。
最近は新型コロナウイルスの影響もあってか、少し活動を縮小しているくまモンだが、十年たってもその人気は衰えていない。
くまモンが誕生した頃はちょうどご当地キャラ全盛期の時期だ。多種多様なご当地キャラが日本全国で展開していたが、その中でもくまモンの人気は群を抜いている。もはや国民的キャラクター・ドラえもんと並ぶほどの知名度、といっても過言ではないだろう。
 
熊本県のご当地キャラクターが、日本全国で、そして世界で活躍し、抜群の知名度を得ることができたのはなぜか。
それは、くまモンにあって他のご当地キャラにはない、二つの大きな特徴に理由がある。
 
一つは、「キャラクター画像の商標利用が無料」という商業的な特徴。
 
そしてもう一つは、キャラクター商法にあるまじき「割り切り」だ。
 
十年愛されるキャラクターが武器にする、その「無料」と「割り切り」は、果たしてどのようなものだろうか。
 
まず一つ目「キャラクター画像の商標利用が無料であること」、これはキャラクタービジネスの成功例としてよく取り上げられる、くまモンの大きな特徴だ。
くまモンというキャラクターは、熊本県が商標登録を行っていて、商標権を有している。商標権は簡単に言うと、商品を生み出した人や会社が、商品の名前やロゴなどを「商標」として登録することで、勝手に売り出されて利益を奪われないための権利だ。
くまモンは商標権を熊本県が持っているので、くまモンのイラストを使ってグッズを作り、販売する場合には、熊本県に許可を取る必要がある。
ここで、商標の使用料が発生するのが普通だ。くまモンとほぼ同期のご当地キャラであるふなっしー(厳密には『非』公認ご当地キャラ)も、グッズ化をしたいと思えば、ふなっしーの商標を持つ「合同会社274LAND」に、使用許可と使用料が必要になる。
この使用料を無償化する権利者はなかなかいない。キャラクタービジネスにおいてこの使用料こそが、大きな収益の柱となるからだ。
 
ところがくまモンは、この使用料が無料だ。
熊本県に商標利用の申請さえして受理されれば、誰でも商標使用料無しにくまモングッズを製造・販売することができるのである。
 
この特例のおかげで、熊本の特産品のパッケージや、お土産などにくまモンが気軽に使えるようになった。商標使用料が無料だから、くまモンを扱ったグッズがどんどん出回り、人の目に留まるようになる。
熊本でなくても、くまモングッズは街でよく見かけないだろうか。それは「商標の使用料を無料にすることで知名度を上げる」という、くまモンのキャラクタービジネスが、成功した証拠なのだ。
 
くまモンの知名度の理由の一つが「キャラクター画像の商標利用が無料であること」は、上記に示した通りである。
それでは、くまモンの知名度のもう一つの理由、「キャラクター商法にあるまじき割り切り」とは何か。
 
くまモンの「割り切り」は、くまモンの公式サイトから伺い知ることができる。
 
くまモン公式サイトには「出動スケジュール」というページがある。くまモンがどこでPR活動を行っているのか、カレンダーで確かめることができるのだ。
これをよく見てみると、くまモンは同時刻に複数の箇所に出動している。例えば熊本と大阪と東京、といった具合に、はるか離れた土地だろうと関係なく、熊本PR活動のためにくまモンは出動している。
 
そう、くまモンはなんと、複数体存在するのだ!
 
……説明するまでもないが、PR活動のために出動しているくまモンはみんな着ぐるみだ。着ぐるみなのだから、『着ぐるみを来ている人』が複数人さえいれば、同時刻の別の場所に出現することはもちろん可能である。
この説明に、眉をひそめた人もいるのではないだろうか。そう、露骨に「着ぐるみなんだから」と言い切ることは、一般的にはよろしくはない行為、「夢を壊す行為」だとみなされる。こ『中にいる人』を思わせるような物言いや振る舞いは、着ぐるみ状態のキャラクター最大のタブーのはずだ。いや、タブーというより、中にいる人を喚起させないことが、「着ぐるみ状態のキャラクターのあるべき姿」であり、美徳であるという意識が、この日本にはある(海外はどうかは知らないが、少なくとも日本はそうである)。
 
しかし、くまモンは堂々と、その美徳をあえて破り、公式サイトに複数体の存在を示唆した情報を載せている。しかも分かりやすく、出動地方ごとに色分けもされて、その日の仕事があちこちの場所に跨っていることが一目で分かるのである(ちなみに、同期のご当地キャラクターで、ゆるキャラグランプリ一位も獲得した「ひこにゃん」の公式サイトにもスケジュール表があるが、地元彦根城でのPR活動は「毎日のお仕事」、その他のPR活動については「毎日のお仕事の他に出陣することあります」とふんわりぼかしている)。
 
そこにあるのはまさに「キャラクター商法にあるまじき割り切り」だろう。
 
着ぐるみによるグリーティングといえば、ディズニーランドのミッキーマウスが有名だ。ミッキーマウスは、ディズニーランド内で「同時刻に別の場所に出現しない」を徹底している。だからこそ、ディズニーランドに訪れる人に、ミッキーマウスは夢を見せることができるのである。
 
くまモンは夢を見せるために誕生したキャラクターではない。あくまで熊本のPRのために生まれた、熊本の明るい未来という夢を追い求めるキャラクターだ。地元の活性化という大きな任務を背負っているくまモンは、そのために「割り切り」を使った。この割り切りのおかげで、複数体存在の存在が可能になり、熊本で、日本全国で、そして世界で、いつだって熊本の魅力を届けることができるようになったのだ。
この「割り切り」はあまりにささやかで、直接的にくまモンの知名度アップに繋がっているわけではないかもしれない。しかし、そこには「熊本PRという使命を全うする」という、くまモンの覚悟と野心が表れている。その覚悟と野心があるからこそ、くまモンは全国・世界レベルの知名度になったのではないだろうか。
 
かつてくまモンは公の場で、「くまモンさんはおひとりなの?」と質問されてしまったことが話題になった。その場にいた熊本県知事はそのタブーな質問にしどろもどろになり、くまモンは、慌てるようなそぶりをして見せたという。
 
くまモンが慌てたのは、「くまモンが複数存在する」ことを指摘されたのを、ごまかそうとしたからとは思えない。
本当は腹の中でガッツポーズをしていたのではないだろうか。覚悟の表れを気づいてくれた人がいたことに。
 
 
 
 
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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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