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50歳、そろそろ人生の衝動買いを卒業しよう


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記事:垣尾成利(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
あと十日ほどで50歳の節目を迎えるになるにあたり、「人生の衝動買い」をやめることを思い立った。
 
論語に出てくる有名な言葉に、「十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順したがう。七十にして心の欲するところに従えども、矩のりをこえず」とあるのを聞いたことがある方も多いと思う。
 
特に40歳の「不惑」という言葉は有名で、自分の人生に迷いがなくなったという意味だ。
あまり聞かないが、50歳は「知命」と言い、自分の天命が何であるかを知った、という意味だそうだ。
 
私はこれを、人生を捧げて向き合う覚悟を決めたことを見つけたのなら、ここからはもう何も迷わずに真っ直ぐにその道を行け! という意味だと解釈した。
 
天命を知るためには、惑っていてはいけないのだが、私の40代は、結局のところ惑いっぱなしだった。
 
原因は「人生の衝動買い」をしすぎたせいだった。
 
見かけた瞬間に一目惚れして買ったもの、値段の安さだけでつい買ってしまったもの、店員の話術にまんまと言いくるめられて買ってしまったもの、長く続けるぞと意気込んで一式揃えたままタンスの肥やしになっているもの、といった衝動買いは誰もが経験があると思うが、「人生の衝動買い」は、これを始めれば私の人生はきっと今よりももっと充実したものになるに違いない!! と、人生を変えるくらいの大きなチャレンジだと意気込んだ割に、長続きしなかった趣味や習い事だと思ってみてほしい。
 
幼い頃から熱しやすく冷めやすい性格の私は、いろんなことに興味を持ってきた。
 
子どもの頃は学研の電子ブロック、ルービックキューブ、1000ピースのジグソーパズルなど、ワクワクして買ってもらったものの使いこなせないままに興味が失せてしまったものがたくさんあった。
高校の頃はバンドブームに乗っかってエレキベースを買い、バンドも組んだがそれほど上達しなかった。
大人になってからもボウリングにはまりマイボールをいくつも買い、カメラにはまっては機材やレンズをいくつも揃えたけれど腕前は上がらず、マラソンに挑戦したときはウェアからシューズまで必要以上の数を買った。
他にも、囲碁、宅建の資格取得、ゴルフ、映画鑑賞、筋トレなど、やり続けれていれば人生に大きな潤いや充実感、メリットをもたらしたかもしれない。
 
いずれも、「これを始めたら私の人生がきっと豊かになるに違いない!!」と、妄想が暴走し、やりたい気持ちのアクセルは全開、ブレーキなんてどこかに行ってしまっていて、冷静になったら実は続かないようなものばかりだった。
 
しかし、始める時には「それはお前の人生にきっと潤いを与えてくれるぞ。今が買いのチャンスだぞ。新たな人生の楽しみが見つかったんじゃないか? こんない良いものに出会えて、お前は本当にラッキーだな♪」と、暴走する妄想の中に自分で作り上げた私好みの接客をする店員が出てきては、これでもかと背中を押してきて、私をその気にさせた。
 
こうして買ったものや手を出してみたもののほとんどは続かず、長くて数年、ひどい時には買った瞬間が満足のピークで、一度も使わないまま放置、なんてこともあったりした。
 
多趣味なことでいろいろなことを経験できたことに後悔はないが、50歳を前に、これでいいのか? と少し迷いが生まれ、「知命」という言葉が示す通り、自分が人生を捧げて向き合う覚悟を決めたことを大事にしていく方が楽しいのではないかと思うようになってきたのだ。
 
私が天命だと思えることって何だろう? それは合気道という武道だ。
平成元年に大学で騙されて始めたのだが、飽きることなく32年続けていて、指導者になって24年になる。
始まりはまさに「人生の衝動買い」だったのだが、それが「天命」と思えるだけの大切なものとなった。
 
始まりは実に不純だった。入学早々に知り合った女の子が合気道部に入ると聞き、これは運命の出会いかもしれない、恋が芽生える予感がする!! と下心だけで見学に行った。
しかし恋が芽生えるどころか、気軽に入部届を出したそこは理不尽極まりない厳しい規律と上下関係の世界で、騙されていたことに気付いた時には退学するしか退部の道はないようなところだった。
返事は「オス」のみ、世界中どこにいても24時間365日、先輩を見かけたら大声で挨拶をし、自分の荷物を投げ捨てて先輩の荷物を持て、先輩が白を黒だと言ったらそれは黒だ。そんな世界だった。幸い、合気道は面白いと思えたので、なんとか続けることができ、縁あって卒業後指導者の道を歩むこととなった。
 
合気道が「人生の衝動買い」で終わらず「天命」だと思えるようになったのには理由がある。
 
想像以上の厳しさしかない世界だったが、その厳しさがあったからこそ、人として大きく成長できたと実感できたこと、厳しさを乗り越えたことで絆を感じる人間関係を築けたことなど、実社会で生き抜く力を授けてもらったと思え、生涯をかけて恩返しをしようと思えるくらい、良い面、悪い面、全部ひっくるめて惚れ込むことができたからだ。
 
良い面も、悪い面も、全てを受け入れて惚れ込むことで、「天命」と思えるようになったのだ。
 
惚れ込むためにはマイナスな面を受け入れることは避けられないから、じっくり向き合いたい何かを探したいと思ったら、先に悪い所を探してみると良いと思う。
 
お金がかかりそうだな、時間の制約も多いな、ルールが細かいな、いろいろ面倒なことも多そうだな、始めたら奥に沼がありそうだな、と思いつく限りの悪い所を探してみて、それでもやりたい気持ちが勝つようなら、簡単に諦めない覚悟が備わり、天命とはいかないまでも、衝動買いで終わることはないだろう。
 
若いうちは、いくらでも「人生の衝動買い」をしたらいいと思うけれど、50歳からは、「天命」を求めてみてはどうだろう。
 
広く浅くも良いけれど、ひとつくらいは人生を捧げて奥深く求めるものを。
 
50歳、そろそろ人生の衝動買いを卒業しよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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