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「お年寄り道」は一夜にして成らず


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「あのね、孫ができたのよ〜!」
 
同年代の友人からの報告は喜ばしいことだけれど、胸中は複雑なものだ。
「えっ? お婆ちゃんになってもおかしくない年齢だっけ」と内心ショックを受けている自分がいる。
 
女性は「自分の年齢」を感じることについては神経過敏だ。
20代は20代なりに、40代は40代なりに「老いる」ことを意識している。そして密かに闘ってもいる。「アンチエイジング」というテーマは、どの化粧品メーカーでも力を入れている分野だろう。ミドル世代の女性はその為にはお金も投入するし、労力を惜しまない。男性だって「老いること」に抵抗している人は少なからずいるものだ。
 
私自身も年齢に抗っている一人なのだが、老いることは果たして「闘うもの」なのか、「共存するもの」なのか正直疑問は感じている。
 
ただ、私にとって「老いていくこと」は身近な環境だったのだ。
 
私は20年近く、クリニックで医療事務の仕事をしていた。
内科がメインなので、当然お年寄りの患者さんが多い。常連の患者さんも多く
個人的な近況や、近くにできたお店の話など会話も弾むようになるものだ。
 
ただ、長く勤めていると、患者さんの「老いていく過程」を垣間見てしまう。
仕事人間でバリバリ働いていた人が、老いてからは奥様の後ろを三歩下がって来院する。キャリアなんて言葉がない時代から一線で働いていた女性が、老いて物事をどんどん忘れていく。老いの深みにはまっていく過程を見るにつけ胸が締め付けられるものだ。
 
他人事ではない。老いとは例外のない万物平等なのだ。
 
クリニックに勤めながら、お年寄りの患者さんを観て気づいたことがあった。
それはお年寄りには「今までの生き方が如実に現れる」ということ。
 
ふとした佇まいや、表情、目の輝き、言葉の使い方、刻まれた皺……。
そのお年寄りが、今までどんな経験をして、どこに住んで、どんな生活をしているのか、バックグラウンドを全く知らなくてもイメージできてしまう。
 
現役時代では、部下を叱り飛ばしていただろうな
日頃、お嫁さんに嫌味のひとつも言っているだろうな
ゲートボールとか、お年寄り仲間とワイワイ楽しんでいるだろうな
きっと家族から愛されているだろうな……
 
どんどんイメージが膨らんでいく。
その人が発する佇まい、表情、皺はとても雄弁だ。リアルに過去を投影する。
 
ある時、個人的に憧れるような素敵な患者さんと出会った。
「ほんわかとした、可愛いお婆ちゃん」
其処にちょこんと座っているだけで、ほのぼのするような佇まい。傍にいるだけで周囲がほっこりとするような存在感。人の手を借りた時には「ありがと♪」と誰にもフレンドリー。いつも静かに微笑んでいるお地蔵さんのようなお婆ちゃんだった。もう亡くなってしまったけれど、周囲からも愛され幸せそうな老年期の歩き方。「お年寄り道」を貫いたお婆ちゃんだ。
 
見事な「お年寄り道」に共通することは他にもある。
 
それは、好奇心を忘れないこと。
孫に携帯やゲームの遊び方を教えもらい、それを楽しもうとする好奇心。
幾つになっても「年だからわからない」で周囲に丸投げするのではなく、見よう見まねでやってみようとする在り方。
 
そんな見事な「お年寄り道」を貫く人は、顔の造作や、お化粧の有無ではなく目に輝きと力があって、美しい……誤魔化しの効かない美しさだ。
 
「お年寄りの年齢域」には誰もが例外なく進んでいく。
ある意味、中年期過ぎたらあっという間に感じるだろう。
 
「お年寄りの年齢域」に入ってからは、一生を終えるまでそれは続いていく。
赤ちゃん期、思春期、青年期、中年期……その中できっと一番長い期間続いていく。人によっては30年以上も続いていくことだろう。
 
自分にとって満ち足りた「お年寄り道」を貫き晩年を過ごしたい。
多くの人が願うことだろう。
 
ただ、それは一朝一夕に叶うものではない。
刻まれた皺の一つ一つは、樹木の年輪に例えられるもの。佇まいや言葉の端々に「在り方」は宿るものだ。老齢になって急ごしらえできるものではない。
 
満ち足りた「お年寄り道」を貫いている人……それは若い頃からの積み重ねに違いない。多くの経験を通して、酸いも甘いも自分の糧にしていく意識の持ち方。人生の足し算引き算を自分の中で昇華していく智慧。
 
きっと、人生の積み重ねの集大成が「お年寄り道」に現れると思う。
経験を通して何を得たのか、気づいたのか。それがアウトプットされたものが
「お年寄り道」の歩き方なのだろう。
 
20代の人、40代の人も今の経験、気づきが何十年後の「自分のお年寄り道」を形成していく。ある意味、インプット期ともいえる。今、幸せの物差しになっている「持っているもの」「ステイタス」「人間関係」などは付属品に過ぎないことかもしれない。
 
年老いていくことは平等な自然の摂理。誰も抗えない摂理だ。
 
私自身、若い頃は「お婆ちゃんになった自分」なんて考えもしなかった。
どんなところに住み、誰と共に過ごすのか……ぼんやりとした未来の願望は
あっても、どんなお年寄りになるのかは全く抜け落ちていた。
 
それは当然なことだと思う。
未来の自分は想像するものではなく、今の自分を積み重ねていくことで創造するもの。「今」を泣いて笑って経験していくことが、「お年寄り道」に100%投影されていく。「今」の在り方が、未来に繋がっていくのだ。
 
「今の自分磨き」は、何十年後の自分を輝かせる。
「お年寄り道」を極めるのは、「今ここ」なのだ。
 
***
 
 
 
 
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2020-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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