メディアグランプリ

プロは、目に見えないものすら見る


プロには 金子さん

記事:金子千裕(ライティング・ラボ)

 

「金子さんが本当に撮りたい写真はこれじゃないでしょ」
そう榊先生に言われた時、ドキリとしたと同時に『ああ、やっぱり分かるんだ』と思った。

2015年10月31日、東京天狼院で行われた榊智朗先生による特別授業での出来事だ。
その回は『組み写真に挑戦!』という事で、榊先生が、私たち生徒の持ってきた(組んできた)複数の画像データを組んでみるというイベントだった。

「金子さんは優しいから被写体や見る人に配慮し過ぎてしまう」
『優しい』が褒め言葉ではなかった事がこの人生何度かあった。

一番覚えているのは祖母が亡くなる直前の事だ。私一人で祖母の入院先に着替えを届けに行った際、祖母が「帰らないでけろ。もう少し一緒に居てけろ」と私に懇願した。
わたしは、おばあちゃんが味気ない病院で具合を悪くしているのを見て可哀想になった。
だから、面会終了時間までずっとおばあちゃんの手を握って一緒に居た。

帰宅すると母が怒っていた。20時を回っていたからだ。田舎の健全な高校生が帰宅するには遅すぎる時間だ。
「こんな遅くまで、どこに行っていたの?! お母さん警察に電話しようかと思ったところよ!」
「おばあちゃんのところ。ちゃんと着替えとか届けてきたよ」
「着替え届けただけでこんなに遅くならないでしょう」
「おばあちゃんが一緒にいてけろ、って言うから少しおしゃべりしてた」
そう私が微笑むと母は、涙を浮かべながら私に「あんたは優しいから、優しすぎるから」とお説教を始めた「優しいというのは良いことだけじゃない。もっと厳しさを、強さを身につけて」

他にも、学生マジシャン時代……東北学生マジック連盟合同発表会で大技を出さずお茶を濁すだけで終わらせた時、先生に「また他の演者に配慮したな。出来る事をしないから万年2位なんだ」と指摘された事もある。

この授業で不思議だったのが、榊先生が私の弱点を一発で見抜いてきたところだった。
実は私と榊先生との間に接点はあまり無い。

私をずっと育ててきてくれた母や、高校から大学卒業まで7年間直接指導してくださった手品の先生と違い、私は榊先生の授業を3回ほどしか受けていない。

しかも、そのうちの1回は最後の15分を受講しただけだ。

あとは、先生が愛用していたSONY α7Rを格安で譲っていただいた際に一時間ほどカメラ談義をした……それくらいだ。

私は疑問に思ったことはすぐに質問する方だ。
「先生、私優しいですか?」
榊先生は答える。
「写真を見ていれば分かるんですよ。たぶん、皆さんの数十倍ぼくは写真を見て写真家に会っている。だからなんとなくわかる」

私は「へえ~」と感心するしかなかった。

「金子さんは、もうこういう『ただキレイな』写真は撮れる。でも、本当に撮りたいのはこっちでしょ?」

榊先生がスクリーンに映したのは、まさに私がアマチュアながら『作家である』と意識付けして『心の底からかっこいいと思ったものを』と作り上げた作品だった。
ここまで見抜いてくるんだ。プロは。
もう驚くしかなかった。

そういえば榊先生に限らず、ライティングラボの講師である三浦店主も経験値がすごい。
経験値とはインプットとアウトプットの量だ。
それがプロとアマチュアとでは全然違う。絶対的、決定的な差がそこにある。

今、私は経験値不足の状態にある。

私は文章も写真も好きだ。それなりのインプットはある。しかし、プロには及ばない。

例えば文章に関して言えば、学生時代は図書委員長を勤め毎日が読書三昧だった。
本を読むのが楽しくて、読めもしない古文にまで手を出したりもした。浅田次郎や京極夏彦の著作を全制覇とかもした。
しかし、なぜか社会人になってからあまり読まなくなった。
読んでもせいぜい、月に2、3冊ほどだ。足りない。

また写真に関しても毎週のように美術館に通ったり、藤崎や三越で有名作家の個展が開かれる度に行っていたが、今は美術館や個展には月に1回行くか行かないかだ。

インプットが苦痛になったのかと言われるとそうではない。
本の代わりにインターネットにのめり込でいた。Wikipediaで戦国大名について調べたり、江戸の事件について調べたりして休憩時間を過ごすこともしばしばだ。

しかし、それじゃあ駄目だ。
小説家は小説をたくさん読み、さらにそれ+αでなければならない。
写真家、芸術家もそうだ。本業+αでなければならない。

わたしはその+αのうちのインターネットだけが積み上がっている状態だった。
圧倒的に写真と、小説のインプットが足りない状態がもう何年も続いていた。

そして、アウトプット。
家人にも指摘されていたが、私はアウトプットが圧倒的に不足している。
アウトプットされない情報は中で腐り、毒となり自家中毒を起こすと家人は言う。正にその通りだと榊先生は、天狼院は改めて、しかも鮮烈な形で教えてくれた。

インプット&アウトプットそして、その結果のブラッシュアップ。

授業の最後に榊先生は個展を開く事を勧めてくださった。
そう言えば昔、天狼院のスタッフの誰かが棚の一部に写真や絵を飾るのもありかもしれませんよと言われたことがある。

文化祭が終わったら、一度聞いてみよう。
金子千裕プチ写真展in東京天狼院は可能かどうか。可能なら費用はどれくらいか。
まずは作品を世に出すこと。そこから始めてゆこう。

 

***
この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。

【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】

バーナーをクリックしてください。

天狼院への行き方詳細はこちら


2015-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事